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2020.7.11 #LIVEWIRE_くるり in 京都磔磔

3月からのツアーが中止となっていたくるり、初のオンラインライブ配信はBOBO(Dr)、野崎泰弘(Key)、松本大樹(Gt)を迎えた6人編成。BOBOが叩くビートで繰り出される「琥珀色の街、上海蟹の朝」はパワフルで実に新鮮である!なんて思っていると、しれっとファンファン(Tp/Pf)が去り、岸田繁(Vo/Gt)、佐藤征史(Ba)に野崎とBOBOの4人編成へ。この公演ではかわるがわるメンバーが入れ替わっていく構成のようだ。この体制でまずプレイされるのは5月リリースの未発表アルバム『thaw』より「鍋の中のつみれ」。侘しいムードの中でばちばちとグルーヴが育っていく不思議な聴き心地の曲。というか、2曲目にこれってどういう気持ちにさせたいの?という曲順である。


ここからも驚きの選曲が続く。5曲連続で10年前にリリースされた9thアルバム『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』からの披露だ。夏の情景に生命の息吹が重なる「麦茶」で昂る気持ちを、「温泉」のほっこりとしたメロディが包み込む。ドラマーにBOBOが参加した最後のアルバム作品であるというのも、これらの選曲に繋がったのだろうが、日常生活を最もさりげなく描いた作品がこの状況下に鳴ることの意義深さを考えてしまう。メンバー3人全員が子を持つ家族の一員としてこの時代にいる、そして音楽を鳴らすことを生業としている。その誇りのようなものがこのブロックには垣間見える。「目玉のおやじ」での岸田のしゃがれたシャウトは貫禄しか漂ってない。

粘っこいファンクネスと穏やかなメロディを交差させた「コンバット・ダンス」など、さらっと後世のシーンにもマッチしている凄みを見せつけつつ、ファンファンが再合流しての「東京レレレのレ」などというどことも交わらないオルタナ演歌もぶちかませる。この孤高さ!また、サポートメンバー不在のくるり3人のみでもしっかりとライブを成立させてしまえる強さ。「キャメル」「ブレーメン」「宿はなし」、それぞれ全く違うキャラクターの曲だが3人が奏でればくるりでしかなくなる。芯にある岸田の唄とギター、そして骨格を担う佐藤のとてつもなく動くベースライン、いいとこ持ってくファンファンの吹く音色。3人体制となって7年間、その関係性も円熟しつつある。


再び全員が演奏する形式に戻り「Liberty&Gravity」。噛み砕きがたい珍曲だと思っていたが<這い上がるんだよ>の響きは、有事の今においてアジテートソングとして響く。ライブにいけば毎回聴けるでお馴染みの「Morning Paper」、大いなる温かみでそっと前を向かせる「ロックンロール」などこれまでくるりのライブを彩ってきた楽曲たちが電波越しに家を染め上げる。あくまでこれは正式な、今の、ライブであるということを楽曲の強度が証明している。ここでもう大団円としても納得なのだが、再び岸田、佐藤、野崎、BOBOの4人体制。そして『thaw』の1曲目を飾る「心のなかの悪魔」がやってくる。先ほどまでの熱狂をクールダウンさせ、静かに自己と対峙する時間。ピアノの展開が、そのまま曲中の物語と連動していて実に劇的だった。


再び6人に戻り、岸田が爪弾くのは「奇跡」のイントロだ。唸るしかない、泣くしかない、沁みるしかない、そういう圧倒的な名曲なわけだが、やはりこの曲もまた日常を歌うものだから一層にグッとくる。<気づかないような隙間に咲いた花 来年も会いましょう>というラインに救われる人はきっと多いはず。約束が人を生かすのです。原曲のしなやかさを良い意味で裏切る、松本の骨太なギターソロが感傷を引き延ばしてくれた。余韻に浸る中、ラストソング「everybody feels the same」が投下。トークが長すぎて曲が削られたようだが、これが大団円で大正解。今、再びこの曲の持つ怒りや気づきが炸裂すべき時なのだろう。2010~2012年まで、くるりと時代が変わっていった頃の楽曲たちが、2020年に向けて放たれていた(と勝手に解釈している)今回のセトリ。粛々と、今やれることを最大限、前向きにやる重要さを示唆していたように思う。その先にある奇跡が、世界に舞い降りるのを待つ。


-setlist-
1.琥珀色の街、上海蟹の朝
2.鍋の中のつみれ
3.麦茶
4.温泉
5.目玉のおやじ
6.コンバット・ダンス
7.東京レレレのレ
8.キャメル
9.ブレーメン
10.宿はなし
11.Liberty&Gravity
12.Morning Paper
13.ロックンロール
14.心のなかの悪魔
15.奇跡
16.everybody feels the same

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