見出し画像

2020.05.03~05.10の日記

05.03
仮設の映画館で想田和弘監督「精神0」を観た。岡山の精神科医・山本昌知先生の引退に密着したドキュメント。患者さんたち1人1人に丁寧に別れを添えていく姿、自分の数十年後にこうあれているだろうかという思いも含めてメモを取りながら観るような作品だった。「0に置く」という志、まさに今の世界に必要な心の保ち方ではなかろうか。「精神」を観たのが先月だったので、そのスパンで10年後の山本先生、そして奥様の姿を見るとなかなか食らうものがあった。高校の同級生同士だった夫婦、80代後半ともなるとそれぞれに老いる速度は異なるもので、その歩幅の差がありありと映し出されていて、それ自体は当たり前のことだと分かっていても涙が滲んだ。


想田監督とプロデューサーの柏木規与子が夫婦だということをYouTubeで行われたティーチインで初めて知った。そういう部分を重ねて思い返すと、2組の夫婦のドキュメンタリーのようにも観ることができるんだよな。この2人がカメラを通して観察する山本夫婦の在り方を観る作品だ。終盤に配置された夫婦での墓参りのシーンは、人が生きて去っていく道程を、険しい山道に投影しているようで、思わず手に汗握りながら観てしまった。生きているだけでしんどいんだよ、ゆっくりいかんとなぁ。足を止める大切さよ。



私立恵比寿中学が2018年の武道館ライブ「ebichu pride」を観ながらリモート実況コメンタリーを行う試みがとても良かった。久しぶりに動き喋る安本彩花を観ることができた喜びをしばし噛み締め、"6人体制でスタートを切ったライブ"を6人で観ている事実にもまた胸が熱い。「手をつなごう」で別々の場所にいる6人が画面上で手をつなごうとするモーションは、本人たちは戯れだったんだろうけれど、シンプルに感動してしまう。「永遠に中学生」で肩を組むところとか、スカしてないで現場ではちゃんとやろうと思った。


スカートの「在宅・月光密造の夜 vol.2」が、前回より格段に音質を上げてきて感動した。こういう状況下でも、なるべく質の高いものをという澤部さんのホスピタリティに感謝しかない。今回の音質向上によるものか、澤部さんの流麗なカッティングが美しく大暴れする楽曲が沢山披露されていた。感情の乗り、で言えば「さよなら!さよなら!」の途中で感極まって歌えなくなる姿もとても印象的だった。昔勤めていた書店の閉店を想い作った歌だというが、それだけでない、今を生きる青年としての"断絶"への想いが募ったのではないか、と思ってしまう。とはいえ、それ以降は自らを鼓舞するように歌を続けていて頼もしかった。「静かな夜がいい」を2018年のLOVE FM FESTIVALで偶然生まれたアレンジのまま弾き続けてくれてなんだか嬉しい。


BBHFの2019年のツアーファイナルの映像配信を観た。声と佇まいがすごく良いバンド、というのはGalileo Galilei時代から変わらぬ印象だけど、音源で聴く以上にがっつり踊りたくなる曲が多くてだいぶ見方が変わった。スタイリッシュなようでいて、泥臭く攻め込んでくるような強いメロディも多くて、わーっと歌いたくなる良さもあるなぁと。「シンプル」とか「バック」とか、凄く好きだ。体温を感じる歌詞も、音像にぴったりくる色気がある。

連日のももクロライブ配信、「イナズマロックフェスティバル2019」でトリを務めた時の映像がとても良かった。主催じゃない場のイベントでトリというのは色々乗っかってかなり熱く映る。やっぱフェスの夜っていうのはその気温とかも伝わってきて、一段階ギアの上がる視聴体験だったなぁ。フェスの映像をフル尺で配信とか、他のバンドも実施してくれないだろうか。


05.04
塩塚モエカ(羊文学)のインスタライブのアーカイブ視聴。リバーブのしっかり効いたホーリーな歌声を自宅での弾き語りでも届けてくれた。ソロの曲が多かったけど、羊文学の「人間だった」もやってくれた。きゅっと引き締まる空気、リーディングになるところでカッと目を見開きカメラを観る姿がとてもクールで良かった。素のふるまいはとてもチャーミングだし、とてもフォトジェニックなシンガーだと思う。今回は画角もとても良い。立ち姿を斜め下から映すことで、目線が固定されず、ふわふわと辺りを見渡しつつ、時たまカメラに目を向けるというモーションはリラックスしてて良いと思う。 


岩井秀人主宰「いきなり本読み!」の第1回の配信を観た。皆川猿時、岸井ゆきの、今井隆文、後藤剛範、神木隆之介の面々が、その日初めて目にした台本を読み合わせする企画。皆川さんの芸達者っぷりは流石の一言であり、岸井さんも抜群の順応力。後藤さんが岩井さんの演出を昇華していきながら役を完成させていく流れは演劇のマジックだなぁと思うほかなかった。岸井さんが、役より素の喋りのほうでぶっ飛んだ一面をチラつかせてて驚いた。

午後はくるりの2018年中野サンプラザでのライブをまどろみながら観た。『songline』はまどろんじゃう作品だなぁと思っていたけど、ストリングスの音色を引き連れた柔らかな音がそんな心地を増幅させてくれていた。「さよならリグレット」が名演。この曲、もっとやって欲しいんだけど全然ライブで遭遇できてない。『魂のゆくえ』の曲って「Natsuno」くらいしか定着していないよなぁ、暗いから?『thaw』で「心の中の悪魔」たる名曲が解凍されたのをきっかけにあの頃のピアノの効いた曲をまた聴けることを願う。

ナードマグネットの「撮っててよかった!カバー曲だらけの無観客ライブ!」のアーカイブを観てちゃんと泣いてしまった。緊急事態宣言が出る前に心斎橋JANUSで撮影された映像。過去のライブ映像をYouTubeで観たりして、あぁあの頃、、となることは多いけど、無観客のライブハウスで鳴っているデカい音というのに、あぁあの頃、となるなんて思わなかった。好きな歌をめいっぱい演奏するバンドの姿っていう根源的なものに触れてグッときてしまう。当たり前がこんなに遠い今。いつかまた聴けることを願って。

これだけ連日2018~2019年のももクロのライブ映像を観続けていると、バンドアレンジ含めどんどん繊細に編まれた楽曲が際立つなぁと思うのだけど、この日の東京ドーム公演初日は沢山の初期曲がメドレー形式で歌われていた。「MILKY WAY」とか「ラフスタイル」とか、すごいスカスカな音なんだけどもこの頃から特大な輝きがあったなぁと。すぐに聴き直したくなった。

05.05
Base Ball Bear小出祐介とライター南波一海によるリモートトーク番組「こんばんはプロジェクト」の第二弾をアーカイブで観た。ゲストに劔樹人を迎えての3時間に及ぶゆるりとしたトーク番組。ライブハウスの実情や、自分たちが「不要不急側」の人であるという辛さについて語りつつも、ユーモアを忘れない3人の姿に勇気づけられた。南波さんによる突然のこんまりディスや小出さんが南波さんに執拗にバスケのポージングを要求するくだりなど脱線も含めて楽しい時間。3時間くらいやらないと達しない、ムダの境地みたいなのがある。ひとまず、落ち着いたら「THE ZOOM」の結成に期待だ。

のんa.k.a能年玲奈の行った配信ライブ、久々に2人の人間が同空間にいる映像を観て、これすら新鮮に見えるのか、、と驚いてしまう。ギタリストひぐちけいとソーシャルディスタンスを保ってのライブ。相変わらず歌はそこそこなのだけど、衒いなく映るのんの姿に元気が出た。芝居の時は、不思議っぽいふんわり声なのが多いのだけど、今の彼女は友達と話してる時の自然な笑い声とかトーンのほうが魅力的。こういう役もやって欲しいなぁと思う。

ゴールデンウィーク、この日の夕方まで一切外出をしなかったのだが、さすがに飲み物が尽きかけていたのでセブンイレブンに向かった。僕はチーズ狂いなのでコンビニに行くとチーズ系のものを物色するのだが、ずっと気になっていた「サラミをのせた焼いたチーズ」をやっと購入。商品名通り。それがなんと罪深い食物なのだろうか。願わくばこれを巨大化して布団にして眠りたい。朝起きてすぐにパクりと食べてチーズに包まれて1日を始めたい。


05.06

ABEMAで放送された「家-1グランプリ」を観た。やはりお笑いとなるとその場でのやり取りがスムーズにいかない状態は少しばかりストレス。ただ流石は今田耕司なのでその辺りへのケアを忘れてなかったのが良い。リモート時代は神経質に番組を運ぼうとするMCが重宝されるはず。ところで本編だが、天竺鼠・川原が圧倒的であった。シュールな小品を次々繰り出していくネタでそれ自体もくだらなくハイクオリティなのだが、"自宅で何をやっているんだ"という視点が介入して更に面白さが膨らんでいた。モッフンニョ!


05.07
ゴールデンウィークをしっかり休んだ結果、明けの仕事は山積みであった。色々と考えこんでしまう案件も多く、いきなり体力を削がれてしまった。帰り道に聴いたゲスの極み乙女。の『ストリーミング、CD、レコード』がとてもチルいのだが、それだけでない刺激物も山盛りで何とも癒されてしまった。ここにきてゲスがまさか仕事終わりに丁度良い音楽になるなんてなぁ。


https://vimeo.com/414493964

下北沢BASEMENT BARで行われたモーモールルギャバンのライブ中継、力が湧いてくる音楽であった。緊急事態宣言延長の先、ギリギリの判断で決行されたであろう無観客ライブ。久しぶりにライブハウスでバンドが演奏している様をリアルタイムで観れて、うっかり感極まった。今こそモーモーのようなイカれたエネルギーをぶつけるバンドの音楽が必要なのだ。ゲイリーの迸る汗が、現場へと思いを募らせるほかない。「7秒」、ちゃんと泣いた。


「テレビ千鳥」がまたすごい。ロケができない状況で撮られたであろう、シンプルに人生ゲームをやるだけの回がとんでもない面白さである。ありものの商品を用いてバラエティにするってどんな低予算番組だという感じだが、千鳥にかかれば最高の舞台に変わる。お互いの人生観を投影しながら、お互いで遊び合うような時間がこれほど上質なお笑い番組になるなんて。バケモノのくだり、あれほどまで"果物"が出てくることを願ったことがこれからあるだろうか、、この企画で2週を跨いでしまうのだから最高に幸せである。


05.08
通勤の車でBUMP OF CHICKENを聴いていたら行きも帰りも歌いまくって仕方がなかった。一応、新譜も追ってはいるもののやはりティーンネイジャー期に聴いたものの体への沁み込みっぷりはすごかった。歌詞がスラスラ出てくる。書き起こしてたなぁノートに。「Stage of the ground」とか、あんな良い曲でしたかね。「天体観測」の1番好きなところは、《始めようか天体観測》が最初と最後で全然違うメロディで歌われているとこだなぁとかね。

https://youtu.be/LaVTI5-kCQ4

U-NEXTでサンドウィッチマンの20周年ライブツアーの映像を観た。テレビで観るネタは定型的でずばずばと笑いを呼び込む素晴らしさがあるが、単独公演では実験的なのも多いんだなぁ。伊達ちゃんが一切出てこずに声のみでツッコむコントとか、伊達ちゃんがボケに回るコントとか。特に伊達ちゃんモノマネショーをライブのシメにするなんて、作り込んだステージというよりテンションを大事にするコンビなのだなぁと。そうでなければ、常連ファンを漫才の冒頭でがっつりイジり、顔出し出演させたりしないわけですよ。

https://youtu.be/gnIf_JXUrQg

ヨーロッパ企画「夢!鴨川歌合戦」を観た。上田誠ではなく、諏訪雅が作演出を担当したミュージカル作品。諏訪さんの脚本は、この週放送の「浦安鉄筋家族」でも保証されていたわけだが納得の面白さ!ミュージカルをやりたくない主人公の本多力が、なんとかして歌を止めようとする、みたいな笑いは一部に留めて、あとは歌劇で遊び尽くすみたいなバカバカしさが満ちていた。諏訪さん自ら演じるコンベヤーのくだりとか腹抱えて笑った。

05.09
本来なら(この“本来”とは何なのだろう、とは思う)長崎で野外フェスだったのになぁという思いが妄想ライブレポを生んだ。実際に雨は降っていたし、開催されたら結構キツい環境だったかなぁと思うがそれが何なのだ、というくらい雨天や泥んこになったフェスが恋しいぜ。


サカナクション、毎週土曜のライブ映像配信もこれで一旦は区切り。2009-2015年のライブ映像集と2017年のデビュー記念日に開催された10周年記念公演の2本立て。ABEMAでの中継時は、選ばれたファンが歌詞を見ずに「アイデンティティ」「アルクアラウンド」を歌えるか、サカナクション生演奏カラオケみたいな催しもあったのだがそれナシで観るとなんて暗い曲ばかりのライブなんだ!っていう。祝祭感ゼロ、孤独に表現と向き合うバンドとして完成度の高すぎる公演だ。歴代ライブ映像を踏まえたうえで観るラストの「グッドバイ」は希望のように響いた。この未曾有の危機の先、彼らは世界から何を歌うだろう?

#日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?