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不向きな環境で描く意味はあるのか

2011年1月1日、23歳のとき。「死ぬまで毎日絵を描こう」と心に決めた。

短い正月休みを終え、会社に通う毎日が始まる。

8時に起きて、電車に1時間ゆられて、会社に10時間いる。また1時間電車にゆられて、家に着くのが23時頃。それからシャワー浴びたり飯食ったり。

平日は、睡眠時間を含めて9時間程度が自分の自由時間だった。

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平日は0時から描き始める日が多かったので、集中すればするほど、睡眠時間を削られる悪循環に気付いた。会社で居眠りをして、何度も上司に怒られていた。

このままでは、いつか心が折れてしまう予感。

1時間早く起床して、スケッチしてから会社に行くことも実践してみたが、3日と持たずに寝坊。そこで自分は夜型なのだと気付く。人には、それぞれ活動しやすい時間帯がある。

そこで僕は、電車通勤の1時間に注目した。

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これは電車に乗っている間に描き始めたときの1枚目(2012年5月17日)。

電車の座席は、絵を描くの適していない。狭いし、机もない。座った状態でスケッチブックを固定することすら難しいのに、電車の振動でペン先はブレる。

不向きな環境で描く意味あるのかと、最初は思った。

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電車に乗っている間は、狙った所に線を引くのは難しい。そこで僕は、下書きすることをやめた。窮屈な座席で絵を描くために、持ち歩くペンも3本に絞った。

ボールペンは、大まかなラインを引くために。

5mmのミリペンは、線に強弱を付けるために。

1mmのミリペンは、精密なディティールを描き込むために。

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また、電車の振動でズレた線は、修正するのではなく、アドリブを加えて線を活かす方法を発見した。

「思ったものを紙に描く」のではなく、「紙に引かれた線に合わせて描く」

これはオートマティスム(自動記述)という技法らしい。

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電車に乗っている間に絵を描き始めて1年が経った頃、僕は確信した。

不向きな環境であっても、描き続ける意味はある。試行錯誤を繰り返している限り、絵は成長する。

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僕は今でも、電車に乗るときはスケッチブックと3本のペンを持ち歩いている。





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