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日本初ひきこもり当事者・経験者が集まって作られた株式会社とは?

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯7、ラジオ音声を全文書き起こしました。

起業のきっかけは?ひきこもり当事者の社会参加の可能性は?構成担当山田英治(社会の広告社)が、日本で初めてのひきこもり経験者による株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」代表取締役の佐藤啓さんにインタビューしました。
※音声で聴きたい方は、コチから!

パーソナリティ:高橋みなみ                      ゲスト:株式会社ウチらめっちゃ細かいんで 代表取締役 佐藤啓さん         取材構成:山田英治(社会の広告社)

高橋みなみさん「ひきこもりボイスステーション。パーソナリティの高橋みなみです。今回お話を聞いたのは、株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」の代表取締役 佐藤啓さんです。この会社は何と、ひきこもり当事者の皆さんがウェブサイトを作ったり、当事者が当事者に向けてプログラミング教室を展開したりしている会社だそうです。まずは気になる株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」という社名についておうかがいしました。聞き手は構成担当、社会の広告社の山田英治さんです」

佐藤さん「はい、こちらですね、日本で初めてのひきこもり当事者、経験者の方が集まってできた株式会社ということになっております。今は在宅ですね。完全、在宅でひきこもり経験者、当事者の方、約30人が仕事をしていて、具体的にはIT系のプログラミングです。力を生かして、スキルを生かして、例えばホームページの作成やプログラミング講座の講師といったことをやっている感じになります」

山田「そのひきこもり当事者の方を雇用して仕事を作ろう、会社を作ろうということですが、何らかの動機がないとなかなかやらないと思うので、その辺はいかがだったんですか」

佐藤さん「はい、大きく二つあります。まず一つは、私の個人的な話で恐縮なのですが、実は私自身もいとこに2人ひきこもりの当事者がいるんですね。もうかれこれ、20年ぐらいですかね。ひきこもり状態がある双子の男性で、双子ともひきこもりなんです。小さな頃から知っている子たちなので、決して変なことはしないことはもちろん分かっているんですけれども、逆にもう今45歳を過ぎて、ご両親も結構高齢ということで、この先この状態が続いていったらどうなるんだろうなということはずっと気になっていたということがあります。

あともう一つが、めちゃコマと我々略して呼んでいるんですけれども、この「ウチらめっちゃ細かいんで」=めちゃコマの親会社が「フロンティアリンク」といいまして、こちらが2006年創業で、教育と福祉をメインにやっている会社なんです。この会社は実は、教育に使うeラーニングのシステムと、そこに載せるコンテンツを全部自前で作っているんですね。そのシステムを作るということはエンジニアが必要ということなんですが、IT業界、特にエンジニアってものすごく人手不足なんです。ですから、なかなか採用しようと思っても採れないという中で、どうしたらいいかなと考えていったんですね。その時に、実はこのフロンティアリンクという会社が、2006年創業当初から完全在宅でやっている会社ということもあって、ITの業界であれば、在宅でも仕事ができることは自分たちの経験からよく分かっていると。

そしてもう一個思ったのが、いとこたちのことをふと思い出した時に、彼らパソコン好きだったよなってことだったんです。そこでふと、あ、もしかして、ひきこもりの方でも、ITが好きな方、やってみたい方って、在宅であれば今の環境を特に大きく変えることなく、違った一歩を踏み出せるんじゃないかと、こんなことを思って、要はひきこもり在宅ITですよね。この三つのキーワードが絡んだ時に、あ、これって何かできるかもしれないと思ったと。それがこの、めちゃコマ設立の一番のきっかけという感じですね」

山田「いきなり当事者さんに会いに行くということは大変なハードルだと思うんですけど、実際お会いしてみて、そして実際に立ち上げてみて、当事者の方々は想像通りの活躍をさせていただいたのか、それともやっぱり、苦難の連続だったのか、その辺はどうなんですかね」

佐藤さん「そうですね。ある意味、想像以上の活躍をしてくれていますし、ある意味凄い大変だったってこともあると思います。まず、想像以上というところなんですが、私自身、ひきこもりの当事者や経験者の方と初めてお会いしたのが2017年です。本当に第一印象は、一般の方と何も変わらないよねっていう感じだったんですね。ひきこもりの方は、それまでの先入観的なものとして、ある種オタク的な感じのイメージとかですね。話がなかなか難しい、引っ込み思案な感じとかというのがあったんですが、お会いした方々、皆さん本当に、どこにひきこもりの人がいるの?というぐらいの、本当に一般の方と変わらないという感じだったんですね。

一方で、やっぱり難しいところというのがあって、まあ簡単に言うとメンタルの波ですよね。これがあることがやっぱり一番大変と。どういうきっかけになるか、これは本当に人によって千差万別なので何とも言えないところではあるのですが、例えば、締め切りなどのプレッシャーとかですね。あるいは、いい仕事をしたいという、ある種の自分への追い込みというかですね。そういったところで、なかなか難しくなっちゃうと、お休みモードに入ってしまうことが結構あるという感じです。そこのメンタルの波がなるべく来ないように、仕事を長く続けていただくというところで、ひきこもりの方が安全安心に働けるという意味合いでのマネジメントについては、今でも手探りのところも一部あったりします」

高橋さん「私の中で点と点が線となった部分がたくさんあったんですけど、私、旦那さんがIT関連の方なので、まさにそのIT業界でエンジニア不足だっていうことをすごい聞いていましたし、特にこのコロナになってからは、在宅でおうちでお仕事をする旦那さんの姿を見ていたので、確かに今、お話聞いてIT業界ってきっと本当に、この当事者の方々にとって相性がいいのかもしれないなって思いました。それぞれのスキルを生かす場所が与えられていくというのは、本人たちにとって、とてもいいことだと思いますし、今、本当に、なるほどなとびっくりしました。勉強になりました。ひきこもり当事者の方がめちゃコマで働くことで、どう変わっていったのか、その辺りもおうかがいしています」

ひきこもり✖️IT・農業?可能性は無限大!?


佐藤さん「めちゃコマで2018年の組織ががらっと変わるころに、ちょうど前後して入ったスタッフが一人いるんですが、この彼は本当に最初は、なかなか自信がなくって。その自信というのは、仕事の能力的なものや体力的なものですよね。それで、長く働くのが難しいというところがあって、最初は、月に50時間ですね。当時時給1000円でしたから五万円ぐらいの仕事ができればいいよというところで、在宅で主に事務系の仕事を始めてもらったんですが、その仕事が自分が思ったよりできるなっていう感覚ですよね。これが続いてきたところ、その50時間という話が100時間になり、そしてその後は毎月毎月ほぼフルタイムです。一日8時間働くという形でステップアップをしていき、最終的にはその一年後に正社員になるという形ですね。はい本当に業務委託から始まって、そこからアルバイト、契約社員、正社員というステップですね。これを一年ちょっとで徐々に登ってですね。やっぱりそうなってくると、当然いろいろ落ち込むことはもちろんあるんですけれども、それ以上に自分自身がきちんと仕事ができるっていうところと、まあ何より直接的に言えばお金ですよね。ちゃんとお金を自分で働いて稼ぐことができたと。やっぱりそこはすごく大きな自信になるようですね。そうなってくると、発言なんかもどんどん変わってきて、今そのスタッフが、このめちゃコマの屋台骨を支える、非常に大事なキーパーソンの一人になっているというところですね」

高橋さん「ひきこもり当事者の方が、自分のペースで仕事ができる。そして自信を付けることができる。仲間にもつながれるって本当にいいですよね。めちゃコマはITの会社ですけども、IT以外にひきこもり当事者の方に向いているお仕事ってあるんでしょうか。佐藤社長に聞いてみました」

佐藤さん「私が今一番着目しているのは実は農業なんですね。農業という分野は、まずこれも非常に人手不足の業界であるというところと、その基本的な作業が決して難しいものではなく、ある種同じ作業の繰り返しですよね。これがすごく多いんですが、ひきこもりの方の中に、そういった定型的なマニュアル的な作業をずっと繰り返すのが好きで安心できるという方が、一定数いらっしゃるんです。ですから、そういった方やあるいはITがちょっと難しい、少し年齢が高めの方に関しては、農業という選択肢は非常にあるんじゃないかと。ということで、私自身は今、農業で何かできないかといろいろ模索しているという感じですね。

ひきこもりの方や精神・発達の方もそうなんですが、簡単に言うと、職人肌の方ですね、これが多いと思うんです。ある種、ITというのも現代の職人ですよね。農業というのも職人です。ということで、その職人芸、職人的な気質、これが生きる、生かせる仕事であれば、おそらくマッチングはすごくいいんじゃないかなと。例えば、一つ具体的なイメージとして伝統工芸ですよね。こういったものもあるのかなと。伝統工業には後継者の不足とか、技術の伝承がなかなか進んでいないということがありますので。衣食住の、食事と住むところを担保してあげることができれば、行ってみたい、やってみたいっていう方は一定数いるんじゃないかなとは思うんですよね」

山田「それぐらい可能性があったってことですよね。ここにはものすごいポテンシャルがあるんじゃないかと」

佐藤さん「ものすごいポテンシャルがあると、そうですね。ポテンシャルを感じたのは2017年の4月2日ですね。初めて「ひきこもりフューチャーセッション庵(IORI)」というイベントに参加して、ひきこもりの方の実際の姿を見た時の衝撃、あれは忘れられないですね。100人ぐらいが集まっていて、どこにひきこもりの子たちいるんだと思ったら、ほとんどひきこもりの方たちだというですね。あの衝撃はやっぱり忘れられないですよね」

山田「コロナもあって、みんなひきこもりになった訳ですよね」

佐藤さん「そうですね」

山田「皆さんたちはそれより前に、まずリモートで全てやって、そこに当事者の方に入ってもらってというのは新しかったというか、今みんなそうですもんね」

佐藤さん「恐らくですね、コロナになって、一つ皆さんが分かったことがあると思うんですが、在宅でひきこもらざるを得ないって言うんですかね。これって想像以上できつい話だと思うんですよ。誰かに会いたいって、普通思うと思うんですよね。外に出たいとかですね。だけれども、ひきこもりの方って、そういった本当にきつい状況なんですが、ひきこもらざるを得ないというか、いろいろな事情があってですね。それでやっていると。ひきこもりって甘えだとか、サボっているとか、そういったイメージを持たれてる方もいらっしゃると思うのですが、いやいや実際これやってみて、いや一週間ひきこもるのだって、逆に結構大変な話ですよと。まして一年とかですね。ひきこもりの方の平均ひきこもり期間は、毎年、平均期間が伸びているんですよ。今、おそらく平均ひきこもり期間って10年か11年ぐらいなんですよね。それだけひきこもっているって逆にすごく大変なことだという感覚を、この今コロナの影響もあって少しでも分かっていただけたら、ひきこもりの方に対する見方も変わるのかなと思ったりするんです。

この最後、伝えるというところが実は一番の鍵だと思っていて、居場所も含めて、いろいろな機会が今、実際あるとは思うんですよね。まだ足りてないと思いますけれども、あるはあるんですよ。ただ、そのある情報が、どうやったら当事者の方に伝わるかという話ですね。今回、このイベントとかで、ひきこもりの方にもいろいろな情報を伝えていきましょうって話、私こういったことをすごくいいと思っているんですが、ひきこもりの方って、そもそもひきこもろうと思った時点で、外部からの情報を取り入れないという選択をしちゃっているんですよね。ここがなかなか難しくって、だからこその新聞とかテレビ、ラジオといった従来からあるメディアですよね。この力ってすごく大きいなと。例えば、家族として住んでいる場合に、たまたま新聞に『めちゃコマ』なんて話が載っていると、やっぱりパッと目にすることがあったりするわけなんですよね。そういうところから情報を知って、めちゃコマの話を聞いてみたくてというアプローチをする方が結構いらっしゃるんですね。ひきこもりの方が興味を持つようなコンテンツっていうのは、ある親和性を感じられるようなコンテンツといったものを用意するっていうのは、すごくありだなと思いますよね。」

山田「むしろ当事者の方と一緒に、コンテンツを作っていくんですよね」

佐藤さん「そうそう、それはすごくありだし、恐らくそういったところだと、いろいろ発言をしたい投資の方や経営の方が多いと思いますね。あとはですね、当事者の方が好きなことって実はね、結構絞られてくるんですよ。なぜかと言うとひきこもっている状態で自宅の部屋の中でできることは実は限られるんですよね。割と多いのは文章を書くことですね。これが好きな方、あるいは絵を描くのが好きな方。そして音楽ですよね。それらが好きな方が結構いらっしゃるんですよ。こういったものでコミュニケーションをとるという話ですよね。こういうテーマにすると、おそらく、いろいろな方が乗ってきやすいというかですね。やることはいっぱいあります」 

高橋さん「本当に可能性は無限大ですよね。今回はITや農業というお話が出てきましたが、当事者の方々が好きなことを伸ばしていった先に、実は、あっ、こういうことができるんだという自信につながるものがあったりもしますし、佐藤社長の話を聞いたら、この機会や提供している環境があるということを知ってもらうことが、まず大事で、そこをどういうふうにしたらいいんだろうなって私自身も今すごく考えていましたね。やっぱり知ってもらわないと、手を伸ばしてもらえないという、一つそこが壁としてあるのかなと思いましたね。もちろん従来どおりのメディアも大事だと思いますが、これからいろいろなシステムを作って、皆さんにキャッチしてもらうということが大事になってくるのかなと思いました。

さあ、ひきこもりボイスステーション、今回は、日本で初めてのひきこもり当事者が集まった株式会社「ウチらめっちゃ細かいんで」代表取締役 佐藤啓さんにお話をうかがいました」

◆株式会社ウチらめっちゃ細かいんで 公式サイト

◆イベント開催 2021年1月16日13時スタート!
『ひきこもりVOICE STATION』公開生配信! (パーソナリティ高橋みなみ)
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◆『ひきこもりVOICE STATION』 公式WEBサイト 
◆TOKYO FMサンデースペシャル『ひきこもりVOICE STATION』放送決定! (2022年2月13日19:00~19:55)


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