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ひきこもり当事者の親たちの思いは?家族会に参加してみた。

ひきこもり当事者、家族、支援者の思いをみんなに伝えるラジオ【ひきこもりVOICE STATION】♯11、ラジオ音声を全文書き起こしました。

構成担当山田英治(社会の広告社)が、ひきこもり当事者の家族会に参加しているご家族や家族会代表の方にインタビューしました。

※代表の市川さんへの取材は家族会後に改めてZOOMで取材させていただきました。※音声で聴きたい方は、コチラから!

パーソナリティ:高橋みなみ                      ゲスト:NPO法人 楽の会リーラ代表 市川乙允さん           取材構成:山田英治(社会の広告社)

高橋みなみさん「皆さんこんにちは。ひきこもりボイスステーション。パーソナリティの高橋みなみです。今回はひきこもり当事者の家族会に参加しているご家族の声をご紹介します」

山田「ひきこもりボイスステーション構成担当、社会の広告社の山田英治です。今回はひきこもり当事者のご家族を支援されているNPO法人 楽の会リーラ、市川乙允さんにお話をうかがいます。今日は、ひきこもり当事者を息子や娘さんに持つ親御さんにとって、家族会はどのような存在なのかなどについて聞いていきたいと思っております。まずは、そもそも家族会ってどういうところなのでしょうか」

市川さん「家族会はですね、もともと私どもが20年前にひきこもりの親の会からスタートしたんですね。ですから親同士が集まって、自分達の仲間と繋がることによって、お互いに抱え込んでいる悩みとかそういったものを、みんなに共有してもらう。つまり、孤立状態から、少しでも仲間につながることによって孤立から脱出したいということと、ひきこもりからの回復、これが一番の親の望みなんですよね。それを目指して、まずは親同士でつながろうということで20年前に今、親の会、楽の会としてスタートしたんですね」

山田「20年前というお話がありました。そもそも市川さんが立ち上げられようとしたきっかけを教えてください。娘さんが中学3年の時からひきこもられたと」

市川さん「不登校になったということですね。きっかけは小学校高学年ぐらいからのいじめなんです。これもずっと娘が抱え込んでいて、いよいよ中学3年のとき、もうどうしようもなくなって不登校状態になって、そしてひきこもり状態になりました。その時一番酷い症状が強迫性障害なんです、一般的にはですね。本当にしょっちゅう手洗いをするとか、それから鍵も何回もしめたかどうか確認するとか、その繰り返し行動がある訳ですね。うちの娘の場合はそれではなくて、学校から帰ってきた後に、学校から持ってきたノートや本などを一晩中ずっと確認するんです。中に何か入っていないかどうか。それが毎日のように続いたんですね。要するに僕らは寝むれない訳です、親としてはね。これは異常だということで、娘が最初に不登校になったきっかけなんですね。それでいろいろな経緯がありまして、それが少しずつ緩和されて、娘も中学卒業した後、様々な経緯を経て、少しずつ社会と関わるようになって」

山田「そうやってお子様、娘さんは社会参加できるように、つながることができたと思うんですが、そういう経験を元に自分以外のご家族の支援をしようという動機があったと思います。そこはどうでしょうか」

市川さん「僕が最初に皆さん申し上げたことは、娘が元気になったので今度は皆さんに僕はそれを貢献したい、お返ししたいっていう意味で関わったんですね。ところがですね。実際はそんなおこがましいことじゃないんですね。とんでもない話で。やっぱり皆さんと一緒にこれから回復に向けて頑張っていこうということは何年かかかってやっと分かってきたわけで。そんなお返しなんてとんでもないことで、おこがましくて僕はもう今更言えないですね」

山田「立ち上げはそう思ったけれども、立ち上げた後は自分の悩みも含めて共有しながら一緒に作っていったというような。つながることの大切さとか意義というようなものは、どの辺にあるでしょうか」

市川さん「やっぱりみんな世間体があってオープンできないんですよね。人に頼ることができない。自分の家で何とかしちゃおうっていうのは、ほとんどなんですね。特に世間体っていうのは、お前が甘やかしていたんだろうとかね、ご本人は怠けているだろうとか。それから、もっときついのは親の育て方が悪かったんだよ、だから親が悪いんだっていう、そういういわゆる世間体というものに僕ら縛られていたんですね。僕たち自身もそういうのは若干持っていた訳ですから、そういう偏見的なものをね。僕ら自身はそう思っていましたから。実際に僕はいち早くオープンしたんですが、皆さんやっぱり最初は変な顔をします。同情的な反応は、来る訳ですね。ところが実際は、こちらから開いていくとだんだんだんだん変わってくるわけです。そういうところが当時はなかなかできなかったんです、皆さん。だからそこを、家族同士がつながることによってお互いにその悩みを吐露し共有して、自分のところだけではないんだよという、つながりという安心ですね。そこからしっかりと自分の子供と向き合っていくという、そういうパワーを貰うことができる訳ですね。これが20年続けてきた僕のモチベーションなんですね」

山田「そうか。そのオープンにというのは、近所の人に言うってことですよね、娘さん息子さんのことを」

市川さん「僕らいち早く言ったんです。結局自分の気持ちが楽になったから。それを今皆さんにお伝えしている訳ですね。僕の一つの経験ですけども。それから今徐々に広がってきまして、皆さん近所の方でも、ある程度信頼できる方がいれば、結構オープンにしている方が増えてきました。それでもまだまだ少ないです」

山田「楽の会は、楽しい会って書きます。それはそこから来ているんですか。楽になった、楽にするというような。そこから楽の会ってきているんですね」

親がラクな気持ちになると、ひきこもっていた子供の気持ちもラクになって関係性が変わってくる。


市川さん「僕の捉え方がそうなんです。他の皆さんにとっては家族会で、親同士がつながることがまた楽になる。自分の悩みを吐露することを皆さんに聞いてもらえる。それだけでものすごく楽になるんです。今、僕は電話相談も時々受けてるんです。初回面談といって最初にいろいろな相談を受けるところが僕のところで、大体30分、1時間ぐらいで終わって帰るときに皆さん気持ちが楽になったって言ってくれるんです。これが一番嬉しいですね。それを僕は20数年前ですかね、自分で職場からオープンにしていった。そしてその効果というのはものすごく大きかったですね。めちゃくちゃ楽になったんですね。誰にはばかることなく。もうほんと楽になりましたね。それは僕の場合はそれから数年して地域に入っていったので。要するに会社を退職したんですね。その時も地域にオープンにしていったんです。これは具体的に言えば町内会ですね。町内会の役員の皆さんにも僕は全部オープンにしています。そうするといろいろな町内会の活動がやり易くなる訳ですね。隠し事全くないので。これが僕にとって一番楽になる方法なんです。これは全部僕ができたから、あなたもやるってことは僕は言わないです。でも、こういう方法がありますよと、楽になる方法として。そしてそれは結果的には親が楽になって、親が元気になる、明るくなると子供がものすごく気持ちが助かるんですよね。親のことをものすごく気遣ってくれています。心配してくれています。だから親が明るくなると嬉しいんです。結論から言うとうちの娘は僕に対して今は本当に応援してくれているんです。そこまでに親子の関係が変わる訳なんですね」

山田「市川さん今20年支援をやられていますが、そういったケースをたくさん見てきたんでしょうか。例えば親がもう楽になって元気になることで子供達も変わっていったみたいなケースってどうなんでしょう」

市川さん「関係が変わったということで、僕ら親の会は全く不要になった方がもう毎年何10人も出てる訳ですよね」

山田「つまり卒業生、家族会卒業生が出てきていると」

市川さん「そういうことなんですよね」

山田「すごい、本当に当事者の支援も大事だけれども、その親をまず楽にする。そこから当事者支援が始まるみたいなところもあるんでしょうかね」

市川さん「結果的にですね。ご本人は、それはものすごく気持ちが楽になってくるというところからご本人が僕らが言う元気になるっていう。こういう一つの構図がある訳ですね。これは全てが全てとは言いませんが、そういった形で僕たちは信じてやっていますので。だから一番の基本は親子の信頼関係で、非常にいいものができてくると僕は思っているんです」

ひきこもり当事者と家族会参加者が交流できるカフェを運営

山田「みんなを楽にさせる、そういう気持ちにさせるために何か心掛けていることありますか」

市川さん「心掛けができているかどうか分からないですが、楽しい会にしたい、そこだけですね。それは難しいです。だから、どこまでできているか僕も分かりません。例えば、8年前から今までやっていた居場所を今度カフェスタイルといって喫茶店スタイルの居場所に変えているのですが、そうするとほとんどご本人が主に来て、時々は家族も来る訳ですね。あるいは親子で一緒に来る場合もあります。その時にこのカフェスタイルは自由に交流できるということで、家族の方がいろいろなご本人たちと交流したりして、少しずつ見直しして、ご本人に対する見方が変わってくることも結構多いんですね。そこで今度は家族同士の交流もある訳です。いわゆる相談会の交流をプラスして、本当にリラックスしたところでみんなでお互いに世間話をしたりさまざまなことをやったりしながら、そこで少しずつリラックスしていくという。これでなければということでなないですが、やっぱり楽しくなければ続かないと。楽にもならない。まずは楽しいそういう会になればいいなと考えて日夜悪戦苦闘しています」

山田「市川さんが今カフェの話をされていましたけど、そのカフェ自体はどういうお名前で、具体的にどの場所で定期的にやられてるのか、その辺詳しく教えてください」

市川さん「正式にはコミュニティカフェ葵鳥と呼びます。今から8年前に喫茶店の営業許可は取ったんですね。小さいですがちゃんとした喫茶店なんです。でありながら実際は、利用者が100パーセントひきこもり関係者です。そのうちの8割から9割はご本人です。そして家族なども1、2割いると。今、私どもの事務所が巣鴨のとげぬき地蔵のすぐそばにありますが、そこの事務所の一角をこのカフェ用に仕切りまして、毎週水、金の1時から5時15分で1部、2部に分けて開催をしております。それぞれ定員がコロナの関係で5名、1日最大で10名ですね。それを毎週水金とやっています。そして日曜日はおやじの会と女子カフェですね。こういったものを月1回、開催しているわけですね」

山田「すごいですね。そうか、市川さんはご家族だけの支援というよりは当事者の方のご支援もされていて、そのカフェはひきこもり当事者のお子さんを持つ親の方も来るし、自分の子じゃない当事者の方とも出会えるっていうことなんですか」

市川さん「そこが非常に大きいんですね。それだったら話ができる訳です、第三者的な意味合いでね。ご本人たちも逆に親御さんの話を聞きたいという方も結構いるんですね。そこで言ってみれば価値観が違う親子同士で、親と子供同士の話し合いができる、交流ができるという、言ってみればお互いの理解を深めるというのがいいんじゃないかなと思うんですね」

山田「今、市川さんの支援活動は20年とおっしゃっていましたが、時代と共にひきこもりの当事者やそのご家族というのは、考え方や状況などが変わっていますか、同じですか」

市川さん「一番大きな変化は当事者の皆様、本人ですね。少し元気になっていろいろな社会に関わり動き始めた方達が、自ら社会に向けて発信するようになってきた、これが一番大きいですね。もう当初は、親ばっかりだったんですよ。それが、ご本人たち自ら動き始めた。しかも、社会に対してですね、自分たちの気持ちを訴え始め、もっと理解してほしいんだと。かつて親に言って欲しいと、親に理解してほしい、分かってほしいということを社会に対しても言い始めた。これは僕は素晴らしいなと思ってね。やっぱり僕らが応援するのは親だろうと。この家族会としてはですね。ただ残念ながら今でもまだ、それができない状況のご本人達が本当に減ってないんですね。これが非常に今まで家族会やってきて減らないということは残念でしょうがないです。特にコロナが不登校をだいぶ増やしてしまっている。元々14万か13万ぐらいだった小中学の不登校が今19万ですからね」

山田「先日、家族会に参加させていただいた時に、お声をいただいております。2人の方の取材ができましたので、その声を今聞いてみたいと思います。1人目はYさんです」

セッション1スライド改訂

Yさん「Yと申しまして、77歳になります。子供の時にたまたま学校の先生が良かったものですから、難しい予備校へ入れたり受験もかなりレベルの高いところを目指したりしてしまい、一方的に頭ごなしでいろいろなことをしたのがやっぱりひきこもりの原因と、もう一つは今ちょっと発達障害があったのかなというところもあるんですけど、とにかく寄り添って本人は少しでも生まれてきてよかったと思うようになってもらいたいなというのが私の考えです。ひきこもりという言葉自体はあまり世間で言われていない時代だったので、私自身も混乱していたものですから、何とか早く治して社会復帰させようとそっちばっかりで、次男も私に対して不信感が長引いちゃっていたんで、とにかく力ずくで頭ごなしで、おやじは何でもやるんだなというのがあったので。今はだいぶ、やわらいできたと思うんですが、ただそういうスタート時点からずっと失敗しちゃったので、自分の性格にも問題があったんだなと思ってるんですけどね。本人にかわいそうなことをしちゃったな、せっかくのチャンスの芽を潰しちゃったみたいで、かわいそうなことをしたと思いますよ。

女房はね、私の(家族会への参加に積極的な)そういうところをあまり好きじゃなくて、両親の考え方が違うのが当事者のひきこもりしている次男にもあまりよい影響を与えなかったみたいです。いつもそれで子供のひきこもりについても非常にぶつかることが多くて、それは本人もやっぱり非常に敏感に感じちゃっていたんで、今、楽の会、巣鴨の市川さんにお世話になって、やっぱり焦ってもいけないし女房とはやっぱり意見を協調していかないと。

ですから、お陰様で(妻と話をするようになって)ここのところだいぶ本人も外に出れるようになりまして。もう年も38になりますが、ただ2年前にコロナが発生しちゃったので、またちょっと外へ出られなくなっちゃってかわいそうな思いをしているんです。ただ私ももう77歳でだいぶ高齢になってきているので、私亡きあとは非常に心配で」

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山田「ご夫婦での意見の衝突というか、旦那さんの方は割と積極的に家族会にも参加するが、奥さんの方はそんなところに行く必要ないという感じで、すごくYさんの場合はそういう衝突があったという話ですが、こうやってひきこもり当事者のお子さん、娘さんを持つ親としては、妻と夫の関係性というものも非常に関係があるものなんでしょうか」

市川さん「子供が非常にそこを気にしています。つまりその親、両親が仲がいい方がいい訳です。特に自分のことについてものすごく自分を卑下する場合が多いので、両親が仲たがいするとすれば、じゃあ僕のせい私のせいかなと思ってしまうことが多いですから。あるいは、離婚することをものすごく不安に思っているんですね。ご本人たちはものすごく気にしているということから、少なくともご本人と向き合うときには方向だけは同じ方向を向いてほしいというふうに僕たちはお願いしている訳です。具体的に指導したり、アドバイスしたりするのは私どもの協力してもらっている専門のカウンセラー6名がおりますので、その相談会に出ていただいて、そこで様々な指導をしてもらっているんです。ただこういう具合にお父さんが来る場合はむしろ少ないですね」

山田「そうなんですよね」

市川さん「圧倒的にお母さんが最初に来るんですね。これは今までの日本の家庭の必然的な構造なのでしょうね。そういうところからどうしても古い家族観というのがまだありまして。妻つまり母が子供を育てて、夫は会社で働く、あるいは稼いでくるんだという。こういう一つの固定観念みたいなのはまだまだあるんですね。というところから妻任せ、逆に言うと夫は妻のお前の育て方が悪かったんだというところにいく場合もある訳ですね。一方、お母さんからしたら夫であるお父さんに対しては、全然協力してくれない、理解してくれない。だから私が行くしかないんじゃないのっていうことで、お互いにちょっと意見が分かれてしまうことが多いんです。僕達はそこを相談会を通じて専門家のカウンセラーから適切なアドバイスをしてもらうということによって、少なくとも夫婦が同じベクトルを向いてきっちりと子供さんと取り組み、向き合ってもらいたいというところが非常に大事だと思っております」

山田「うーんなるほど。そしてもうひと方お話をうかがっております。Mさんという80代の方ですね。お話を聞いてきました」

セッション1スライド2改訂

Mさん「Mと申します。80代です」

山田「先日、家族会に参加させていただいたんですけれども、楽の会ですね。Mさんは楽の会にはよくいらっしゃるんですか」

Mさん「ほとんど毎月出ていますね。相談会があります。グループ相談会は8人か10人ということで、それではだいぶ親しくなりましたね。やっぱり普段はどなたにも話すことができないし、おなじような境遇の人達が自分の子供たちについて話をして、だいぶ良くなってきたとか、同じですとか、そういう本当に遠慮なく話せるというのが一番いいですね」

山田「そこから10年通われたと思いますが、通うことでなにかお子さんとの関係が変わったこととかってありますか」

Mさん「それが同居していればあると思うんですけど、別に住んでいますとね、本人に言っていませんので、これという変化はないんですが、私の方から息子に対する話し方とか、気持ちとか、そういうものがちょっと以前に比べると気をつけてというか、以前は知らなかったことが少しわかってきたので、そういったことを気を付けながらメールなり、それから手紙なり、やっぱりそこで勉強したことを参考にしていますね。以前は意外と私に対してあまりいい感情を持っていなかった、最初は『お母さん』って呼びませんでしたからね。『お前は』みたいなことを言っていましたけど。暫くしてからは『お母さん』っていうようになってきたので、いくらかはそういう面では変わってきたのかなぁという気はしますね。高校2年の2学期から不登校になってしまいまして、その後アルバイトを3か所ほどやったんですけど、やっぱり続きませんでしたね。そのままずっともう20年近くになりますかね。結構長いんですよ。今、息子48です。私と息子は普通というか。ただやっぱり親のことは馬鹿にしていましたよね。自分がこうなったのは親のせいだみたいなところもあったようで、その当時は。今はそんなふうに思ってないです。ある時から、じゃあ親のこともあるけど俺自身にも原因があるんだよな、みたいなこと言っていましたから。あ、そこが分かってきたんだと。今までは親が悪い、親が悪いと言って私のことを敬遠していたんですが」

山田「最近、当事者の方が居場所、支援とかですね。自分と同じ境遇の人とも会ったりする、いろいろな場所ができていると思うんですけど、そういうところには息子さんは参加されていたんですか」

Mさん「このコロナ前には、私は保健所の保健師さんと、それから比較的近いところには居場所があるんです。こじんまりとした。その居場所は見学させてもらいました。その保健所の保健師さんとは二度ほど相談させていただいたんですが、保健師さんは訪問しますって言ってくださったんですが、いつ起きていつ寝ているのかわからないので、それで息子に2つのこと話しました。こういうところがあって、どちらかにちょっと行ってみる気がないと言ったら、なぜか公務員が嫌いなんですよね。公務員さんが。理由はわからない。何か市役所であったかもしれませんね。保健師って公務員だろうって言うから、いや公務員じゃないと思うよ。看護師さんの資格持っているし、赤ちゃんからお年寄りまでいろいろみてくださる方で、と言ったけど、ふ~んとか言って、それでそこも行かなくて、そのまま過ごしてきちゃったんですね。今年からまたもう一回その保健師さんと、それからその居場所の方に連絡とろうと思ったんですが、コロナになってしまったので、今年は何にもしてないので、もし第6波が来なければ、すぐ近くの居場所で本当に小規模なところなので、そこを訪ねてみようと思っています」

山田「それはお母さんの方がですか」

Mさん「そうです。まず私が行ってよく話を聞いて、息子の状態の話をして、それからだと思いますのでね。そこからまた息子にもう一回話そうと思っています。だから何とかしてね、昼夜逆転を直さないと。私も会いませんしね。なかなか会いません。夜中の2時3時にね、メールが来るようなんで。私はとてもいけないので行きたいけど行けない。何かにつけて会う口実を付けてメールするんですけど、あーそれいいねって返事来るんですね。今忙しいからまた後でメールすると。忙しいのがあるのか分からないけど、なんかやっているんですよね。行くとぶつぶつぶつ本か何かこう置いてあって、一生懸命暗記しているみたいな感じです。そういうふうにブツブツずっと言ってそれで本を見ているんですよ。何やっているかすごく分からないんですよ」

山田「でもなにか目的を持っているのはいいんじゃないですか」

Mさん「何かやっていますね。何だかそれ分からないですけどね。でもないよりはぼーっとしているよりはいいのかしらとは思っていますが。息子が今何か勉強しているのが、どこかでそれが発表までもいかなくてもいいんですけど、それがグループというか、そういうところがあれば、まずそこに行くと自分のやっていることの話ができると、そこからつながるのかなと思っているので。よく皆さんの話を聞くと、ゲームが好きとか何とかしてそれでつながるみたいなので、うちの子はゲームをやっているかどうか分かりませんが、ゲーム機は持ってないですけど、そういう今なにか勉強していると思うんですが、そういうつながりでどこかで、大したことできてないと思うんですが、それを聞いてくれる、発表できるところがあれば少しは自信が付くんじゃないかと。今全然自信ないですから、まずは自分がやっていることをちょっと認めてもらえて、それでまず自信を付けて。そうするとまた人との付き合いができるようになるかなと思っていますので、そういう場があるといいなと思っています」

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山田「Mさんですよね、80歳。Yさんは先程77歳。お子さんは50代だとおっしゃっていました。いわゆる8050問題だと思うんですが、そういったケースっていうのはまだまだ多いですか」

市川さん「いや、まだまだ増えていくと思いますね、残念ながらですね。さまざまなことをみんなで今、協力し合って考えて実際に実行に移しているんです。これもやっぱり行政の力、お力添えがどうしても必要なんですよ。つまり親も高齢化するんです。そうするとさまざまな問題が出てくるんですね。特に介護の問題です。じゃ誰が介護の面倒を見るんだとか。さらに一緒にもし住んだのであれば、ひきこもりのご本人がどういうふうに親御さんと関わればいいのか。だからそれをサポートする地域包括支援センターとか、それから病気があるとすれば病院とか医療機関ですね。それからもう一つ大きな問題は経済的な問題ですね。じゃあ医療費はどうするんだとか、介護の場合はいろんな設備をどうするかとか。お金の問題で経済的困窮っていうのは非常に厳しくなってくる。そうすると、さまざまなサポートが必要になってくるわけです。それはどうしても地域で特に公的な支援でサポートしてほしいわけですね。それもですね、いわゆるその縦割り的なたらい回し的な相談ではなくて、一括でワンストップタイプでこの家族全体をサポートする。そういう体制作りがどうしても地域に必要なんです。

ひきこもりの問題は、医療、介護、経済的困窮などに関わる様々な支援機関が連携して当たらないいけない。

その際、大切なことは、「当事者目線」を取り入れること

僕達は今このチームによる合同相談会っていう方式を、各市に提案をしておる訳なんですね。これは例えば、今言ったようにまずひきこもり担当の窓口の相談員の方、それから生活困窮の相談員の方、生活困窮者自立支援の相談員の方ですね。それから高齢福祉。つまり地域包括とかそういったところの高齢福祉の相談員の方。それから精神障害あるいは身体障害などの障害を持っている場合も増えてきていますので、障害福祉の相談の方。そしてその就労支援も兼ねて、生活困窮の自立支援機関や生活福祉の相談員の方。これに実は当事者目線が必要なんです。つまり家族会のピアサポーター、それから当事者の団体の方、あるいは当事者のピアサポートの方。つまり家族ピアサポート、それから当事者ピアサポート。この二者が入ってくる訳なんです。そして家族目線も含めた形で、一人の相談者に対して、7、8人で話を聞いて、そしてそのサポートの方向付けをするわけです。というふうにしてやらないと、家族丸ごと相談っていう体制はできないのです。僕はそういった意味でこのチームによる合同相談会方式は是非とも各行政の皆さんでご検討していただきたいと考えているんですね」

山田「先ほど市川さん、当事者が支援サイドにやっぱり絶対いる、必要だよとお話しされていました。その辺の思いはどういうことでしょうか」

市川さん「やっぱり、当事者目線が大事なんですね。僕達、親目線だけでは駄目なんです。両方あいまって、その家族のさまざまな課題っていうものを家族を含めた当時者目線で話を聞いて、そしていろいろな対応ができる訳なんですね。これを聞きながら専門の相談員の方も参考にしていただく。とかく支援者目線で相談するというのではなくて、そこに当事者目線を入れるという。ここは僕は非常に画期的なやり方だと思うんです」

山田「今日お話しするまで、やっぱり家族会と言えば家族会、家族の支援みたいなだけというイメージがあったんですが、そうではなくて、そこに当時者も入ってコミュニティーカフェのようなところとかつながりができつつあって、それをベースにもっと大きい行政も含めた相談プラットホームというかチームを作られて市川さんは今向き合っている、当事者支援に向き合っているということなんですね」

市川さん「支援っていう程ではないですが、あくまでも当事者の一部として関わらせていただいていると。本当に支援なんておこがましいですからね。そんなことも言えないので、同じ仲間としてお話を聞きますよ、という僕のスタンスなんです」

山田さん「なるほど。ひきこもりボイスステーション。本日は東京 楽の会リーラ代表 市川乙允さんにお話をうかがいました」


◆ NPO法人楽の会リーラ http://rakukai.com/ 

◆『ひきこもりVOICE STATION』 公式WEBサイト https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp/ 

◆TOKYO FMサンデースペシャル『ひきこもりVOICE STATION』放送決定! (2022年2月13日19:00~19:55)

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