風の無い日に II
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ガスマスクの店員がカフェラテと桜あんぱんを私の横にゆっくりと置いた。
頼んだものと一緒にノートが添えてある。
ご自由にお書きください。
ノートを開くとそこには思い思いの言葉が並べられていた。そして、一つ一つの言葉には返信が添えてあり、そこには直接的でないけれど確かな関係性を感じるやりとりが残されていた。
心にそっと寄り添う言葉。
去年の3月、激務で体を壊して退職をした。胸を弾ませて入社式を終えた日の桜を今も覚えている。散っていく桜でさえ舞っているように感じられて胸がときめいた。
あれから3年の月日が経ち、退職した私が見た桜は両手をいっぱいに空高く広げているのにそれに気付いてももらえずに
ほら、見て‼︎私を見て‼︎
と叫んでいるように感じたあの日。
桜は人の心を投影する。
今年はどんな風に感じるだろう。
私は鞄からボールペンを取り出して、
今年の桜は素敵でありますように
と記した。
そしてもう一つ、、
周りからは立ち止まっているように見えていても心はいつも躍動している。
生きていればそれでいいのだから。
と書き加えていた。
私、そう思っているんだ。
その言葉を書いて、私は妙にしっくりと気持ちが落ち着き、自分を慈しみたい気持ちで満たされた。
カフェラテを一口含んで、桜あんぱんを頬張る。なんて美味しいんだろう。
ネコのしっぽが左右に揺れる。
今年の桜は今までの中で一番美しく感じられるような気がしていた。
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*タバコ屋不思議本日開店
(2019年2月7日〜)
*日記やエッセーみたいなもの。日々、感じたこと、思ったこと、小さな出来事を書きたいと思います。