見出し画像

コロナショックの今もらえる「補助金」徹底活用術

新型コロナウィルスの影響が長期化し、中小企業経営者の多くは不透明な先行きに不安を抱えている。このピンチを乗り越えるには、いかに手元のキャッシュフローを最大化できるかが重要になる。補助金や助成金や融資など、国が用意するさまざまな支援制度を経営者はどう活用すべきか。
今回は「補助金」にフォーカスし、中小企業診断士で社会保険労務士の五味田匡功(ごみた・まさよし)氏に、補助金活用のポイントや注意点、コロナ禍で経営者に伝えたいアドバイスを聞いた。

そもそも補助金とは、どのようなものか?

補助金とは、国がめざしたい政策を実現するために、会社や個人に与えるクーポン券のようなものです。
意外かもしれませんが、補助金は国の「都合」で動く仕組みです。国は公平で効率よく税金を徴収するために、消費税や法人税などの税率を上げたり、下げることができます。
補助金も同じで、国の政策や狙いに沿って税金を徴収し、補助金を出しています。コロナ禍で低迷する観光業の活性化に向けて、国土交通省が今年7月から始めた『Gotoトラベルキャンペーン』などがわかりやすい事例ですね。税金と補助金の2つで国の方針をコントロールしているのです。
国からもらえるお金には、補助金、助成金、支援金などがあります。厚生労働省から給付されるものは助成金、それ以外の各省庁がさまざまな目的で事業をサポートするために給付するものは補助金と呼ばれ、補助金のなかに支援金や給付金なども含まれます。
補助金の原資は税金であるため、事前の審査や補助事業の報告義務などが「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)」に定められています。
金融機関からの借り入れと異なり、返済不要ですが、補助金の給付は補助事業の終了確認後となることが特徴です。
現在、募集中の補助金は約3000種類。経済産業省や中小企業庁が募集する補助金のほかに、環境省や国土交通省などの各省庁や外郭団体からも出ています。募集中の補助金は随時入れ替わるので、年間で1万件以上の募集があります。


おすすめの補助金と、中小企業の補助金の受給状況について

経済産業省や中小企業庁が募集しているメジャーな補助金は、ご存知の方も多いと思います。「中小企業生産性革命推進事業」のなかにある、次の3つの補助金がよく活用されていますね。
①「小規模事業者持続化補助金」――小規模事業者の販路開拓をサポート
②「IT 導入補助金」――業務効率化やIT導入をサポート
③「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」――ものづくりや新事業の創出をサポート

このほか、損失補てん系の給付金もよく使われています。

画像1

補助金はコンペ式で「懸賞」と同じようなものです。例えば、10件の募集枠に対して、5件の応募ならば採択されますが、応募数が募集を上回る場合は一定の確率で落ちる可能性があります。
経済産業省や中小企業庁のメジャーな補助金のように、みんなが知っているものは申請が集中しやすいですね。「CANPANフィールズ」という日本財団の公益事業コミュニティサイトには、募集中のさまざまな補助金のほか、応募件数や採択件数などの情報が出ています。
CANPANフィールズ
ここで補助金について、多くの方が誤解しがちなポイントをご紹介しましょう。実は「補助金を出す側は、補助金を出したい」のです。補助金を申請する際に、「落とされるから出したくない」と思われる方も多いのですが、それは応募数が募集を上回った場合の話です。
逆に応募が少ないと、案件がムダになってしまい、補助金担当者の仕事そのものが問われます。だから、補助金を出したいし、多くの人に活用してもらいたいわけです。
一方で、これだけ多くの補助金があるのに、メジャーな補助金以外はあまり活用されていないことが課題となっています。なぜ、中小企業の経営者の多くは、補助金をうまく使えないのか?それは事業計画を作っていないからです。
具体的な計画がないまま、「何かうちの会社に合ういい補助金ない?」とおっしゃる経営者が実は多いんですよね。そういうスタンスで探している限り、見つからない。
逆に言えば、会社で今後実現したいことを整理して、きちんと事業計画を立てておけば、必ずふさわしい補助金が見つかり、申請も通りやすくなります。


コロナ禍での賢い経営のコツは、「借りる・もらう・止める」

最近、国の政策を教えてほしいとか、どうしたらコロナを乗り越えられるか?というご質問をよくいただきます。コロナ禍での賢い経営は、手元のキャッシュフローを最大化することがポイントです。現金さえあれば、会社は潰れませんからね。
「借りる・もらう・止める」の3つを上手に活用することが大切です。
➀「借りる」――日頃から付き合いのある金融機関に相談したり、日本政策金融公庫や信用保証協会からの借り入れを活用。新型コロナウィルス関連対策の貸付制度もあり、一定の要件を満たせば無利息で借りることが可能。
②「もらう」――損失補てんや休業補償、経営環境の変化に対応するための補助金や助成金を申請。自社の状況に応じた補助金などを活用することで、コスト負担を最小化。
「家賃支援給付金」や、「持続化支援給付金」などは、補助金と違って申請したら必ず給付される。
③「止める」――税金や社会保険料の猶予納付制度を活用し、支払いを延期。コロナの影響による特例措置では、延滞金もかからない。手元のキャッシュを確保する点では、こちらも補助金や資金調達と同じ効果がある。

画像2


「補助金もらいの銭失い」に注意!

例えば、ドーナツ屋さんで30%割引のクーポン券をもらった場合、ドーナツを食べたいと思っている人には得ですが、食べたくない人にとっては、必要ないもののために70%のお金を払うことになります。
ところが、補助金ではこの理屈が通用しない。50%の補助が出るから新しい機械を買っても、使わないケースが多いんですね。事業推進という本来の目的から外れて、補助金を使うことが目的になりかねない。そこが一番注意すべき点です。
補助金の交付を受けた補助事業には実施期間が定められています。この期間中に必ず納品しなければならず、納期に遅れた場合は補助金がもらえません。
補助金は基本的に足りない部分を補うために税金からお金を拠出するので、補助事業の実施報告も義務付けられています。
また、補助金には「収益納付」という仕組みがあります。補助事業による収益が補助額を上回った場合、補助金の一部または全部を国庫に返納するというものですが、今回のコロナ対策関連の補助金では撤廃されています。


チェック項目に沿って書けばよい~申請書記入のポイント

申請書を作成する時に、「想い」をメインに書かれる方が多いのですが、実は審査する側は困るんですよね。想いの強さや、かっこよさを重視するわけではないですから。
どの補助金も審査の観点や盛り込むべき項目が定められていて、そのチェックリストをもとに審査しています。申請書には想いをたくさん書くよりも、チェックされる項目をきちんと押さえて書くことが大事です
審査する側としては、上から順番にチェックしやすい申請書は、手続きも簡単です。逆に項目に沿って書かれていない申請書は、あてあまる項目の有無をひとつずつ探さなければなりませんからそれだけでマイナスです。
盛り込むべき項目をしっかり入れる。そして盛り込むべき項目は募集要項に必ず書かれていますから、それを必ず記入する。それを心掛けてください。


コロナは「チャンス」、パニックに惑わされない事業計画を

画像3

事業計画とは何かというと、私はカーナビに近いと思います。
車を運転する時にカーナビを使わない人はいませんよね。どこに何があるのか、どう行けばいいのか、迂回路もナビでわかりますから。
事業計画がないのは、ナビを使わずに走るのと同じようなものです。不透明な時代だから計画が立てられないという方もいらっしゃいますが、では知らない街だからナビを使わないのかと。むしろ、使うべきでしょう。
コロナ禍でさまざまな経営者の方々をサポートして感じたことは、儲けている会社の経営者は、コロナを「チャンス」と捉えています。
切り替えが早くて、環境の変化は儲かる時だとわかっている。一方で、儲かっていない経営者は「我慢」と捉えています。この違いは大きいですね。
だから、コロナに振り回されすぎないこと。世の中がコロナでパニック状態の時に、それに合わせた商売をするのは、パニックに巻き込まれていることになります。
それよりも、この状況はいずれ解消することを見据えて、今後の事業計画を冷静に考えたほうがいい。周囲のパニックに惑わされず、時代の変化に敏感になることが大事だと思います。


災害にも補助金の活用を

災害時は、国がさまざまな補助金を用意しています。例えば「熊本・復興・補助金」や「熊本・水害・補助金」で検索すると、「補助・助成・熊本県」と関連情報が出てきます。
これを順番にチェックしてもよいのですが、熊本県庁に直接問い合わせたほうが早いですね。「今、こんなことで困っているので、自分が必要としている条件に合う補助金はありませんか?」と。
具体的にどうしたいのか?が明確ならば、探しやすいと思います。
また、中小企業庁が運営している「 J-NET21」や「みんなの助成金」という検索サイトにも、補助金の情報が随時掲載されていますので、地道に調べてみてください。

※2020年9月時点の情報です。
話者プロフィール
五味田 匡功(ごみた まさよし)

画像4

一般財団法人日本次世代企業普及機構 代表理事
ソビア社労士事務所、株式会社ソビア 創業者 兼 顧問
一般社団日本事業継続支援機構 専務理事
1980年11月2日生まれ(39歳)
2007年に会計事務所在籍中に社会保険労務士・中小企業診断士に同年度合格。会計事務所内での社内ベンチャーとして社労士事務所を立ち上げ、その後独立。Wライセンスを活かし、人事・労務設計と共に、ビジネスモデルの改善もサポートし、過去延べ 3000社の業務改善を実施している。
2020年3月で事業承継を終了し、ソビアグループ顧問に就任する。
年間100回以上、全国のセミナーや研修で登壇。
・船井総研:社労士を対象「働き方改革、営業研修、M&A」、 弁護士を対象「これからの弁護士経営」
税理士を対象「働き方改革、提携営業」
・芦屋大学 非常勤講師:「社会人基礎力」
・タカラスタンダード㈱ 管理職研修(労務):「建設業の社会保険・労働保険の義務化対策」
・オリックス㈱:「未払残業対策、確定拠出型年金の活用」
・大阪商工会議所:「未払残業対策、助成金・補助金活用、クラウドファンディング」
・りそな銀行:「補助金活用」
・池田泉州銀行:「補助金活用、財務支援」
・もみじ銀行:「働き方改革」
・大阪ガス㈱:「チームビルディング研修」
・あべのハルカス近鉄本店:「オープニングスタッフ研修」
・損保ジャパン日本興亜:「営業研修」
メディア執筆実績
・先見経済「働き方改革のススメ。攻めの人事が慢性化している人材不足を解消する活路」
「働き方改革視点でみる、ホワイト企業とは」
編集協力:高崎美智子

社長onlineについて

経営者向けウェブメディア「社長online」では、経営者に役立つ情報を多々配信しています。
経営者に特化した会員制のメディアで、社長が本当に知りたい、この場だけに共有される情報を多々発信しています。

画像5

社長onlineのご登録は、こちらをクリックください。

セミナー等の割引が受けられる、お得なプレミアムプランについてはこちら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?