一方的な「諸手当のカット」「長時間労働・未払残業代」を放置する㈱バンビに物申す!

老舗時計バンドメーカーである㈱バンビとの2回目の団体交渉を終えました。大きくテーマは①住宅手当等の廃止・配偶者手当の改悪、②グループ会社であり、製造部門であるバンビ工業株式会社の課長職である社員への「長時間労働・未払残業代」です。

①住宅手当の廃止・配偶者手当の改悪(全社員対象)

前回ブログで紹介しました「住宅手当等の廃止・配偶者手当の改悪」についてです。昨年6月何の前触れもなく約10分間全社員の前でスライドを映しながら、一方的に説明が行われました。大まかな内容は下記です。

・住宅手当の即時廃止
・配偶者手当の改悪(妻への手当減+子供への手当増)~但し子供一人までは減額
・直近3年間は旧手当分と比較して減額した分は、調整手当という項目で多少の上乗せをして穴埋めをする。
・3年後は、旧手当との差額の穴埋めである調整手当を廃止

簡単にまとめると、直近の2021年5月までは、旧手当と比べて減額は無く多少の上乗せは有るが、3年後の2021年6月からは、無期限でこの調整分が一気にカットされるという内容です。

こんな重要な変更を社員との話し合いや調整も行わず一方的に決定事項として、即日実行され現在に至っています。しかも一番重要な廃止後の調整分の支給を3年後に廃止するという部分を一言二言口頭で説明し終わり、聴いていない社員が悪いと言い切る酷さです(文書では残っていない)。大きな金額の人は3年後に毎月20,000円近くカットされ、無期限でそのカットされた給与で働かなければならないという状況です。つまり、時間の錯覚を利用して3年後の不利益変更を実現したわけです。

団体交渉では、明かな3年後の不利益変更の撤回を求めましたが、会社側は「現在は不利益ではない」と言い切り、3年後の調整分の無くなる件に対しては「その時が来たら考える」という実に曖昧な姿勢でした。担当課長に至っては「若い社員はこの決定を大変喜んでいる」と堂々と言い切る始末です。一体、誰が喜んでいるのだろうか?冷静に計算すれば単なる足し算引き算です。3年後の不利益が分かってこのような発言をしているわけだから、不誠実な対応としか言えません。ましてや、こんなあからさまな不利益変更を一方的に押し付けるような会社で、社員は、一生懸命働く気力など出る訳もありません。

働く原動力である社員を業績の調整弁にしか考えていない㈱バンビ。自分の社員に苦しい生活を強い、利益を確保するというこの会社。あなたなら本気で働けますか?

②グループ会社であり、製造部門であるバンビ工業株式会社の課長職である社員への「長時間労働・未払残業代」

こちらの課題は実に深刻です。㈱バンビの皮革製造部門であるバンビ工業株会社に所属する工程管理の課長職である社員の長時間労働及び未払残業代である。この担当課長、ここ5年以上月80~100時間を上回る時間外労働をさせられており、しかも、それに対する時間外手当が一切支払われていないという酷さです。会社がこのような働き方を放置してきた重要なポイントは「この担当課長は管理監督者であるか?」という点です。この課長の権限の現状は下記です。

・出退勤の自由は無い
・経営権への発言は一切認められていない
・交際費等経費の決済は5,000円であっても出来ない
・人事権は無い
・管理監督者相応の支払いは受けていない

この担当課長は「管理監督者」にあたるだろうか?勿論、担当課長の現状の権限は上記であるわけだから、当然に彼は労働基準法上の管理監督者には当たらないわけです。実態から判断すれば、この担当課長は、労働者であり、当然に法律上の時間管理やそれに対する対価の支払い対象です。

ところが、親会社である㈱バンビは、これを認めようとしません。挙句の果て、会社としては権限を与えているはずだけど、本人が実行できていないのが問題であると、問題を本人の問題だとすり替えるわけです。しかも、最悪なのは、この担当課長が一番働いている現状を隠す為に、出勤簿を改ざんしていたりと、会社ぐるみで、この状況を隠そうとしているのです。その背景は5年前に遡ります。

遡ること5年

遡ること5年前。このバンビ工業株式会社に労働基準監督署の立ち入り検査が入りました。当時は、この担当課長も含め100時間超の時間外残業をしている社員が4名おり、しかも、全員残業代の支払いはありませんでした。更に、この4名以外の社員についても、一切残業代は支払われていなかったので、そこにメスが入ったわけです。

当時、労基署の是正勧告により、会社は改善を約束し、数か月の未払い残業代を支払い決着になりました。ところが、当時100時間以上の時間外労働を強いられていた担当課長2人には一切残業代は支払われず、その一人である先の担当課長が、現在も同じような時間外労働及び残業代未払いが続けられているという事です。

最悪なのは、5年前の労基署の是正勧告に対する改善約束をした二か月後には、この担当課長の100時間を超える時間外残業・残業代不払いが再開されており、会社がそれを放置し、その状況が今でも続いているという事です。しかも、労働時間隠しの為、出勤簿には同じ時刻が記録されており、明らかに労働時間の過少申告を会社側が強制しているという行為がずっと行われているということです。

要するに担当課長が働いた時間外に対する対価を支払っていないという事実は、そのまま会社の利益になっているという事です。実に悪質です。

なぜこのような不利益変更や違法行為が行われるのか?

この背景には大きく二つの要因が働いています。
①経営者(オーナー)からの、現場を無視した数字だけの異常な追求
②管理職にしておけば残業代支払いはしなくて済む(人件費削減目的)

オーナー会社(一族経営)である㈱バンビにおいて、トップである経営者の発言が全てです。月一回行われる会議においても、数字がいかない部門の担当に対しては、オーナーが烈火のごとく怒鳴り散らすという光景をずっと見てきています。こんな状況だから、日常においても、せっかく現場から重要な意見が出ても、中間管理職に吸い上げられた後、中身は中間管理職の都合のよい言い訳に変換され、オーナーの耳に届きます。オーナーに睨まれたら終わりだという恐怖を潜在意識に刷り込まれた社員達は、自分の保身のために本当の問題を隠し報告します。何故なら、現状を報告しようものなら、烈火のごとく怒りが自分に向けられ、自分のキャリアに傷つくと潜在意識のレベルで恐れているからです。残念なことに、役員クラスになってもオーナーに意見をすることが出来ないようです。会社の改善よりも、自分の身を守ることが重要という思考になってしまっているのです。

かれこれ30年以上もこのような状況が続く中で、自分のキャリアを守る為に社員達は、自分の都合のよい言い訳や報告をするという無意識的な働き方が確立されてしまいました。これに気付いた優秀な人材は早々に会社を去り、それでも頑張ろうという真面目で誠実な社員はこのオーナー体質の会社にどっぷり浸かり、時間を経て、自分が生きるためには改ざんも厭わないという体質に変換されてしまいます。その中で、オーナーに良い数字を見せるために、人件費の操作、つまり労働時間の操作や残業代を払わないことで人件費を抑えるという発想が無意識に浮かぶ頭の構造が出来上がったわけです。

今回、全社員への諸手当のカットも、バンビ工業における担当課長の過重労働・残業代未払も、全て最終的には、この会社のオーナー体質にあります。究極的言えば、諸手当のカットも、人事担当者のオーナーへの成績アピールであり、過重労働・残業代未払も、オーナーへ業績報告の数字を良く見せようとの違法操作です。そんなレベルで全社員の待遇が不利益に変更されたり、一部の社員に過労死レベルの労働を強いられ、しかもその対価を払われないという様な状況を許していいものでしょうか?

最盛期に比べれば業績は相当落ちています。しかし、現時点において、経営を圧迫するような業績ではないし、これまで数十年に渡る残業代未払によるプール金があるはずです。一体、この会社のオーナーは何を目指しているのでしょうか?

「住宅手当等の廃止・配偶者手当の改悪」しかり「長時間労働・未払残業代」しかり、数字追及のために社員に多大な不利益を課す㈱バンビ。団体交渉でその不透明部分を追求すれば、保身のために不誠実な回答を繰り返す担当者達。この体質はすべてオーナー一人に起因しているという事です。

・3年後に手当を削られ将来に不安を抱えて働く社員。
・出世して課長になれば残業代も出ずに、人の数倍も働かされるのを目の前で見る社員達。

このよう状況で、ポジティブに会社の為に仕事が出来るでしょうか?お客様に喜んでもらえる製品を自信もって届けようという気になれるでしょうか?

団体交渉で勝ち取りたい最大の論点は「社員を本当に大切にする会社になって欲しい。」ということです。法律上、会社は株主のものでしょうが、実質、会社は社員の力なくして成り立つことは出来ません。会社の原動力である社員一人一人の力なくして会社の存続など成り立つ訳はないです。「自分の社員さえ幸せに出来ない会社が、顧客を満足させる製品を世に出すことなど不可能だ」という事です。「社員を大切にする会社」だからこそ、社員は、自分の命でもある時間を「会社」の為に投資するわけです。一体、この会社は何を目指しているのでしょうか?

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