世田谷の認可外保育園マム・クラブの即日閉園 〜閉園の日に何が起きたのか(2)

本記事は、「世田谷の認可外保育園マム・クラブの即日閉園〜その日に何が起きたのか(1)」の続きです。

■16時ごろ:倒産の噂が流れ始める

 16時頃、マム・クラブから独立した他の園の室長から電話があった。「マムクラブは本日をもって倒産させるそうです。」と。
 社員も講師も、一切諸川雅子(代表取締役)の口から聞いていない。信じられなかった。なぜ社員にではなく、他の園の室長に真っ先に連絡するのか?
 本当に倒産するのだろうか?

 その場にいた森紗綾(取締役、雅子の次女)に、倒産について尋ねると「私も今知った。子どもたちが可哀想。どうしよう」と泣き始めた。

 私も講師も、「泣きたいのはこっちですよ!今すぐ雅子先生に電話して!」と伝えた。勿論、こちらから電話かけても繋がらないからだ。しかし、娘で取締役であるはずの紗綾は、全く動いている素振りはなかった。

■17時半ごろ:取締役である長男が手紙を手に来園

 そして17時半頃、スーツ姿の男の人が園に訪れた。
 普段は園に姿を現すことなどない、諸川隆人(取締役、雅子の長男)だ。

 諸川隆人は「本日をもって業務停止します」と1枚の手紙を手に持って来て、見せてきた。園は倒産手続きをはじめ、私たちも今日を持って解雇になるという。

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 私と講師は、納得がいかず、「雅子先生はどこですか? 何故ですか? 子どもたちの保護者にはお知らせしているのですか?」と泣きながら聞いた。

 諸川隆人は、「諸川雅子はいま体調を崩しています。保護者の皆さんには、月曜日に玄関にこの紙を貼って伝えます。」「雅子の病名はわからないです。雅子に連絡はできません。これ以上体調を悪化させられないので。」「これ以上は弁護士に全て一任しています。」と冷たく言い放った。

 さらに、倒産の経緯について、諸川隆人は「代表の雅子が倒産を決めて、私たち取締役がそれを知ったのは14時すぎです。」と説明した。
 私と講師は「13時まで雅子先生は保育園でピンピンしていたじゃないですか!」と抗議した。
 病気なんて、説明を逃れるための言い訳にしか思えなかった。

 しかも、14時頃に取締役たちは倒産を知っていたのだとすれば、森紗綾も嘘をついていたことになる。
 何が「私もいま知った」だ。
 平気な顔をして嘘泣きをし、被害者ぶっていたのだ。

「倒産をわかっていて保護者から予約を取っていたのですか?」と私が森紗綾を問いただすと、紗綾は沈黙してしまった。

 教育者として通っている限り、子どもたちの成長を見届ける責任はあると思う。
 こういった人が教育者を名乗っていいのか?

 こうして揉めていると、17時のお迎えの保護者が加勢してくれた。
 マム・クラブ三軒茶屋では、ほとんどの子どもたちは15時で帰っていたが、2、3名のみが17時以降のお迎えとなっている。
 17時に子どもを迎えに来た保護者が、園から外に出て帰りの支度をしていたときに、園内の様子がおかしいことに気づいて、一緒に取締役に抗議してくれたのだ。

 他の社員や元パート従業員たち、労働組合のスタッフや組合員の方たちも駆けつけてくれ、取締役たちに抗議してくれた。立ち去って責任放棄しようとする隆人たちを説得し続けた。

■18時すぎ:言い訳する代表の息子・娘たち

 諸川隆人は「弁護士に委任している。なにも答えられない。大声を出さないでください。」と逆ギレをしていた。

 雅子の長女である佐藤舞も、「全て弁護士に委託しています。」「私の答えは、「弁護士に聞いてください」しかありません!」と叫んだ。
 彼女は取締役ではないはずだが、雅子や兄妹の取締役たちとグルになって、会社側の人間として、倒産のことも、弁護士に後始末を一任すること最初から知っていたのだ。

 なお、この佐藤舞は何食わぬ顔で、マム・クラブの倒産手続き後、12月に長野県の白馬で「Preschool & Learningcenter mai・mai」という保育施設を新たに立ち上げており、偽装倒産が疑われる。このことについてはまた説明したい。

 次女で取締役の森紗綾は、何も言わず、抗議する私たちをスマートフォンでずっと撮影していた。

 2時間くらい食い下がったところで、ようやく弁護士がやってきた。
 なんとか園を続けられないのかと尋ねると、弁護士は感情を込めずに次のように言った。

「閉めるしかないでしょ。会社としての権限ですから。」
「しょうがないですよね。運営できないんですから。」

 これが会社の本音なのだ。もう会社には頼れない。
 その後、私たちはユニオンのスタッフの方たちと話し合い、当面のあいだ自主運営をすることを決めた。
 隆人と弁護士にそのことを告げ、1時間くらい粘り、自主運営を事実上認めさせた。

■21時ごろ:取締役「僕の会社に迷惑がかかるから、保護者説明会には出られない」

 私たちは日曜日に、倒産と自主運営について説明するため、緊急の保護者説明会を開催することにした。
 立ち去ろうとする取締役の隆人に、せめてその説明会で5分でもいいから出席して謝罪する必要があるのではないかと求めた。
隆人は自分はその日に仕事があると答えて、こう言い訳した。

「僕のいる仕事は僕がいないと回らないので。僕の勤めている会社に迷惑をかけてしまうので。」(取締役の隆人は、東急電鉄に勤務している。)

「会社に迷惑をかける」?
 このままでは週明けに、出勤途中に子どもを預けに来た保護者たちが、園の前で初めて閉園を知り、仕事に遅れたり、休んだりせざるを得なくなってしまう。
 その人たちの会社には多大な迷惑がかかる。
 保護者の人たちも、会社での評価にも傷がついてしまうかもしれない。

 保育園の経営者には、子どもたちや保護者たちを守るための責任があるのではないか?
 マム・クラブの取締役である隆人は、自分の仕事のことは心配するくせに、自分の責任で迷惑することになる20〜30人の保護者たちのことは、どうでもいいというのだ。
 これが保育園を経営する人間の態度だろうか?

 私たちはその後、100名近くの保護者に電話して、諸川雅子代表やその息子・娘が謝罪する代わりに、保育園の閉園について電話した。
 そして日曜日に説明会を開催して、自主運営について説明した。
 会社は本当に何もしなかった。

 当然のように、隆人は、日曜日の保護者説明会には来なかった。
 保護者に謝罪するつもりなどなかったのだろう。
 そしてこれ以降、私たちは隆人とも二度と会っていない。
 彼らは、自分たちの責任から逃げ回り続けている

 ここから二週間、私たちは利用者の皆さんの預け先が決まるまでの間、保育園の自主運営をなんとか乗り切ることができた。しかし、諸川一族からは、いまだに何の言葉もない。

 彼らに責任を取らせるまで、私たちはあきらめるつもりはない。

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