(オフレコ対話)IR現場からみる小粒上場の問題

A:最近、未公開株も投資対象とする公募投資信託を大手の資産運用会社や新興の資産運用会社が組成していますね。

T:小粒上場を回避する方策としては良いと思う。一方で、本来、魅力的な未公開株はVCなどが素早く抑えてしまう。だから、個人が投資できる未公開株は売れ残りリスクが高いと思うよ。

A:小粒上場問題が深刻なこともあり、小粒のまま上場するのではなく、大手の傘下にいったんなってから上場する。あるいは、セカンダリー市場が整備されるなど、対策が取られていますね。

T:良いことだと思う。グロース市場の上場企業の大多数は、投資対象にならない。上場ゴールで、あとは株価が下がり続ける一方。誰も買わない、買えない。ただ、もっと問題なのはスタンダード市場であり、さらに問題なのはプライム市場。

A:それはどうしてですか。

T:プライム市場の企業でも時価総額が2,000億円を下回ってくると、アクティブ投資家がほとんど投資していないことが多い。アクティブ投資の中でもIR対象になるところに絞れば、さらに減る。2,000億円台でこれだから、1,000億円以下だとアクティブ投資の観点では、まったく相手にされていない。

A:そんなにひどいのですね。

T:個人的には、今のプライム市場の各種基準を10倍に引き上げるべき。流通時価総額は少なくとも1,000億円。そして、いまのプライム市場の基準をスタンダード市場に適用する。上場企業数は、グロース市場やプロ市場を含めて3,900社以上あるけれど、プライムとスタンダード市場の上場企業数は今の1/5~1/10くらいでちょうどよいと思うよ。

A:なかなか厳しいですね。

T:厳しくない。誰も投資しない、投資できない企業ばかりが溢れているのは、市場ではない。東証なども本当はわかっているはず。わかっていても、見ないようにしているだけ。例えば、上場している地方銀行は、時価総額が数百億円規模のところが多いけれど、こんな程度の時価総額の企業が何社あっても、どうにもならない。最低5,000億円。いや1兆円くらいの時価総額が必要。そうでないとIR活動はできないし、やる意味もない。

A:電気・ガス、地方銀行だけでなく、時価総額が小さい企業が驚くほど多数上場しているセクターがたくさんありますね。

T:アクティビストが、様々な企業へ投資し、アクティビスト活動をしているけれど、これは必然だと思うよ。こうした外圧で、これまでほどけなかった力学、思考が壊されたほうが良い。とにかく、小粒な上場企業には誰も投資できないのだから。

A:そうですね。前から不思議でした。人口減少で厳しい厳しいと言いながら、全国に同じような企業が多数存在するのが。こうした縛りをなくしたら、日本企業もさらに変化、発展する余地はありますよね。

T:大いにあると思うよ。実際、海外投資家から、海外事業はやめて、国内にもっと集中すべき。未開拓なエリアがいろいろあるのではないかいう指摘を受けている日本企業は少なくないよ。

A:なんで、これほど小粒な上場企業ばかりなのでしょうか。

T:一つはオーナー系企業の上場。公開と言いながら実態はオーナー企業の所有物。こうしたところがたくさんある。次に地方銀行、電気・ガスなどなど。大規模な再編でまずは1/5くらいまで数を減らしたほうがいいね。

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