見出し画像

魅惑の1960年代ロンドンロックの世界へようこそ。(Part 2)

 さぁさぁ、後半書きますね。

 前半はこちらから!!


6.ビートルズ:A Day In The Life (1967)

 この曲についても以前たくさん書いたが、この曲の影響力とかすごいところはどう考えても僕はすべて把握できていないし、説明することもできない。

 ただ一つ言えるのは、ビートルズがまたいくつかの垣根を越えてしまったということである。


 その垣根の一つとして挙げられるのは、アルバム単体での芸術作品ということだ。昨日の記事でも書いた通り、ビートルズは『リボルバー』というアルバムでついにサイケの正解例をひとつ導き出した。そして次作の『サージェント・ペパーズ』では、サイケでありつつ、ついにアルバム単体の正解例を導き出すことに成功したのだ。

 今までは音色(おんしょく)やテーマ性がまったく異なる曲を集めたもの、なんならシングルとその他の曲を集めたものが、「アルバム」と呼ばれていたが、この『サージェント・ペパーズ』発表後は、アルバム単体での力が試されるようになったのである。実際、ストーンズもフーも似たようなアルバム(コンセプト・アルバムと呼ばれる)を出していて、その影響力がうかがえる。


 そしてもう一つの垣根は、プログレの扉をついに開いてしまったということだ。これには賛否両論あるとは思うけども。

 プログレというのは、「プログレッシブ・ロック」の略である。プログレというのは簡単に言うと、高い演奏技術を要する長尺の曲が多く、インストゥルメンタル(歌詞がない)の曲も多い。そしてコンセプト・アルバムであることも多いのが主な特徴だ。

 このジャンルに分けられるのは、ピンク・フロイドやキング・クリムゾンなどが有名どころとして挙げられる。

 この"A Day In The Life"は、これらの特徴をしっかりと有している。それまでのビートルズの曲史上最も長尺の曲だし、ギターベースドラムだけでは演奏できないし、歌詞がない部分(ヴァース部分)も多い。

 今までのポップなイメージのビートルズとは真逆のことをしでかしたのだ。世界で一番有名で人気なバンドがこんな複雑で初心者殺しとも言えるジャンルを生み出してしまった。しかし、それがビートルズだから人々は聴く。そう、そしてビートルズがこれをやったことに意義がある。



7.ピンク・フロイド:Lucifer Sam (1967)

 さっきはプログレバンドのところにピンク・フロイドを挙げたけど、実はピンク・フロイドもサイケバンド出身である。

 初代ボーカルのシド・バレットという大天才が率先して制作したこのファーストアルバムは、サイケデリック・ロックに新たな可能性を見出した。

 「サイケデリック・ロック名盤!!」みたいなランキングには必ずと言っていいほど、5位以内には入ってくるほどのアルバムだ。なんならサイケでいうと、ビートルズの『サージェント・ペパーズ』よりも評価が高いのではないか?


 このアルバムはひたすらにLSD(幻覚剤)の匂いが充満している。"Interstellar Overdrive"という曲は、なんと9:41秒にも及ぶ長尺のインストであるし、その途中の音像はまさにトリップしている状態だ。聴いていて不安になると同時に、不思議な恍惚とした感情にもなる。

 そしてこのLucifer Samという曲も、このアルバム内では比較的ポップであるものの、音像の奥から流れ込む不思議な電子音や、ゆがんだギターの音色がまさにサイケの正解といっても差し支えないほどのクオリティを保証している。

 歌詞にも定評があり、シド・バレットの作った童話のような歌詞が特徴的である。一部を引用しよう。

Lucifer, go to sea
Be a hip cat, be a ship's cat
Somewhere, anywhere
That cat's something I can't explain
ルシファー、海へ行けよ
イケてる猫になれ、船乗りであれ
どこかで、どこでも
あの猫については、俺は説明できないな

 安心してください、僕もまだよくわかってないので



8.ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス:Foxey Lady (1967)


 ジミ・ヘンドリックスの登場は世界に衝撃を与えた

 彼こそがギター・ヒーローであったと思う。

 ギターの技術と引き換えに悪魔と契約をしたのか、彼は27歳でこの世を去った。1970年の始まりと共に去ったため、彼こそが60年代のギター・ヒーローといえるだろう。


 サイケデリック・ロックの全盛期、ジミ・ヘンドリックス率いる、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスはファースト・アルバムの"Are You Experienced?"を発表した。ブルースを踏襲しながらも、彼はギターのスーパープレー、そしてその豊かな音色で、サイケを表現しようとした。

 このギター主体という姿勢は後に、「ハード・ロック」などと呼ばれ始める。ジミ・ヘンドリックスなしにはハード・ロックもなかったし、なんならこの後のほとんどの音楽ジャンルが今とは大きく異なっていただろう。


 "Foxey Lady"は、フィードバック奏法(ギターの音を歪ませた状態から出る、ギターとアンプの共鳴音のこと)によるイントロから始まる。

 サイケ感満載の出だしではあるが、ジミの自由で型にハマらないギタープレイによって、もはやサイケではなくハード・ロックの形式を生み出しているようにも聞こえる。彼の影響は恐ろしく、次の世代でハード・ロックをする若者たちにとっての教科書のような存在になっていく。



9.クリーム:Sunshine of Your Love (1967)

 今でもご存命の老舗ギター・ヒーローことエリック・クラプトンが有名になったきっかけのバンド。

 クリームはスーパー・グループと呼ばれたが、僕は間違いなくそれはクラプトンの功績だと思う。

 この曲が収録されているアルバム、"Disraeli Gears"も時代性に合わせてサイケをやっていた。しかし、この曲からもわかるように、ヘンドリックスと同様に未来を見据えたハード・ロック調のプレイをしていたことがわかる。

 奇しくも、スリーピース・バンドというのが、ヘンドリックスのバンドと共通しているが、この両者は当時からよく比べられていた。今でも最高のギタリストのランキングにおいて、ヘンドリックス、クラプトンの順番で1位、2位を確保している。

 今聴いても一切古臭いところがないアルバムだとは思う。



10.レッド・ツェッペリン:Whole Lotta Love

 世界最高のバンドは?と聞かれたら、ビートルズと答える者も多いが、それ以外の回答で最も人々を納得させられる回答は世界でただ一つ、レッド・ツェッペリンと答えるしかない。

 以前、とあるアンケートでいろんなバンドから最強のボーカリスト、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーを集めて、最強のロックバンドを作ろうということになったが、いざ蓋を開けてみると、すべてツェッペリンのメンバーで、ただ単にツェッペリンが結成されただけだったという笑い話があった。

 それも当然、この動画を見てもらえばその理由にも納得できるだろう。

 異次元と呼んでもいいほどの伸びがあって、奥行きがある声を持つボーカリストや、機械が叩いているのか?と思うほど優れたドラマーを持っているのだ。そりゃあ最強のロックバンドになりますわ、と。


 このバンドは、ハード・ロックを完成の域まで到達させた。ギター主体の厚みのあるサウンド、サイケからは離れ、新たな時代を造り上げた。

 そしえギターのジミー・ペイジは間違いなく20世紀最強のギタリストの一人であるし、彼の演奏がツェッペリンの曲に与えた影響は計り知れない。

 こんな曲は60年代前半から中盤には生み出せなかった傑作である。

 尾が見えてきた70年代の始まりを、強く意識し、そして象徴する曲であると評価できる。



 こんな感じです、どうでしょうか。

 イギリスのロックには本当に長い歴史があって、人間ひとりの人生ではすべて聴くことなどできません。

 だけど、こうやって王道の音楽から辿っていって、自分好みのものを見つけ出すことはできます。自分の好みのバンドを見つけたときよりもうれしいことなどこの世にあるでしょうか?うん、ありますね

 とにかく!これを機に、イギリスのロックを聴いてみてくれたら嬉しいな、と思います。


 また明日!

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!