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揺るぎない信念に癒しの力で立ち向かうスケールの大きな物語…★劇評★【ミュージカル=レベッカ 保坂知寿・平野綾バージョン(2018-2019)】

 あのレベッカが帰ってきた-。20世紀半ばに活躍した女流作家、ダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier)の一世一代の小説がウィーンで舞台化され、2008年の日本人キャストによる公演も大きな反響を呼んだミュージカル「レベッカ」が、日本初演から数えて3度目の上演が続いている。しかも8年前の2度目の公演は帝国劇場などの大劇場バージョンとして上演されたため、もともとシアタークリエのオープニングシリーズ第3弾として上演された2008年の日本初演からは10年ぶりのシアタークリエ公演となり、コンパクトな空間の中で人々の怨念や魂の叫びが響く濃密な公演となっている。8年前にダンヴァース夫人役での憑依ぶりが絶賛された涼風真世に加えて演技派の保坂知寿がダブルキャストで登場。運命の対決を余儀なくされる「わたし」には初演から支えてきた大塚千弘(初演、再演時は大塚ちひろ)に加えて、近年のミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイのミュージカルで活躍が続く平野綾と、恵まれた音楽的才能を持った乃木坂46メンバーの桜井玲香がトリプルキャストで臨んでおり、万全の布陣となっている。さまざまな組み合わせが楽しめるが、このうち保坂と平野のバージョンでは、妻を失った大邸宅の当主の悲しみを和らげる癒しの力を持った「わたし」が、よそ者、後妻などといったマイナスイメージを背負いながらも、前妻の信奉者たちの切っ先の強い陰湿さに立ち向かう姿を明解に表現した平野が秀逸。単なる抵抗者としてではなく、揺るぎない信念を持った人間性を鮮やかに見せた保坂の深みのある演技力とも相まって、観客をぐっと引き込むスケールの大きな世界観を構築していた。山口祐一郎の謎めいた英国紳士ぶりも板についており、劇場全体を物語の舞台である英国の邸宅マンダレイのスピリチュアルな雰囲気で満たしている。
 ミュージカル「レベッカ」は1月5日~2月5日に東京・日比谷のシアタークリエで上演される。これに先立って昨年2018年12月1~4日に東京・北千住のシアター1010で上演されたプレビュー公演と12月8~9日に愛知県刈谷市の刈谷市総合文化センターアイリス大ホールで上演された愛知刈谷公演、12月15~16日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで上演された福岡久留米公演、12月20~28日に大阪市の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演された大阪公演はすべて終了しています。

 なお、本作はダンヴァース夫人役がダブルキャスト、「わたし」役がトリプルキャストであるため、さまざまな組み合わせが組まれていますが、劇評を掲載するのは、「涼風・桜井バージョン」と「保坂・平野バージョン」に限らせていただきます。ご了承ください。
 「レベッカ 涼風・桜井バージョン」も既に当ブログで掲載済みです。ぜひともあわせてお読みください。(一部重複している部分があります。ご了承ください)

★ミュージカル「レベッカ」公式サイト

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