★劇評★【舞台=夏への扉(2018)】

 タイムマシンが介在するまぎれもないタイムトラベルものなのだが、そこに、加齢を止めて何十年も先の未来に肉体を持っていけるという冷凍睡眠(コールドスリープ)技術がもうひとつのタイムトラベルの道具立てとして用意されていて、SFとしてはさらに複雑な要素を含むロバート・A・ハインラインの傑作小説「夏への扉」。未来と現在、あるいは過去との矛盾がさまざまなところに忍ばせてあるために、その整合性を推理する謎解きミステリーとしても一級品なこの作品を日本の演劇集団キャラメルボックスが舞台化したのが2011年。東日本大震災によって一部の公演が中止に追い込まれたその初演から7年の時を経て、初めて再演された舞台「夏への扉」は、初演でもメインキャストを務めた畑中智行と筒井俊作の奮闘もあって、しっかりとした軸を持った愛と希望の物語として新たな魅力を付け加えることに成功していた。
 舞台「夏への扉」は3月14~25日に東京・東池袋のサンシャイン劇場で、3月28~29日に兵庫県明石市のアワーズホール・明石市立市民会館大ホールで上演された。公演はすべて終了しています。

 欧米型SFのドライな一面を持ちながらも、時を超えた愛などのロマンチックな要素を多く含んだ小説「夏への扉」は、1956年の発表以降、特に日本で多くのファンを獲得した作品。現代のロボット工学にも通じる技術的な設定の確かさもよく指摘される点だ。

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