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全編に漂う愛の飢餓感と生と死が乱反射する物語の構造を早い段階でよく理解しているフレッシュコンビ…★劇評★【ミュージカル=エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)(2019)】

 ミュージカル「エリザベート」がこれほど愛されているのは、ただ単にファンがキュンとする勘所をきちんと抑えているからではない。「生」を「死」の側から見るという逆説的な視点がまずもっとも基本にあり、さらには死を司る黄泉の国の帝王トートと皇后エリザベート、そしてエリザベートと皇帝フランツという2つの愛を絡め合わせて描いていること、そして何よりもここでは愛はエリザベートにとってもフランツにとっても息子のルドルフ皇太子にとっても、トートにとっても、手に入れることの極めて難しい悲しみに満ちた存在として描かれていることで、逆にすべての登場人物たちの純粋な愛のかたちが浮かび上がってくるという唯一無二の革新的なミュージカルであるからだ。今回東宝版では新たにエリザベート役に抜擢された愛希(まなき)れいかと、トート役に初挑戦している古川雄大はまだ生まれたばかりの初々しいフレッシュコンビだが、そのキャリアの短さにもかかわらず、彼らほど、この作品の全編に漂う愛の飢餓感と生と死が乱反射する物語の構造を早い段階でよく理解している演者はいないかもしれない。キャリアの長い花總まりとトート役の中心となった井上芳雄のコンビの完成度にはまだまだ遠く及ばないが、その表現力の確かさと切れ味の鋭いメリハリの利いた演技は、「エリザベート」の新しい時代の到来を予感させるに十分なものだった。そして本公演最大の収穫のひとつと言っても差し支えないのが京本大我の奮闘だ。ルドルフ役としてのキャリアを重ねているだけあって京本は、感情をしっかりと織り込みながら歌い綴らなければならないナンバーで評判通りの美声を駆使してその繊細な表現力を見せつけたばかりか、後半、ルドルフがハプスブルク家の崩壊へと向かう過程でもみくちゃにされる混乱の渦の中で、ルドルフが味わったであろう苦悩を洗練されたダンスで表現。圧倒的なダンス力を持つトートダンサーたちとの群舞の中でもそのスタイリッシュさは際立っていた。演出は小池修一郎。(写真はミュージカル「エリザベート」とは関係ありません)
 ミュージカル「エリザベート」は6月7日~8月26日に東京・丸の内の帝国劇場で上演される。

 このサイト「note」では舞台写真の掲載はいたしません。阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でのみ掲載します。ただし掲載する写真に写っているのは愛希れいかさんと古川雄大さん、山崎育三郎さんの3人だけです。

★「SEVEN HEARTS」の「エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)」劇評ページ

 なお、本作はほとんどの主要な役柄がダブルキャストかトリプルキャストであるため、さまざまな組み合わせが組まれていますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、「エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)」と「エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)」の2つの組み合わせに限らせていただきます。ご了承ください。
 この2つの組み合わせではカバーできない木村達成さん(ルドルフ役)と剣幸さん(ゾフィー役)のファンの皆さま方には大変心苦しく感じております。超人気公演のため取材機会も限られます。なにとぞご容赦ください。
 「エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)」の劇評は既に当ブログに掲載済みです。一部この劇評と重複する部分もありますが、あわせてお楽しみください。

 上記の無料で読めるブログには劇評の序文のみ掲載しています。劇評の続きを含む劇評の全体像は「note」の阪清和専用ページで有料(300円)公開しています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 通常、ジャニーズの公演や所属俳優が主演されている演劇公演の場合は、たくさんの方が劇評を見に来てくださることに配慮して最も低い料金設定の1本100円で有料公開していますが、今回は京本大我さんは主演ではないことや、今公演で採り上げるもうひとつの組み合わせ「エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)」の劇評を300円で有料公開していることとのバランスをとる意味もあって、「エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)」の劇評も300円での有料公開とさせていただきます。京本さんのファンの方には申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。その分、無料で読める序文の部分に、京本さんの評価を多めに盛り込みました。ご了承ください。

★ミュージカル「エリザベート」公式サイト

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