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人間としての確かな温もりと幸福感がこの劇場の中にはあふれている…★劇評★【舞台=ベイジルタウンの女神(2020)】

 東京公演中にイベント収容人数制限が緩和され、劇場の収容人数の50%から80%まで観客を増やすことができたケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作舞台「ベイジルタウンの女神」。徐々にではあるが舞台に日常が戻りつつある中、それでも観客たちはさまざまな不安やストレスと闘っている。それらをこの作品は癒し、不安の種をひとつひとつ取り除いてくれる。貧富の差や人間の尊厳、時間と記憶といった重厚なテーマが息づく中でも、登場人物たちの人間としての確かな温もりと幸福感がこの劇場の中にはあふれている。公私ともにパートナーである緒川たまきと新たに結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」の旗揚げ公演としてのスケール感も十分で、寓話的ストーリーもこの作品に込めたメッセージをあらゆる人々に届けることに大いに貢献している。さらに言えば、KERA作品をかたちづくって来た緒川や犬山イヌコらを軸に、高田聖子や山内圭哉、尾方宣久ら今や全国的な知名度を持つ関西の小劇場界の熟練の個性派、仲村トオルや水野美紀ら舞台度胸もある映像界のスター、植本純米や菅原永二、温水洋一ら芸達者の役者、そして長年舞台で磨き上げてきた演技力がNHKの連続テレビ小説「スカーレット」で花開いた松下洸平、連ドラ界にすい星のごとく現れた吉岡里帆と、キャスティングの技が冴えわたっている印象だ。この贅沢すぎるキャスト陣の個性を誰一人取りこぼすことなく物語の中に炸裂させている点は驚異的と言っていい。近年、作劇と演出が一体化したKERAの構築力の凄みが増しているが、またひとつその才能を輝かせる作品が誕生したと言っていいだろう。(写真は舞台「ベイジルタウンの女神」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「ベイジルタウンの女神」は10月1~4日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで、10月9~10日に福岡県北九州市の北九州芸術劇場 中劇場で上演される。それに先立ち9月13~27日に東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで上演された東京公演はすべて終了しています。

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。舞台写真は「SEVEN HEARTS」でのみ公開しています。
★「SEVEN HEARTS」の舞台「ベイジルタウンの女神」劇評ページ

★ブログは序文のみ無料で読めます。劇評の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「note」で有料公開しています。作品の魅力や前提となる設定の説明。緒川たまきさんや仲村トオルさん、松下洸平さん、吉岡里帆さん、犬山イヌコさん、温水洋一さん、山内圭哉さん、水野美紀さん、高田聖子さんらの演技に対する批評、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出に対する評価などが満載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「ベイジルタウンの女神」公式サイト

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