イノベーター理論をアイドルに当てはめて考える。認知だけで捉えない「流行」の概念とディープラーニングの流行具合

イノベーター理論はいろんな本やサイトで引用されてる。

フレームワークとしてイノベーター理論あるよって紹介や、
リーン開発の文脈ではアーリーアダプターをターゲットにする話やキャズムの話。

ただ、理論としてあるくらいで、人と話す時に話者と聞き手が同じ認識や温度感で話すくらいに理解できてないと、自戒を含めて感じていた。用語だけ独り歩きし、自分で実感を持っていなかったな、と。

ただ、アイドルに当てはめると結構理解できるなと思ったので、書いてみる

イノベーターもつかないアイドル

特に新規性や好かれる理由もなかったり、
世に出るポテンシャルもないアイドル

イノベーターがついたアイドル

何かしらの新規性や好かれる要素があり、
通な人間や専門家などの間で推しているフォロワーがおり、
アイドルとフォロワーの存在がセットで、その狭い領域で薄く認知される。

この頃は
「何か面白い新しいアイドルが出始めたよ」
と登場が取り沙汰されるコメントが多い

アーリーアダプターがついたアイドル

新しいもの好き、流行りに乗り遅れたくない人にも愛されるようになったアイドル。
イノベーターの場合は高い専門性などから、価値を深く理解しているが、
アーリーアダプターあたりから、流行性や上澄みのメリットを求める人間が出てくる。

変に認知は増えるが、フォロワーは実際に少ない感じ。実体がないので、バブルに近い。

イベントを行う箱が少しずつ大きくなっていく

この頃は
「最近このアイドル流行ってるらしいよ」
「流行ってるし、まだ黎明期だから古参ファンになれるよ」
「え、流行ってるのに知らないの!? 置いてかれるよ(言ってる本人も実態わかってない)」
と、なかば「自分が好きになったことがセンス悪くない」と焦るポジショントークのようなコメントが多い。

アーリーマジョリティがついたアイドル

コアな以前のファンから、雪だるま式にフォロワーが付いたアイドル。
単なる認知だけでなく、上澄みであっても良さを理解するフォロワーの数が増える

初の武道館コンサートとかしてそう。

この頃は
「このアイドル流行ってるよね」
「ooさんもxxさんもこのアイドル好きみたいだから流行ってるんじゃない?」
と、実際の身近なフォロワーが少なくないファクトから流行を感じるコメントが多くなる

レイトマジョリティが付いたアイドル

猫も杓子もその存在を知ってるのは当たり前で、良いと思う思わない別として、取り入れたり受け入れたりしているアイドル。

大きな箱でイベントも当たり前のように定期的に行う。

この頃は
「え、ooが流行ってるかって? そりゃ流行ってるけど、もう流行る流行らないというより、当たり前だし、知らないとか何かおかしいんじゃない」
という、もう流行とかの概念で語られないコメントが多くなる

この理解で現実世界にあるものを見てみる

ある程度認識があった状態で、現実のものを見てみると、なかなか面白そうである。

特に流行という切り口でいうと、「認知している」ことと「実際にフォロワーである」ことを違うと考えると、なかなか興味深い

※以下に書く内容は特に体感に基づく印象が大きく、「思われる」という言葉が多用されるがご容赦願いたい。

スマートフォン

ガラケーがかなり駆逐されたが、それでも使っている高齢の方が多いと考えると、レイトマジョリティに受け入れられつつあるのが現状かと思われる。

日本では
イノベーターが付き始めたのは2008年のiPhone3Gが出たあたりで
アーリーアダプターが付き始めたのが、2010年のiPhone4が出た頃だと思う。

それから既にフォロワーの人の煽りポジショントークが長い間繰り広げられ、

iPhone5が出た2013年あたりから、若者や流行り物好きに限らない年配の人といったアーリーマジョリティが追いつくように使うようになったといえそう。

それから、実際にいつからはわからないけれども、落穂拾いのように使っていない人の駆逐が行われたのがレイトマジョリティの取り込み期かと。
ガラケーの見た目で中身がスマホのガラホが出た2015年あたりなのかな。

企業のIT化

いまやIT化は当たり前と言われながら、FAXを使っている自治体がいることを考えると、アーリーマジョリティ、つまり意識が低いわけではない層が取り込み終わったあたりかと考えられる。

DXの旗印のもと、レイトマジョリティの掃討を画策しているイメージ

イノベーターが熱狂しアーリーアダプターがハイエナのように飛びかかったのは、言わずとしれた90年代のITバブルの頃かと思われる。
流行っていると言いながら、実際には一部の企業でしか本格的にITを中心に事業を運用していなかったのが実態だっただろう。

ITが当たり前と口では言いながら、どう運用したら良いか知らない企業が多く、
それを支えるように、カスタマー側では「ITは怖い」「コンピュータよりも人間の温かみ」といった感覚に包まれ、企業を運用する人間も大して変わらない認識でいたように思われる。そのため、数としてはWebサイトは増えていたが、実業務の置換率という点でいうと、そんなに大きくなかったと思われる。

実際にアーリーマジョリティが参入し始めたのはスマホの隆盛が大きかったように思われる。

スマホアプリというインターネットアクセスによって企業に触れ合う機会が増えたことにより、顧客とその運用者の間で、ITが生活に根付いている認識が確立され、事業のWebサイトでの展開、それに伴うオペレーションのIT化が促進されたように思われる。

そこから今までの間、着々とIT化が進み、現在はこの章の冒頭で書いたように、残りの多数に対してのDX化が行われている段階である。

興味深いのは、表面的には新しいイノベーションは起こったが、
極端に言えば、2000年代初頭にある技術で、現在のWebサービスは作成・運用できるということだ。
サーバがインターネットを通じて世界中からアクセス可能な状態で、
アクセスに対してWebサーバで受けて、MVCモデルでリクエストをさばき、リレーショナルデータベースでデータの永続化を行う、といった基本構造は2000年代初頭と現代(2020年代)で特に変わっていない。

では2000年代初頭と2020年代の違いは何か。
それは、ITによる業務の置換率の高さ・ITを受け入れる顧客数の多さ・運用の熟練である。後者2つは自明のように思われるが、「ITによる業務の置換率の高さ」を私は特筆したい。

IT化やWebサイトでの処理の自動化はエポックメイキングで、2020年代になっても十分通じるものであるが、いかんせんコスト(時間・それにかかる人件費)がかかり、1つのシステムがカバーできる範囲が狭いのだ。
ある企業のECシステムを作る、ある企業の社員管理システムを作る、ある領域のSNSを作る、といったように、1つのシステムがカバーできることが非常に狭いのだ。ロジックツリーの上の方の汎用的な大きなところからみんな埋めにかかるが、実際人間の行動は多岐に渡る。

そのため、この20~30年間はエポックメイキングなIT化のカバー率を上げる期間だったと私は捉える。後述の機械学習も同じことが起きていると考えている。

機械学習

広くAIとも言われ、妙にテクニカルな用語を使う人がディープラーニングとわかったように言う機械学習も最後に触れておきたい。

AIという言葉は地に足がつかない言葉として流布されているが、機械学習・ディープラーニングという言葉がやたらめったら使われる時期は一旦落ち着いたと思われる。

では、落ち着いたということは、みんなそれを取り入れたために陳腐になっているかというと、ここまで読んでいただいた方なら分かる通り、全くその状態ではない。

2016年にやたらAIがバズったが、あの時期がイノベーターが付いた時期である。
2022年9月現在、画像生成サービスであるStable DiffusionやMidjourneyがやたら言及を受けているが、それと同様に、みんな試しに遊びで触ってみるという段階が2016年あたりかと思われる。

2016年〜2022年現在までで、各Webサービス企業やSIer企業でよくわからなくAI事業部、AIによる問題解決などで、死屍累々の状況があったと推察される。その死屍累々の過程がイノベーター期だと思っており、今もそれなりに機械学習を地に足がついた形で使っている企業が出てきたとはいえ、まだまだ本来機械学習で解決しなければならない領域のポテンシャルを考えるとそのカバー率は全然低いと思っている。というのもまだ使い方が確立しきっておらず、技術として大きな方向性ですら枯れてないからだ。

なんだったら画像生成サービスなどで、猫も杓子も一応、やりたいことを黎明期に比べたら格段に少ない手間でできるようになった今、アーリーアダプター期が始まりそうと言っても良いかもしれない。

少し遊びで触ったり、働いている企業でR&D部門がある人間として言うと、やはり機械学習は難しい。かなりのことをできるが、期待したものを得るシステムを組むのはかなり骨が折れる。多分90年代のWebサイトの運用も同じくらい大変だったろうと頭が下がる。しかも、多くのことは機械学習のような体育会系なデータの物量戦を使わなくても、チューニング可能なルールベースで実現でき、機械学習を使わなければいけない領域がすぐに表出しない。

2045年にシンギュラリティが起こると、なんの根拠もなく信じてしまっているが、おそらくそれは、2000年初頭→2022年代でのIT化が起こったのと同様に機械学習によるシステムの浸透とそれ以上のエポックメイキングなできごとの勃興によってなされるのだろうと考えている。

まとめ

書いてみて、ITの流行具合の方が比重が高くなってしまって、うーん、となっている。

しかし、自分の中でイノベーター理論がしっくり来た、特に認知度と採用度で分けると捗ることがわかり、十分満足

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