#関節夫のひと息小説20 引き返すことも勇気。
#関節夫のひと息小説20
引き返すことも勇気。
圭介は大学時代の友人6人と共に、槍ヶ岳登頂を目指すリーダーとして登山に挑んでいた。彼らは前日に麓でキャンプを張り、午前2時に山頂を目指して出発した。順調に進み、昼には山頂付近までたどり着いたが、仲間の一人、奥村が遅れ始めた。
奥村は少し太り気味で、登山のペースについていくのが厳しくなっていた。「もう限界だ」と弱々しく告げる奥村に、圭介は悩んだ。あと少しで山頂。しかし、奥村の体調が心配だった。何人かの仲間は登頂を続けるべきだと主張したが、圭介は冷静に状況を見つめ、「下山しよう」と決断した。
仲間の安全を最優先にした圭介の決断には、登頂の夢を諦める勇気が必要だった。山頂を目前にして引き返すこともまた、リーダーとしての責任だった。
彼らは無事に下山し、圭介は改めて思った。山を征するよりも、大切なものを守る方が、何倍も価値があるのだと。