だと思った(二〇二〇年八月)
早っ すみれうたう全身春の駒が行く 雲暗く 暗く
深緑アジアの天使あくびあくび抜けてさよならほんとのドラマ
sincerely. 胃腸炎にはコーラがよくてもともと夏のレンズだった
獅子を思えば席は三つ 太腿に貼りついていた陰毛を思う
天井を外す春にひとつのおとずれ、地獄のほとぼりヴァニラの原産地
心情に近い仔猫を帰るときみぞれは彼の口内をみたす
はなのいらつめ鳩の止まり木寄せて波打つイランのかたちに
動悸するプルーストを待っていたら水星へ 火星へ ライオンの鳴く金星の方へ
人を売るすかんぴんの声メロン売りさすが奥津城メンソレータム
初恋なりけり唯識ぞ、さもあらばあれ大西可憐
時は平成一月一日降る花や真夜中に下るサブ・インデント
前川緑の下睫毛かな江戸雪のスクリームかな佐佐木由幾のフォークスローかな