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文化・観光・まちづくりの関係性を考えるための「5つの視点」
これまでのnoteでは、わたしたちのリサーチにおける課題意識やアプローチ方法について伝えてきました。今回のnoteでは、文化・観光・まちづくりの関係性を捉えるうえでの5つの視点についてご紹介します。
これまであまり先例もない”関係性”を切り口とするこのリサーチは、そもそも何を調査するのか?何を測るのか?何を指標とするのか?という出発点を探すところから始まりました。
私たちの問題意識に共感してく
菅沼聖・天野原(山口情報芸術センター[YCAM]) - 経済効果を生み出す産業やまちづくり。その土壌となる「文化」の価値をつくり出す
「新たな価値の創造」を具現化する場
山口市は、1993年の「やまぐち情報文化都市基本計画」の策定以降、「新たな価値の創造」を都市戦略として総合計画などに位置付けてきました。目指しているのは市民の創造性に未来を託していく創造文化都市です。すでにある歴史や産業に寄りかからず、変革することで価値が生み出される価値観は、長州藩として中核を担った明治維新以降、今でも山口に根付いていると感じます。そして、そ
白水高広(うなぎの寝床代表取締役) - 地域文化の「つくり手」「つかい手」「つなぎ手」が結びつき新たなる経済循環が生まれる
“つなぎ手”による地域文化の再解釈
地域文化は、その文化を受け継いで担っている“つくり手”、生活者としてその文化やものを使う“つかい手”、両者を結びつける“つなぎ手”によって営まれています。ここでいう“つなぎ手”というのは、たとえば地域文化を扱う店舗、問屋、観光事業者などです。この、“つなぎ手”による地域文化の再解釈、再発見のプロセスと文脈の可視化が、その土地の地域文化の解像度をあげていくために
坂口修一郎(BAGN Inc.代表 / リバーバンク代表理事) - 価値観で共鳴したコミュニティが熱量を高めていく
価値観での「編集」
僕は現在、東京と鹿児島の二拠点で活動していますが、どちらの価値観も違っていてどちらもよいと思っています。残したほうがいいものもあるけど、古いものをなにもかも残せばいいわけではないし、変わっていったほうがいいものもある。都市も地方もどちらがいい悪いではなく、両方の価値の選択肢があることが大事だと考えています。僕が二拠点に心地よさを感じるのはその選択肢のどちらの良さも理解できるか
山出淳也(BEPPU PROJECT代表理事 / アーティスト) - 継続的な組織運営と関係性の蓄積が、経済循環を生み出す
人が交差する“辻”のような場をつくる
BEPPU PROJECT(※1)を立ち上げた2005年、大型観光地・別府は時代遅れのように感じられることもあり、アートNPOとして事業を展開することは極めて難しいと、当時親身になって相談に乗ってくれていた人からも止められました。その当時の別府は中高年の男性団体客が6割以上を占めていましたが、全国の観光業においては女性客が6割以上。バス旅行のような大人数の団
北村志帆(佐賀県職員) - 「デザイン」を通じた外部の目線/声によって、地元に自信を持てる環境をつくる
行政組織における「横串」としての「さがデザイン」
「さがデザイン(※1)」は、2015年から始まった佐賀県庁の政策部にある、少し不思議な立ち位置の行政組織です。行政は何層もの構造があるので、最終的な意思決定がなされるまでには時間がかかり、その過程で幾度もたたかれてとがったアイデアが面白みのないものになってしまいがちです。佐賀県では、それらのアイデアを、「さがデザイン」を通すことでクリエイターを投
小林新也(シーラカンス食堂 / MUJUN / 里山インストール代表社員) - 里山再生と後継者育成を結ぶ
地場産業における構造上の課題
地場産業の後継者問題に取り組んでいて感じることは、どこも分業による合理化が進みすぎたことがかせになっていることです。生産工程のうちの一つの材料屋さんが辞めてしまっただけで工程全体が共倒れになり、崩壊してしまう寸前の状態です。めちゃくちゃ危ういんですよ。これまでの地場産業はさまざまな職人の仕事で成り立ってきましたが、この産業形態自体は、正直すでに終わりが見えていると思
荒尾浩之(温泉津焼 椿窯)- 使い手を想像し対話から生まれる作品と、新しい関係性
私が一番大切にしているのは、お客さまと話し合いながら直接販売することです。ネット販売も考えましたが、そのお客さんのための器を作りたく、オンラインのやりとりだけで作っていくのは苦手です。お客さんとはメールなどでのやりとりではなく、電話で直接声を聞き、できれば会って直接話をします。お客さんの顔を思い浮かべながら、その人が使っている姿を想像して作品を作るのです。
お客さんとの会話は、相手の欲しい器のこ
松村和典(大田市役所) - 地域の方々が輝けるようにサポートをする行政の役割
「まち」の本当の主役は地域の方々
国の方針の変化に対して、地域や自治体がついていけていないように思います。文化観光にしても国と自治体で共に推進していく上で、文化財に関わる人たちが同じ方向を向くための意思疎通をしていけたらいいですよね。文化財を世の中に発信して、外からお客さんを呼ぶといった取り組みに対して、地域の方の気持ちをしっかりと捉えてやっていくことが大事です。住んでいる人たちが迷惑を被ったと
臼井泉 / 臼井ふみ(島根県大田市温泉津町日祖在住) - 私たちがいなくなっても、地域文化を守ってくれる人がここにいてほしい
臼井ふみ:私は松江に生まれて、主人の実家に帰ってきた20年前から日祖に暮らしていますが、当時の日祖は海で岩海苔やワカメ、山で山菜を採り、江戸時代の人もこういう生活をしていたのかなというのが見えるような、そんなところでした。
臼井泉:まだ大正生まれの人が多くいて、戦前の生活をみんな経験していましたから。いまこの集落は11軒で、総勢22人です。そうした集落の中に外の人が入ってくるということは、とても
近江雅子(HÏSOM / WATOWAオーナー) - 暮らしの良さを体感する中長期滞在
私は温泉津の隣町の江津市出身です。東京に15年住んでいました。9年前、温泉津にある西念寺の跡取りがいないから継いでもらえないかという話が主人に持ちかけられました。主人は江津の寺の生まれで本来ならそちらを継ぐのですが、温泉津のお寺も一緒に守れるなら、と思って継ぐことにして、Jターンで戻ってきました。
来てから私はどうしようかと思って、考えたのが民泊です。最初に「湯るり」というゲストハウスを温泉津で
内田徹(漆琳堂代表取締役社長 / 伝統工芸士) - 顧客との接点を増やすことが、産地にもたらす価値
これからの時代はつくり手もただ物をつくるだけではなくて、工夫している点などを伝えられないとだめだと思うんです。自分のやっている仕事をきちんと伝えられる人は仕事が多い気がします。RENEWに参加している工房は意識が高いから段々アピールができるようになってきて、それも回数を重ねるどうまくなっていきます。出展者同士で感化しあうこともあります。
鯖江の町中でファクトリーショップ(工房併設の直営店)が増え
戸谷祐次(タケフナイフビレッジ / 伝統工芸士) - ものをつくるだけではなく広める/売るまで担う新時代の職人
「越前打刃物」の独自ブランド、その軌跡
産地はあるわけなのに、越前打刃物(えちぜんうちはもの)という名前は誰も知らない。日本中探しても、どこにもその名前で売ってないんです。大量生産の安価な型抜き刃物が台頭して、問屋さんの仕事が減り、職人の仕事も減り、高齢化もしていく。このまま続けていっても、10年後も20年後も売れることはない。「どうにかしなければもうだめになる」という危機感がありました。
苦
谷口康彦(RENEW実行委員長 / 谷口眼鏡代表取締役) - 産地の未来が「持続可能な地域産業」となる世界を思い描いて
日替わりヒーローがどんどん出てくるほうがいい
RENEWは始まりから、谷口・新山・森(東大卒・現在フィンランド留学中)という役割も得意・不得意もことなる3人が集い、それぞれに実現したいことがあって、重なっているところもあれば重なっていないところもお互い想像しあえる、そんな良い関係を築きながらやってきました。
僕の役割は、参加企業との調整や地域内でのコミュニケーションです。最初にRENEWを立ち