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「言葉は呪いで、言葉は祈りだ。」

こんにちは、せ→る→です。

今日は青谷真未さんの「水野瀬高校放送部の四つの声」の感想を書いていこうと思います。

著者:青谷真未
イラスト:中村至宏
デザイン:bookwall
出版社:早川書房 ハヤカワ文庫JA
(敬称略)

※ネタバレあり

野球部で熱心に練習に励んでいたが、一番仲の良かった部員とのすれ違いで退部した3年の巌泰司。中学で演劇部に所属していた1年の赤羽涼音白瀬達彦。文芸部を追い出された2年の南条梓。この4人が集まり、水野瀬高校放送部が発足します。

全4章に分かれており、1人ずつ語り手となって進行する、高校生たちの青春群像劇です。”群像劇”というフレーズに弱い私は、読む前からわくわくでした。瑞々しく爽やかな表紙通りの作品で、すっごく面白かったです。

1章は巌の語り。私も高校1年の終わりに部活を辞めたので、巌の

「部員のみんなには何を言われるだろう、引き留められるかもしれない、後ろ指をさされるかもしれない。」(p341)

悩んでいる姿にとても共感しました。

不安な気持ちを持っていた巌でしたが、部員は前と変わらず接してくれました。私も辞めた後周りから色々言われるかとびくびくしていましたが、先輩も同級生も普段通りに話しかけてくれました。

何かを始めるのも勇気がいるし、何かを辞めるのも勇気がいる。改めてそう感じます。

2章は南条の語り。競馬好きの父親の影響で競馬実況が趣味のようになった南条は、体育祭の競技中実況がないことに気づき、急にマイクを手にして実況を開始します。

このシーンがめっちゃ激アツ。

実況があるのとないのとでは盛り上がりが全然違います。私も、小学校の運動会では放送委員の子が実況していましたが、中学校では一切なかったのを思い出しました。当時のビデオを見ての違和感は、実況の有無だったのかもしれません。

3章は白瀬の語り。

「僕は伝えたいことがなかったわけじゃない。どうせ伝わらないだろうと諦めていただけだ。(中略)だってどうせ否定されるし、撥ねつけられる。」(p260)

 私が一番印象に残った箇所です。白瀬は空気を読むことや相手の顔色を窺うことが苦手で、中学の演劇部でも先輩たちといざこざがありました。そのため、何か気になったことがあっても場の雰囲気を壊すことを恐れ、発言を控えるようになります。

自分の想いを言葉にするのってほんと難しい。

でもそこでやめてしまうのではなく、まずはこっちが伝える努力をしないといけないなと感じました。一生懸命言葉を選んで伝えた上でわかってもらえなかったら、相手の理解力がないんだと割り切るくらいで良いのかもしれません。

4章は赤羽の語り。赤羽も中学校でいじめられていた過去を持っていました。

「言葉だけじゃ駄目なんだ、と思った。俯いて、心の底から申し訳なさそうな顔をしていないと駄目なんだ。それも謝っているその瞬間だけじゃなく、ずっとずっと、一日中そういう顔をしていないといけないんだ。(中略)ただ謝っても許されない。ごめんなさいという言葉に意味はない。反省した顔をしていないと誠意を伝えることすらできないのだと。」(p332)

ビジネス書やバイトのマニュアルにも、謝るときは眉は下げるイメージで声も低くして誠意を見せると良い、と書かれているのを見たことがあります。私はそれを読んだとき、めんどくさ…と思いました。

非言語的コミュニケーションが印象を左右することはもちろんあるんですが、無理をしてずっと俯いているのも精神やられます。なので、自分を変えるために高校デビューをした赤羽はすっごくかっこいいです。

4人ともほんとに素敵なキャラで、応援したくなります。この作品に触発されて、私は最近毎日外郎売りを読んでいます。活舌良くなると良いな。

最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんもぜひ読んでみてください!

青谷さんの他作品の感想もお時間あれば読んでいただけると嬉しいです↓

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