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あたたかい涙があふれてくる物語

こんにちは、せ→る→です。

今日は、安澄加奈さんの「幸せを呼ぶ物語、つづります。水沢文具店」の感想を書いていこうと思います。この作品は、「水沢文具店 あなただけの物語つづります」の続編です。以前書いた感想文もよかったら読んでいただけると嬉しいです!

著者:安澄加奈
イラスト:pon-marsh
デザイン:bookwall
出版社:ポプラ社
ポプラ文庫ピュアフル
(敬称略)

<登場人物>
龍臣…水沢文具店店主
…小学校教師,龍臣の恋人

水沢文具店は、「ペンとノートを購入した人に物語を書く」という少し変わったことをしている文房具店。

1巻同様、本当に勇気をもらえる作品でした。5つの連作短編集で、私は特に1話が好きです。

1話では、建築デザイン事務所に就職している”日坂楓”が、「物語を書いてもらうと悩みが解決するらしい」という噂を聞き、水沢文具店に足を運びます。そこで楓は、引きこもりになってしまった弟”蓮”のために物語を書いてほしいと依頼。

他人思いで優しく、誰に対しても心を傾けてきた蓮。けれども、

「どんなに身を尽くし心を尽くして、誰かを思いやったって、裏目に出たり、うまくいかないことのほうが、この世の中では多い。
もういい、と思ってしまった。むかしからずっと信じて、続けていたなにかが、そこでふっと途切れた。」(p57)

そんな蓮に対し、龍臣は後味の悪いストーリーを書き上げ、

「そんなふうに、真実誰かに心を尽くした気持ちは、関係のない周りに否定されたり、笑われたとしても、傷つけられるものじゃないはずだ。それでももし、他人の言葉に傷ついて、つらくなるのだとしたら、それは君が人のためだと言って、自分をないがしろにしているからだろうな。」(p67,68)

と告げるのでした。

周りからしたら「いい人」が、本人にとってはその行動全てが「いいこと」ではありません。

「人は、見えているものだけがすべてではないんだと思った。そんなことは当たり前だと頭ではわかっていても、実感をともなって気づくというのはちがう。それぞれに深さがあって、抱えているものがあるのだ。」(p42)

人間関係は難しいと改めて感じました。だからこそ、コミュニケーションが大切なのだと気づかされます。

この作品の中で、私の心が最も動いたセリフがあります。

それは、5話で栞が教員採用試験を受けたときのこと。栞はこれまで、筆記は合格するものの、面接が上手くいかずに落ちてきたので自信をなくしていました。

緊張と不安でいっぱいの中始まった面接で栞は、

「あなたは、自分が教師に向いていると思っていますか?」(p261)

と問われます。そのとき栞は、

「向いているかどうかは、わかりません。でも、やりたいと思うんです。だからここに来ました。」(p288)

と答えるのでした。かっこいい。もう涙腺がね、やばかったです。

やっぱり「やりたい」という気持ちは、私たちが行動する上での一番の原動力なんだと思いました。

あとがきで著者の安澄さんは、

「”現実はやっぱり物語のようにうまくはいかない”と感じるのではなく、思い出したときに、”あんな風に”と、少しでも前をむくための力にしてもらえるような物語にできていたらと思います。」(p300,301)

と述べています。

たしかに、現実でうまくいかず壁にぶち当たったとき、報われる物語を読むと、現実とのギャップに余計に落ち込むことがあります。

けれど、そんな風に悲観的になるのではなく、「物語の登場人物たちのように」と前に進んでいきたいと思いました。

本当にステキな作品に出会えて幸せです。胸がいっぱいです。

まだまだこの作品の中には、勇気づけられる言葉ハッとさせられる言葉が沢山あります。ぜひ読んでみてください!

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