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新しい生活様式5項目に見る国民への期待【人と人との間隔からテレワークまで、日常生活を切り替えられるか】

「新しい生活様式」について、政府が率先して声を挙げました。それは、昭和27年に新しい国づくりを決意してから、二度目ということになります。手をこまねいていれば、国民の生命を危険にさらすという状況であるからだと思います。

 国民のほうは、それほど危機感も切迫感も見られません。毎年のように大型台風、地震といった自然の驚異に慣れているからかも知れません。時代の流れを見れば、「新しい生活様式」のすすめは、もっと以前にあってもよかったのではないかと思います。

 その理由を含め、「新しい生活様式」の5項目、
・人との間隔は、できるだけ2メー トルあけること
・外出時、屋内にいる時、会話をす る時は、症状がなくてもマスクを つけること
・3つの密を避けること
・毎朝体温を測るなど健康チェック を行なうこと
・テレワークや時差出勤といった新 しい働き方を定着されること

について、何が代わり、何を替え、変えて行かなければならないことは何かについて述べます。

その1 人との間隔は、できるだけ2メートルあけること

 2メートルの間隔で思い出すのは、男女間のことです。年配の方は覚えているのではないでしょうか。「三尺下がって師の影を踏まず」ということについてです。三尺とは、約1メールのことです。現代風に言えば、師と弟子が共に歩く時は、師から1メール下がって弟子は歩き、師に対する敬意を表す、ということになります。

 昭和30年代初め頃まで、男女が連れ立って歩く時にも見られたことです。男性の後ろを少し離れて歩く女性には、男性に対する敬意、配慮、純真の情が観られるということでした。男性の後ろ姿には、女性に対する尊重、包容、誠実さが観られるということでした。

 それを古風すぎると見る人もいたようです。その後の日本では、男女間の距離を「女性蔑視」、「差別」だと言う人たちが出てきて、「男女同権」や「自由」が声高に言われるようになった時代がありました。

 今、夫婦でも2メートルの間隔で歩いたとしても、「差別」だと言う人はいないでしょう。それどころか、男女の間隔に観た敬意、配慮、純真の情、尊重、包容、誠実さという心の動きが大切であると思う人が増えているのではないかでしょうか。

 コロナ・ショックに見舞われたことで、欧米の人たちまで、自由や権利の主張ではなく、日本人のように他人を思い遣り、協力して行かなければならない、と言うように変わって来ました。

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その2 外出時、屋内にいる時、会話をする時は、症状がなくてもマスクをつけること

 日本に見られるマスクをする習慣は、一躍欧米各国で知られることになりました。初めは、優れた衛生観念であると見ていたのですが、月日が経つにつれ、日本人のマスクには他の人に迷惑をかけたくないという配慮の表れであると、欧米の人たちが言い始めました。

 日本では、インフルエンザが流行する時期、花粉が飛ぶ時期にマスクをすることが当たり前のようになっていて、珍しいことではありません。欧米の人たちの驚きは、100年前のスペイン風邪が世界に蔓延した時でも、日本では医師、看護婦(現・看護師)だけではなく、一般の人たちがマスクをして感染を防止したことです。

 コロナ・ショックは、これからどのくらい続くのか予測ができません。人の中にあってマスク着用は必要なマナーになります。ひと頃、マスクが手に入らないマスク・パニックが起きました。それによって、日本の流通経済の脆さが浮き彫りになりました。

 中国で製造され、日本で販売されると、1枚のマスクが10円程度で、使い捨ての固定観念を植え付けていました。今後、国内で製造するようになると、10円という安価なマスクにはならないことでしょう。

 消費者としては、高いという発想ではなく、何度も洗濯して利用できるマスクを、製造会社に求めて行くようになるほうが賢い消費者というものです。

 これから始まる世界的な経済成長停止の時代に生きるには、必然的に資源(材料)とお金のムダを抑えて生きる、新しい生活様式を創り出さなければならないのは、日本も各国も同じです。

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その3 3つの密を避けること

 3つの密を略して「3密」とも言います。これまでのビジネスに限らず、いかに3密を作り出し、利益を上げ、人の交流を盛んにすることにエネルギーを注ぎ、知恵をしぼって結果を出す人が優秀な人材であるとして来ました。

 3つの密を避けることは、従来の価値観が捨てられるということです。それでも政府は「3つの密を避ける」ことを新しい生活様式だと規定しました。発想も生き方も180度転換するということです。果たして、それは可能なことでしょうか。

 カラオケやパチンコに行かないようにすればよい、ということではありません。3密を象徴するものは、東京都という都市環境です。政府の行政機関を地方に移転させることは、何十年も前から言われていることです。3密を避けるために、実行に移す時がいよいよ来ました。

 東京都の人口は、約1400万人です。世界一の大都市だと言われ、喜んでいる時代ではなくなりました。コロナウイルス感染による危険性が高すぎるのです。半分の約700万人にすることができれば、東京は大きく変わります。

 明治維新の時、東京の人口は約86万人でした。それでも近代国家建設を成し遂げました。人口が多ければよいということではありません。政府の行政機関移転は、中央集権型の国から、明治時代前にあった藩(県)政型に戻すこともあり得ることになります。150年前、欧米列強国の植民地支配を阻止するため、国内の権力を一極集中型にした首都東京づくりをしました。今では、目的も目標も失っています。政府の行政機関移転は、新しい生活様式を作り出す上で、大きな影響を与えることになるでしょう。

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その4 毎朝体温を測るなど健康チェックを行なうこと

 世界の国々がコロナ・ショックに見舞われたことで、日本の医療制度、医療態勢は世界で最も優れているという人たちが出て来ました。ことにアメリカでは、各メディアがある意図を持って日本の医療制度礼賛を繰り返しました。

 それは、大統領へ自国の医療制度をなんとかしろ、という当てつけでもあるので、日本礼賛を額面通りに受け取ることはできません。そのことは差し引いても、コロナ・ショックの影響を低程度に抑えた日本の医療界の判断、見識は評価して良いと思います。

「その4」の項目は、そうした医療界からのメッセージだと思われるので、外出先から家に帰った時は、手洗い、うがいに加え、毎朝体温測定を習慣化して行きたいことです。

 ただ、「健康チェック」と言われると、どうしたらよいだろうと思う人がいることでしょう。それ用のマニュアルを見て確認することでは、遅かれ早かれ放棄する人が出てくることになります。

 神経質にならず、自分の頭のてっぺんから爪先まで、普通に動いているかどうかを確かめるためのポイントを2つ挙げます。

 一つは、この頃よく言われる「腸内環境を整える」ことです。腸の状態が良いか、良くないかは下痢、便秘という症状で判断できます。どちらも健康な状態を保つにはマイナスすることです。そのような傾向がある人は、かかり付け医師に相談し、体質に合った改善方法を見つけることが先決となります。

 もう一つは、「免疫力」のことです。これも最近よく見聞きすることです。言われているのは、「免疫力を高める」ということです。免疫力は、何か手段を講じて高めることをしなくてよいものです。日頃健康である人は、必要な免疫力を具えているので、高めようとせず、もともとある免疫力をそのまま持続させればよいのです。

 食生活、睡眠、気の持ち方など、ポイントは3つです。多い、少ない、長い、短い、激しい、落ち込むといった、上下のぶれ幅が多いと免疫力が発揮できなるくなるものです。新しい生活様式と言っても、健康でなければ何も始められません。まずは、自分の心身を大切にしましょう。

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その5 テレワークや出勤といった新しい働き方を定着させることに

「テレワーク」ということが、コロナ・ショックによって一般的になりました。テレとは「離れた所」、ワークは「働くこと」で、勤務先を離れて仕事をすることを言います。実は、10年前ほどから言われて来たことですが、一向にテレワークが普及しませんでした。

 日本には、独特の企業風土があります。一例を挙げれば、職場に姿があれば仕事をしていると見ますが、姿がないと「あいつは、勝手なことをしている」と思う眼と意識があって、日本人らしい労働心理であると言われます。

 役職の立場にある人ほど、その心理が功を奏して、日本は世界第3位の経済国を築いてきたという自負心があるようです。そのような役員が多い職場にテレワークは評価されず、根付くこともないでしょう。

 何はともかく、職場に集まり顔を合わせ一緒に仕事をすることが最善だとする労働意識で、結果を出して来た方々です。パソコン、インターネットの利点は、理論として把握できても、皮膚感覚での活用については積極的になれません。

 テレワークの仕事を一般的なものにすると、20階、30階建ての高層ビルは不必要になります。莫大な建設費を掛けるなら社員に分配し、自宅か自宅周囲に環境が整った仕事場を持つようにさせることができるのです。

 交通渋滞の自動車通勤も、ラッシュアワーも消えます。従業員の交通費も要らなくなります。これは、一例にすぎません。もう少し身近な変化を挙げます。

 毎年の年賀状にこだわりたい人は、何千万人かいるようです。電子メール年賀にすれば、はがきに使う資源、郵送料も要らなくなります。新聞をこよなく愛する人もたくさんいます。電子新聞に切り替えると、膨大なパルプも印刷費も配達人経費も要らないので、新聞の購読料は半値ほどになるのではないでしょうか。

 テレワークとは、会社に行くか行かないかというだけのことではありません。経済成長の終焉時代になって、あらゆるものに以前のような感覚でお金を掛けることができなくなるでしょう。

 問題は、人間は頭脳を切り替えることができるかどうかです。もし、「新しい生活様式」に切り替えて行かなければ、生存し続けることが難しくなるだけです。それが嫌な人も切り替えて行かざるを得ないことを、コロナウイルス感染によってはっきりしました。

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