
プロのイラストレーターが忙しくてもイベント出展を減らさないわけ
仕事が忙しくて、イベント出展を減らそうと思った
イラストレーターとして独立以降、定期的にイベントに出展しています。
2017年はオリジナルブランド「リトルコチカ」(*)として
デザフェスやコミティア、もっと小規模のイベントまで、ぜんぶで10回出展しました。
*「リトルコチカ」はイラストレーターsericoとディレクターのHayashi二人でやっているオリジナルブランドです。
しろくま絵本シリーズや動物&食べものイラストのグッズやステーショナリー雑貨等を作っています。
平均すると、月に一度は出展しているペース。
そしてなんだかんだ毎回グッズやイラスト集などの新作も用意するので、一年中常になにかを作っているような状況です。
本業はイラストレーターなので、もちろんその間もイラスト仕事をしています。
(フルタイムで働きながらイベント出展している、とイメージしていただくとわかりやすいかも)
そんなかんじで活動していたらとても忙しくなってしまい、昨年末には「2018年は出展回数を減らそう」と決めました。
それが2018年、どうなったかというと…
上半期はすでに6回出展しているし、この後も既に決まっているだけで3回。
昨年とほぼ変わらないペース。
イラスト仕事を減らしたのか、というとそんなことはなく、大変ありがたいことにお引き受けする量はむしろ増えているくらいです。
このスケジュールをこなせるか、正直ちょっと弱気になるくらい。
それでもイベント出展を減らさなかった理由
これだけ忙しくてもなぜ「リトルコチカ」はイベント出展を減らさないことにしたのか。
その大きな理由の一つは、
「今の状況がとても儚いものに思えたから」
です。
私自身が心身ともに元気で、自分自身でも良いと思う作品を描けること、
それを好きだと言って、イベントに来てくださる方がたくさんいらっしゃる状況。
(来れなくても応援してくださる方も!とてもありがたいです。)
さらにクリエーター向けのイベントが多数開催されている今の時代。
それらが重なった今の状況って、すごく奇跡的なのではないか。
今、私がいいと思って描いているものは、5年後、10年後の私がいいと思うかはわからない。
まったく違った作風になるかもしれないし、そもそも作り続けていられるかもわからない。
今、私の作品を好きだと言ってくれる方が、この先も好きだと思ってくれるかはわからない。
興味が移り変わるかもしれないし、イベントにもいろんな事情で来れなくなるかもしれない。
そもそも、こんなに頻繁にあちこちでイベントが開催されている状況もいつかなくなってしまうかもしれない…。
そう考えたときに、目の前の忙しさに弱気になってイベント出展を減らすことが正しい判断だとは思えなくなりました。
熱のあるうちに
思い返せば学生時代、あんなものを作りたい、こんなことをやってみたい、そう温めていたアイデアがたくさんありました。
忙しさや力不足を理由に先送りにしているうちに、それらのアイデアはいつしか色あせてしまって、形にしたいと思えなくなっていました。
大学を卒業してずいぶん時間が経ちましたが、
「なぜあのときやらなかったんだろう…」
と、いまだに思い出しては後悔しています。
また、普段のイラスト仕事では手がけた商品や書籍を手にとってくれる人たちと直接触れ合うことは滅多にありません。
どんな気持ちで、どんな表情で手にとってくれたのか。
それを直接見て、聞けるイベントはとても貴重な場です。
自分の想像とはまったく違うところを気に入ってくれていたりと、1人で机の前にいるだけじゃ気づけなかった発見がたくさんあります。
それらはすべて、次の制作や仕事にいい影響を与えてくれています。
なにより、ちいさなちいさなリトルコチカのブースに来てくださる方々の笑顔に本当に元気をもらっています!
今この瞬間の熱量、そしてそれを受け止めてくれる人たちの存在。
それがずっと続くものでないと思うからこそ、今はその場を、その瞬間を、味わいつくしたい。
そう思ってリトルコチカはできるかぎり、イベントに出続けたいなと思っています。
serico