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読書日記2『グリム童話』池内紀訳

読書日記第2冊は『グリム童話』(ちくま文庫)です。少し前に、『本当は恐ろしいグリム童話』が話題になりましたが、実際にゾッとする描写が多く含まれています。当noteの筆者も、先週のうら寒い時期にゾッとするものを読んでしまい、少し後悔しています。

子供向け絵本との相違
「赤ずきん」「ラプンツェル」「ヘンゼルとグレーテル」というと、子どもの頃に読んだおとぎ話の世界を思い浮かべるでしょう。話の大筋はそれと変わりません。あくまで童話。小学校高学年であれば十分読める内容です。
それでも大人が怖いと感じるのは、内容よりも描写のせいでしょう。とにかく、登場人物たちが容赦ありません。主人公も、その周辺人物も他者に危害を加えるときは徹底的にやります。これは映像化できません。

怖さと併せておもしろみを堪能
「ゾッとしたい」というお話も収録されており、主人公がひたすらゾッとしてみたいと思い行動する面白可笑しい内容になっています。自ら怖い思いをしようと行動するのですから、読んでる側はハラハラします。はたして、主人公はゾッとするような体験をすることができるのか。本編でお読みください。

グリム兄弟の逸話
グリム童話は、そのむかしグリム兄弟が人びとから伝え聞いた昔ばなしを収集し、書き留めた口承文学です。町中の大人から昔ばなしを聞いて回ったそうです。録音機のない時代ですから、話すほうも聞くほうもよく物語を暗唱できるものだと感心します。
考えてみれば、昔の人の記憶力は驚異的です。我が国だと琵琶法師。あの長大な平家物語を暗唱したのですから驚きです。我々は紙やPCなどの媒体を使って記憶を補助しますが、そういった記憶補助ツールのない時代に生きた人々は、我々より優秀な記憶力をもっていたのかもしれません。

池内紀による翻訳
日本のドイツ文学者で第一人者と言われる池内紀。大人世代ですと、カフカの翻訳で知った人もいるかと思います。実はいま、高校一年生が学ぶ国語総合(現代文)の教科書にも、池内紀の評論文が収録されています。国語総合は全員必修科目ですから、今の高校生で知っている人も多いのではないでしょうか。ドイツ文学の翻訳だけでなく、すぐれた文化論を書いてくれています。
残念なことに、池内さんは昨年2019年8月に永眠されました。多くの翻訳文学やエッセイ、評論文を遺してくださったことに、一教師として感謝する次第です。

こんなときにおすすめ
いつもはこんな人におすすめで締めくくりますが、今回は読む時期をおすすめします。
・ちょっと怖い話を読みたいとき
・真夏のゾッとしたい時期
・気軽に童話をたのしみたいとき
・ドイツに興味をもったとき
・昔読んだなつかしい童話と再会したいとき
・古典に興味をもったとき
・翻訳(通訳)に関心を持ったとき

昔懐かしい物語をお楽しみください。


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