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The Entrepreneur #8  社外取締役 高岡 美緒氏  ~企業も個人も今こそ追求すべき「ESG」という新たな機会とは?~

こんにちは。
セプテーニグループnote編集部です。

セプテーニグループはミッションとして「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」を掲げています。

いま社会で活躍する様々なアントレプレナーをお招きし、セプテーニグループに所属するひとりひとりに、それぞれの「アントレプレナーシップ」について考えてもらう場をつくりたいと企画された”The Entrepreneur”シリーズ。

 第8回目のアントレプレナーは、Forbes Japan誌の「世界で戦う女性55」の一人に選出されるなど、国内外で活躍されてきた、セプテーニグループの社外取締役でもある高岡 美緒さんです。

 高岡さんにはビジネスの枠組みにおいての「ゲームチェンジャー」となる「ESG」の意味や実際に起こっている世界的な問題、「企業価値」の評価のされ方の変化などについてお話しいただきました。

 今回のnoteではイベントレポートをお届けします!ぜひご覧ください!


高岡 美緒氏
ケンブリッジ大学物理学科卒業。 生後5ヶ月から大学卒業までアメリカ・イギリスで過ごし、ゴールドマン・サックス証券へ新卒として入社。その後、モルガン・スタンレー証券(現モルガンスタンレーMUFG証券)、マネックスグループ執行役員新事業企画室長及びマネックスベンチャーズ取締役にて戦略的M&A、新規事業開発、CVC運営を担当し、メディカルノート取締役CFOとして、ファイナンス、事業開発、管理部門、人事広報部門を管掌。現在独立系ベンチャーキャピタルのDNX Ventures Partner及びセプテーニ・ホールディングスとカヤックの社外取締役を務める。 Forbes Japan誌による「世界で戦う女性55」の一人に選出される。

新しいゲームチェンジャーとなる「ESG思考」について

最初に、「ESG」や「SDGs」などの基本的な用語や考え方についてお話しがありました。

「『SDG(Sustainable Development Goals)』というのは2015年に国連加盟国で採択された『2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すためには何が必要なのか』というゴールを17個掲げたものです。思想に近く、経営戦略に組み込むことで、持続的に企業価値が向上すると考えられています。

一方、『ESG』というのは環境問題(E)、社会問題(S)、企業統治(G)のことです。こちらはより投資活動にフォーカスした話で、顧客や取引先、株主、従業員、地域といった各ステークホルダーへの配慮として、企業の長期的な成長に影響する要素を表しています

企業がESGに配慮して活動していたら、結果的にSDGsに貢献するということになるのです。」

SDGs:「思想」に近い→経営戦略に組み込むことで持続的に企業価値が向上する

 ESG:投資活動に限定した話:ステークホルダー(株主に加え従業員、顧客、取引先、地域など)への配慮、企業の長期的な成長に影響する要素

ESGに配慮していたら、結果的にSDGsに貢献するという考え方

「次は、サステナブル投資における『ESG投資』と『インパクト投資』の違いについてです。

ESGというのは必ずしも環境保護などの活動から利益を得ていなくてもいいんですね。経済的リターンを得るために、長期的な目線で事業経営上のリスクが少ない企業に投資するのがESG投資です。
これに対しインパクト投資というのは経済リターンを得るために、世界が抱えている社会課題をソリューションやテクノロジーを元に解決することで利益を得る企業への投資になります。

サステナブル投資の資産運用残高は2019年に急増しており、86兆ドル超にまでなりました。いままでは『これも一種のトレンドだ、また元に戻る』と言われてきましたが、2020年・2021年でさらに加速し、ここまで進んできていると一過性のものではないというのが共通の認識となってきています。」

ESGで起こっている問題とは

続いて、ESGの観点で実際何が起きているのか、どうして社会的にこれほど危機感が高まっているのか、についてのお話がありました。

E(環境)については、大規模な環境破壊により、2100年までに地球の平均気温が約3.2度上昇すると警告されているそうです。
仮に2度上がると、
・赤道周辺の熱波発生頻度が上がり、住めなくなる
・4億人の水不足
・干ばつの慢性化
・森林火災で消失する面積の倍増

などの問題が発生すると言われているとのこと。

※IPCC、レベッカヘンダーソン「資本主義の再構築」より

また、その他にも、
・プラスチックごみ問題
・再生エネルギー
・廃棄物問題・フードロス・水不足問題
・難民問題

など、多くの問題があるとのことでした。

S(社会問題)については、世界的に格差が拡大していると高岡さんは言います。

「日本でも世界と同様に格差が広がっていて、日本のトップ10%の所得が下位40%の1.32倍になっています。そんな中で7人に1人の子どもが相対的貧困に陥っていて、相対貧困率においてはアメリカに次いで世界で2番目に高いという状況です。(※)

また日本はジェンダーギャップ指数において世界156か国中120位と、先進国の中でも非常に低いことも有名ですよね。またとても衝撃的なのがひとり親、大半が母子家庭なのですが、その母子家庭の貧困率がOECD諸国の中で1位というところなんです。日本の母子家庭の貧困率が1位ということも衝撃なのですが、実は80%以上が就労しているんですよね。生活保護を受けているわけでは無く、お母さんが働いているにも関わらず2世帯に1世帯は貧困の状態になっている。またこの格差問題に関連して、児童虐待も年々増加しています。(※)」

※OECD、クレディ・スイス「世界の富裕層レポート2-19」、レベッカヘンダーソン「資本主義の再構築」、世界経済フォーラムより

G(ガバナンス)については、昨今、世界的に有名な企業の経営者がセクハラ問題によって退任させられる事例があったり、環境に対して放漫な経営をしていると経営者が厳しく追求されているという現象が起きているそうです。

資本市場の新しい秩序について

そのような中、従来の資本主義は機能しているのかと問題視されてきているとおっしゃいます。

「もともとフリードマンという経済学者が唱えた、企業は株主価値を最大化すればいい、という考え方が現代の資本市場の思想の基本となってきました。
しかしそれが免罪符となっているというのが今の状況です。
この考え方が行き過ぎると、例えば、短期的な利益を求めるために将来の地球環境を犠牲にすることになります
パイを大きくすることよりも、パイの奪い合いになりつつあり、そんな資本主義って持続性は無いのではないか、と最近世の中が気づき始めたんですね。

そしてここにきて、日本でいう経団連のような組織、アメリカのビジネスラウンドテーブルが、2019年に「企業のパーパス」について新たな方針を発表し、企業は社会的な目的に奉仕しなければいけない、といったことを宣言しました。
なので資本市場で生きていく会社にとって、秩序がここで変わったことになります。
会社が向いているべき軸が、株主から社会へとシフトしているということです。」

続いて、参考として認識すべきメガトレンドとメガリスクについてお話しがありました。
下記の図は、メガリスクについて、縦軸を影響度、横軸を発生確率として表したものです。
リスク発生確率と影響度のどちらも高いものには緑で記された環境が多いことがわかります。

現代における企業価値とは

そして企業の価値について。
これからの新しい秩序では、「ただ儲ければいい」という考え方ではなく、社会にとってどのような価値をつくることができるのか、社会善との両立が求められてきています。
コロナのようなパンデミック事象をはじめとする昨今のディスラプションによる大きな機会もあり、ダイナミックな時代の中で、新しいことに挑戦するには非常に面白いタイミングなのではないかと高岡さんはお話しくださいました。

例えば
・フードテック
・エドテック
・ヘルステック
・クリーンテック
・廃棄とリユーズ・リサイクル
など。

そして、こうした挑戦を成功させるうえで大事になってくるものは、「ヒト・カネ・タイミングと運」。特に、「ヒト」に関して、高岡さんは投資家視点も踏まえてこうおっしゃいます。

ヒトとカネ、つまりチームと市場・戦略について、投資家はどちらを重視しているかというと、チームです。採用も資金調達も人を引き寄せるのは人ですし、納得性の高いビジョンやパッションがあるのかというところを見ています。これまでたくさんのチームを見てきましたが、そこに一貫したビジョンがあるかどうかがとても大事だと思います。

私が共感している田坂さんの言葉なんですが、ビジョンはいくら語ったとしてもそれだけではなんでもなくて、自分たちがちゃんと信じていないと意味がないと。語るのが上手だというところではなくて、本当に語っている人自らが信じているかどうかということが重要になってくるので、チーム一丸となって、一貫したビジョンへのパッションがあるかどうかが大事だと思っています。」

そして最後に、このようなお話で講演が締めくくられました。

「現在は、企業が社会に対してどのように貢献していけるのか、どんな役割を果たせるのか、社会に対して企業が積極的にコミットしていく姿が求められています。イノベーションの父と呼ばれている、シュンペータ―さんが言っていたことですが、誰が世の中を変えることができるかというと、政府や政治家ではなくアントレプレナーだ、と。

これまでお話ししてきたように、私たちが解決したい課題は、小さなものでなくて、より大きなものになりつつあるように感じています。

そしてそれを達成する上で一番大事なのが仲間探しなのかなと思ってますが、変化が激しい昨今だからこそ仲間探しがしやすい局面なのではないかなと思っています。
なぜなら、みんながみんな何らかの変化を感じていたりするので、自分事に感じやすく、共感もマッチングしやすくなってきている。
そのような仲間に出会う方法としては、強い想いを持った発信などが考えられます。仲間探しをしながら考えを深堀していくということが大事なのではないでしょうか。

世の中の軸が変わってきていますが、こういったディスラプションの中で、さまざまな産業が破壊されたり生まれたりする時代です。
事業を起こすには今とない機会だと思います。

事業を立ち上げるためにはノウハウやリソースが必要になってきます。創意工夫、ゼロイチの立ち上げ、組織作りやコネクション、ノウハウですね。こういったものってイチから自分だけでやる方法もありますが、組織レバレッジが効くのではないかと言われています。

どんなに才能があっても一人でできることって限られてしまいますが、組織となるとやれることのスケールが指数関数的に変わってきます。そういった意味でもセプテーニグループが持つ、色んなリソースや経験、ノウハウをレバレッジしていくというのがいいのではないでしょうか。

コロナ禍とつながりによって結構大きなインパクトを残せるようになってきたので、まずはひとりひとりがミッションを持って動いてみる、ということが大事になってくると思います。」


***編集後記***

高岡さんによる講義後も、Q&Aではグループメンバーたちから多くの質問があがり、とても興味を持って参加しているようでした。
イベント後のアンケートでは

「ESG・SDGsが何たるやということ、また資本主義やミッションに関する考えをお伺いできたこと、目的と手段を改めて再認識できる機会になりました。」

「世界が直面しているリスクや課題によって新しい秩序が生まれ、持続性という観点で企業があるべき姿が変わっている事がよくわかりました。」

「用語や概念が難しい領域だったので、整理できてよかったです。もっと勉強しないとなと思いました。」

といった感想が寄せられました。

セプテーニグループも、資本市場の新しい秩序の中で持続的に企業価値を向上していくためにも、事業を通じて社会課題の解決に貢献していきたいと思います。
高岡さん、ありがとうございました!

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