『陰謀論』という呪縛

私たちは『陰謀論』という言葉をどのように扱っているでしょうか。
何か神秘的で、謎めいた非日常の言葉として捉えていますか?
それとも証拠もないのに吹聴されているバカげた話という言葉として捉えていますか?

私はいわゆるオカルトという分野を研究していましたが『陰謀論』と聞くと、今度はどんな面白い話が聞けるのかとワクワクしていました。調べられるものは調べてみますが当然のことながら調べても結局は証拠不十分となることがほとんどです。
でもそれで良いです。『陰謀論』とはそういうものですから。

最近はSNSの普及により『陰謀論』という言葉を目にする機会も増えていると思います。ただ、その頻度が非常に高くなったことで『陰謀論』という言葉が日常的な言葉となり、ある意味「気軽に使えてしまう」ようになったのではないでしょうか。
そして『陰謀論』という言葉はその元々の性質を置き去りにして、ほとんどの場合「根拠のないウソ(デマ)」という極めて否定的な意味で使われています。
今回は『陰謀論』という言葉の呪縛について考えてみます。

いつの間にか定義される言葉

ここで重要な点があります。
『陰謀論』は意図して作られた言葉であるという説があります。
具体的にするために「DS(ディープステート)」で解説します。

「DSという組織があり、それが世界を支配しようとしている」
という都市伝説、あるいはそういう話がまことしやかに伝播したとします。
『陰謀論』という言葉がない状態ではそれらは単なる「面白い話」です。
この「ウソかホントかわからないけど、面白い話」というのが「元々の性質」です。そしてこのような性質を持つ話の総称として『陰謀論』というラベルを貼ってひとつのジャンルとして扱うことについては何の問題もないでしょう。

仮にそう総称したとして、「ウソかホントかわからない」ことが『陰謀論』なのです。しかし昨今のSNS界隈では「根拠のないウソ(デマ)」という意味で使われています。
この部分については確かにある種、意図的にいわゆる『陰謀論』とラベル貼りされた話が「ウソかホントかわからない話」→「根拠のないウソ(デマ)」にすり替えられていると感じます。

さて、ここからが最も恐ろしいことです。
私たちは『陰謀論』というものを上記のように分解したり元を辿ったり、『陰謀論』とは何かを考え、調べたことはあるでしょうか?
私は40名ほどに質問してみました。
想像の通り、40名すべての人から「そんなの考えてない」と回答があり、『陰謀論』という言葉についての印象を聞くと「一部の人が勝手に言っている話」や「わけのわからないウソ(デマ)」など否定的な意見ばかりでした。
そして最後に最も恐ろしいことがわかる質問をしてみました。

「それはいつから、どういう経緯でそのように捉えるようになりましたか?」

です。
この質問に対する答えも全員同じでした。

「わからない」
「なんとなく」
「よく知らないけど」

これです。
私たちは『陰謀論』という言葉に対して「いつのまにか」「はっきりとしたきっかけもなく」「共通の」認識を持つようになっているのです。
こうした現象が自然発生することはありますので、これだけで「DSが生み出した言葉」ということはできませんが、しかしこのような現象を意図的に引き起こすこともまた可能なことは周知の事実です。
それが『プロパガンダ』です。

プロパガンダの技術を使えば自然発生を装って特定の思想や考えに誘導することは可能です。これは事実です。マンガやアニメの話ではありません。いくらでも証明されています。
ここでプロパガンダについての話をすることは避けますが、この事実は『陰謀論』に対して大きな影響を与えます。

保留という選択肢

オカルトの分野で大きなテーマのひとつとして確立されているジャンルに「超能力」があります。この超能力についての真偽を考えるとき、『陰謀論』と『プロパガンダ』の関係と同じことが言えます。
「超能力」と対の関係にあるものは「手品(マジック)」です。
手品というのは歴史が古いものですが、大昔から奇跡を演出してきたことは事実です。よく完成された手品は超能力とも思えるほど信じられない現象を起こします。
つまり、あり得ない現象を目撃したからといって即座に「超能力だ」となるのではなく「手品の可能性もある」と考えるのが正しい結論です。
そしてこの場合、真偽を確かめられない状況であれば答えは保留です。
「超能力かも知れないし、手品かも知れない」これが正しい答えです。

『陰謀論』という言葉とそれに対しての考え(イメージ)が自然発生したのか、それとも何者かによって誘導されたのか、それはわかりませんが、「どちらの可能性もあるということで保留」と結論すればいいのです。興味があれば調べ続けていけばいいだけです。

「虚実」を知る

少し補足で兵法の話もしておきます。
兵法の基本は「虚実の運用」です。
「虚」とは形が定まっていない状態、敵から見てどういう形かわからない状態のことを指します。一方「実」とは形が定まっている状態、敵から見てはっきりと形がわかる状態のことを指します。

戦の原則は「正をもって合し、奇をもって勝つ」です。
正とは実、奇とは虚です。
目の前に見えている敵軍は正規軍(実)です。
草むらや森に隠れている(かも知れない)敵軍は奇兵(虚)です。
この虚実をもって戦うのが基本作法です。

しかし勘違いが多いのですが、「正規軍と奇兵を用意して勝つ」…ということではないところが兵法の真髄といってもいい部分なのです。
「虚実の運用」とは「虚をもって実となし、実をもって虚となす」ということです。
正規軍と思っていた部隊がいきなり奇兵となり、奇兵と思っていた部隊が実は正規軍になるといったことは当たり前のことです。何が実で何が虚か、そのバリエーションには果てがなく、永遠に答えの出ないものなのです。

ではこのときどうすればいいでしょうか?
それは敵軍を「実」の状態になるよう仕掛けるのです。
「実」なのか「虚」なのかわからないなら無理やり「実」の状態になるように誘導(陽動)すればいいということです。このことを念頭に置いて『陰謀論』に対しての結論を保留にしたほうがいい理由を説明します。

もし仮に支配者という存在が居たとして、『陰謀論』に対して国民がどのような反応を見せるのかということは把握しておきたいでしょうし、できればその結果は自分にとって好ましい結果であることが望みでしょう。
単にアンケートやSNSの分析をかけるだけでもいいのですが、自分にとって好ましい結果となるよう誘導するとなれば、その時に必要な技術が『プロパガンダ』です。

国民が「実」の状態であることを支配者が最優先したい理由

国民が今どのような考えを持っているのか、まずはそれを明らかにしなければ対策を考えることができません。そのためにプロパガンダを用いて国民を「実」の状態に誘導します。ここで重要なことはプロパガンダの成功を必ずしも狙っていないということです。
国民を「実の状態」にできれば狙いのほとんどは達成されています。
できれば支配者にとって好ましい結果であったほうがいいというだけで、支配者にとって好ましい結果でなければならないということではありません。

さてここであなたが支配者だったと仮定しましょう。
国民の状態としてどちらが嫌ですか?

A:あなたの支持率は低いので今計画を実行したら反乱を起こされる
B:何を考えているのかわからない(状況不明)

どうでしょうか?
Aの状況は確かにあなたにとって好ましい結果ではないですが、何をすればいいか、もしくは何をしてはいけないかがはっきりしています。対策の打ちようもあるし、計画を立て直すこともできます。
しかしBのような状況では何をしていいのか、あるいは何をしてはいけないのかさっぱりわかりません。ある実行したい計画があったとして、やっていいのかやってはいけないのかよくわからない状況になっています。

Aの状況とBの状況、支配者からしたらどちらが嫌な状況でしょうか?
支配者はとにかく国民を「実」の状態にもっていくことが何よりも優先することであることはこの例からわかって頂けると思います。その上で、できれば自分に有利な結果になって欲しいとは思っていますが、それはオマケ程度です。
※SNS界隈の大型アカウントが急におかしなことを言いだすのもこれが原因なのではないかと私は考えています。プロパガンダがうまくいかずとも、作戦の本当の目的は国民を実の状態にすることですので、そのアカウントのフォロワーが増えようが減ろうがどうでもいいことです。

「虚実」の見分けが付かない民族

本来「国民」という属性の人間はこの「虚実の運用」をすることはできません。ましてや「虚をもって実となし、実をもって虚となす」などという芸当を何十万、何百万、あるいは億という単位で実行するのは不可能です。
なので「国民」というのは「虚実」がはっきりしていますし、「実」の状態にさえできればコントロールは容易と言っても過言ではありません。最大の武器は数にモノを言わせた暴動です。支配者はこの「虚」の状態から起こされる奇襲攻撃が致命的な弱点なのです。
ですから『法治国家』という呪縛をもって暴動を押さえることに最大の力を使います。

支配者が最も恐れることは国民が「虚」の状態になることです。
しかし、幸いなことに国民は虚実の運用ができません。
これは支配者にとっては僥倖、まさに天啓的な僥倖です。

ただし世界で唯一、「国民」の属性を持ちながら「虚実の運用」ができる異常な民族が存在します。「日本人」です。
勘の良い方ならもうお気付きかと思いますが、私たち日本人には「ホンネ(実)とタテマエ(虚)」という最強のスキルが備わっています。正規軍がいきなり奇兵に変わるような鮮やかさでホンネとタテマエを使い分けます。
突発的な暴動ということであれば日本ほど世界の支配者を驚かせた国は他にないでしょう。
草食動物のような見た目かと思えば猛獣のような牙と爪を持ち、烈火のごとく荒れ狂ったかと思えば次の瞬間には素直な羊になる。冷静に外国からの視点で見れば非常に不気味な民族ですね。「何を考えているのかわからない」ということです。そんな人間が1億人以上もいる国は脅威以外の何者でもありません。
まさにBの状況なのです。

「日本人」がいる限り支配者は不安で不気味で仕方がありません。
早く絶滅して欲しいと思う気持ちもなんとなく分からなくもないですね。
ノイローゼ状態ではないでしょうか。
SNSでアンケートを取ろうが、公安を使って盗聴しようが「ホンネとタテマエ」というスキルを持つ日本人に対して有効な手はありません。心を読む超能力でも開発するしかないですね。

ですので「周りがマスクしているから…」というマスクをしている日本人は実際のところ支配者からすれば全然コントロールできていないのです。支配者の用意した理由でマスクをしているならコントロールができていますが、「周りがしているから」というのは結局のところ周りの状況によって行動が変わる、すなわち「虚」の状態に他なりません。ホンネはどうなんだ!?と不安で不気味で仕方がないでしょう。
見た目は従順に従っているものの、ホンネの部分が分からなければ意味がないのです。

現代の戦場はSNS

「国民」に対して行われる支配者側の行動の第一段階は「実」の状態にすることです。
あの手この手で「実」に誘導してきます。
その本当の目的はプロパガンダではありません。
とにかく「実」にしてはっきり把握したいということです。

なので「国民」が楽しそうに生き生きと生活を送っていると多様性が生まれてしまい「虚」の状態になってしまうし、何より不気味です。
支配者がノイローゼ状態なのであれば「国民」が楽しそうなのはうらやましいでしょうからこれも昨今の異常なまでの政策に表れているのかも知れませんね。

私たち「国民」は『陰謀論』に対して「楽しむ」だけで結論を出さずにいればいいのです。支配者は「国民」になんらかの反応を誘導してどこへ向かっているのかをはっきりさせたいのですから、「結論」を見せてしまうとそこで「実」になります。
「国民」がどんな考えを持っていてどこへ向かおうとしているのかが分かれば支配者は手を打つことができるようになります。
最後のラスボスは「日本国民」です。
ラストジャパンとはそういうことなのでしょうね。

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