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銭湯のとなりに、多世代にひらかれた「ゆるくつながれる場所」を作りたい


こんにちは!銭湯ぐらしPRチームです。リレー記事第3回の担当は、はせおやさいさんです。小杉湯となりのライティングや小杉湯での”パパママ銭湯”を企画・担当してくださっています。


銭湯に通い始めて早10数年…

大人になってから銭湯にハマり、10年とちょっとが過ぎました。若い世代にはあまり馴染みがなかった銭湯も、最近のサウナブームまではいかずとも、あらためて身近な存在になりつつあるのではないでしょうか。

わたし自身、最初は「広いお風呂に気兼ねなく入りたい」という気持ちから、だんだん交互浴にハマり、デジタルデトックスもできる!と気づいてからは、すっかり虜に。夫とも銭湯デートを重ね、今では高円寺・小杉湯のそばに住みたいと引っ越しまでしてしまいました。

なんでそんなに銭湯が好きなの?と問われると、回答が多くなりすぎて難しいのですが、なにしろ「気持ちがいい」が一番!広いお風呂もそうですし、高い天井、掃除をしなくてもお風呂に入れる楽ちんさ、出たあとの爽快感など、シンプルに「気持ちがいい」のが何よりの魅力ではないかと思います。

そしてまた別に、わたし個人の幸せな思い出と銭湯が紐付いているのも、好きな理由のひとつなのかもしれません。


祖母や従姉妹と行った、銭湯の思い出

幼少期、夏休みや冬休みなどの長期休暇で、祖母の家に泊まることがありました。両親はわたしを祖母に預けて、つかの間の休息が必要だったのかもしれないし、わたし自身、祖父母の家に泊まって、従姉妹や妹と一緒に遊ぶのは大きな楽しみのひとつでした。

そんなとき、従姉妹や妹と一緒に、近所の銭湯へよく行きました。祖母に連れられて行く銭湯は広く、音の反響が楽しかったし、知らないおばあちゃんやおばさんは優しくしてくれました。祖母の知り合いだったのかもしれませんし、その場でたまたま居合わせた人だったのかもしれません。いまから約30年ほど前の話ですから、まだまだご近所付き合いが濃かった時代のせいもあるのだろうと思います。

祖母と一緒に広いお風呂へ入り、順番に髪を洗ってもらったり、湯船で他愛もない話を聞いてもらったり。帰り道の商店でアイスを買ってもらえるのも、とてもうれしかった思い出です。わたしを含めると、女児だけでも3人。ワイワイとうるさい孫たちを順番に家の風呂に入れるより、まとめて銭湯に放り込んだ祖母のおかげで、わたしの中に銭湯での楽しい思い出が残りました。

そのせいか、今でも銭湯からの帰り道は、なんとも言えない多幸感に包まれるのです。


銭湯は「多世代」がゆるく交差できる場所

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そんな思い出もあり、大人になって一人暮らしを始めてから、近所に銭湯があるとなんとなしに行くようになりました。初めて実家を出てから住んだのは荻窪で、やはり近所に小さい銭湯がありました。今では廃業されたようですが、脱衣所でご近所のおばあちゃんに話しかけてもらって、おすすめの内科を聞いたり、お買い得なスーパーの情報をもらったり、親切にされた思い出がたくさんありました。

その経験から、銭湯は今っぽくいうと「多様性」のある場所だなと思うようになりました。老いも若きも、服を脱いで全裸でいると、なんだかフラットに話せるような気持ちになるのです。服や肩書がいわば「装備」だとしたら、そこには「装備」を全部忘れて、ただ一人の人間としてお風呂に入り、気持ちよさにひたっていられる、なんとも言えない解放感がありました。

そしてお湯につかって身体が温かいせいか、心に余裕ができ、他者への関わりかたも普段より優しくできる。わたしにとっての銭湯とは、そういう自分と出会える、ありがたい場所でした。


出産して思うようになった「地縁」というもの

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そうこうしているうちに結婚し、娘を産みました。出産時、住んでいたのは神奈川県の逗子市。自然に囲まれたとてもいい場所でしたが、お互いの両親が遠方に住む核家族のわたしたちにとっては、頼れる人が近所にいない土地でもありました。最寄りの銭湯までは歩いて約25分。妊娠出産という怒涛の期間に、気軽に行ける距離ではありませんでした。

娘を抱いて、近くの浜辺までよく散歩をしました。広い空と海が見える、素敵な場所ではあるけれど、寄せる波を眺めながらこの孤独にわたしはこのまま耐えられるのだろうか?と逡巡しました。孤独と自由はとても似ていて、誰にも干渉されない気楽さは、誰にも頼れない心細さでもありました。これから始まる保活や自分の社会復帰を考えると、夫婦ふたりだけのときは楽しかった海辺の暮らしが、なんだかとても不安定な生活のように思えたのです。

それはおそらく、これから先、わたしや夫に何かあったとき、娘が頼れる人をどこで見つければいいのだろう?という不安でした。高齢出産だったため両親はもとより、わたし自身が娘を置いて、早くにこの世からいなくなってしまうかもしれない。そう思うと、このままではいけない、と考えるようになりました。

そうしてたどり着いた結論が、「娘に地縁を作りたい」ということでした。急に親戚を増やすことは難しいかもしれないけれど、その土地に根を下ろし、知人を増やし、縁をつなぐことで、娘がひとりで困る未来を回避できるかもしれない。同時に、わたしや夫以外の大人とたくさん会わせることで、自分の生き方の選択肢はこんなにあるのだ、ということを知ってほしい。そう思うようになりました。

「自分が欲しいものは、他の人も欲しい」

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そこで思い出したのが子供の頃に連れて行かれた銭湯でした。銭湯に行って顔見知りを増やせば、少なくともわたしや夫に何かあったとき、駆け込める先が作れるのではないだろうか?とふと思っていたところへ様々なタイミングが重なり、都内へ戻ることになりました。ならば近くに銭湯がある家がいいよね、と話していたところ、今の部屋を見つけてあっという間に契約に至ります。

いざ通ってみると、噂に違わず小杉湯にはいろんな世代の、いろんな人が集っており、これは面白い、と思うようになりました。そして縁あって「銭湯ぐらし」に参加させてもらうことになり、真っ先に相談したのが「パパママ銭湯」でした。「パパママ銭湯」とは、保育士や保健師などのボランティアスタッフが銭湯の脱衣所に待機し、お風呂に入りに来たパパやママをサポートする、というシンプルな企画です。

シンプルですが、わたし自身が感じていた「子供を連れて銭湯に入りたい!」という願いを叶えるには十分でした。こういう企画をやってみたい、と小杉湯三代目の祐介さんに相談したところ快諾をいただけ、スタッフも集まって、初めて開催したのが2019年の8月。しばらくはぽつぽつとしかいなかった参加者も、先日ついに70人を超え、NHKやTBSのニュース番組にも取り上げていただけるようになりました。娘の初めての銭湯デビューからすっかり慣れ、おそるおそるだったミルク風呂にも、すっかりリラックスして入るように。

やってみて感じたのは、思った以上に「銭湯にのんびり入りたい」という要望が多いということ。「わたしが欲しいものは、他の人も欲しいのでは」とぼんやり思っていたものが、確信に変わりました。何より、参加してくれた人たちの表情がとても素敵で、湯上がりのほぐれた笑顔に、やっていて救われることもあります。自分のために始めたような企画ではありましたが、これからも長く続けていきたい、と思うようになりました。


「大丈夫だよ」と言える場所づくりのために

初めは「子供と銭湯に入りたい」から始まった「パパママ銭湯」でしたが、回を重ね、いろんな方の意見を聞くにつれ、この企画は子育て世帯の孤独を救う糸口になれるかもしれない、という思いが強くなりました。わたし自身、子育てをしていて思うのは、子連れの外出って「ここは大丈夫かな?」という確認の連続だということ。

ここはベビーカーで来ても大丈夫、ここはオムツ替えしても大丈夫……もちろん「大丈夫じゃない」場所もありますし、すげなく断られることも、まだあります。子連れの外出は、そういう「大丈夫」なお店を探して探して、自分のマップを広げていくような感覚です。

暗いトンネルの中を小さい懐中電灯だけで抜けるような子育て生活の中で、「ここは大丈夫なんだ」と思える場所を、自分でも作っていきたい。それが銭湯という、自分の好きな場所だったら、なおのこと嬉しい。

そして「大丈夫」な場所は、「大丈夫?」と声をかけ合える場所であってほしい、と思います。知らない場所への子連れのお出かけは、他の人の視線、子供の機嫌を1人で気配りしなければいけない、というタスクフルなもの。息苦しく、ときに逃げ出したくなることもあります。でも、たった一言「大丈夫?」と言ってもらえるだけで、どんなに楽になることか。その嬉しさを知っているからこそ、様々な世代が集う「銭湯」を、「大丈夫?」と声をかけ合える場として作っていけたらいいな、と思いました。

そんな思いを持ちながら、「小杉湯となり」に関わっています。子育て世代が「大丈夫」な場所は、きっと様々な世代にとっても「大丈夫」な場所になるはず。わたしが祖母に連れて行ってもらった銭湯のように、様々な世代と、様々な人々が交差する場所として「小杉湯となり」が成長していくのを願っていますし、そのためにも、いろんな方の力をお借りして、なんとかやっていけたらいいなと思っています。

プロフィール
はせおやさい(hase0831)
「小杉湯となり」子育て世代向け企画、ライティングを担当。東京生まれ横浜育ち。1児の母。小規模ベンチャーを中心に、立ち上げから企画提案、事業推進までを経験し、複業でエッセイやコラムなどを寄稿。趣味は読書と料理、夫と娘。

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