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何かを目指さなくたっていい。自分と人にやさしくなれる場所をつくる。


銭湯ぐらしPRチームです。ご挨拶が遅くなりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします!
さて、銭湯ぐらしのリレー記事第2回を担当するのは、「小杉湯となり」の2階3階の企画や情報発信を担当している“かとゆり”です。

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小杉湯で撮った夫婦写真。銭湯好き夫婦なので結婚記念に撮影してもらいました。

12年間の女子校生活で知った多様性のようなもの


「小中高12年間、ずっと女子校でした。」

と言うと、たいていの人から「小学校も!?」「お嬢様だね~」という反応をもらいます。私は小学校から高校生までの12年間、片道1時間かけて通学しながら、なかなかハードコアな女子校生活を送っていました。なにがハードコアかというと、私が通っていた神奈川県・山手の丘の某女子校は、周辺の女子校のなかでも群を抜いて校則が厳しく、今となっては笑えるレベルでした。

メイクや染髪禁止は当たり前で、髪の毛は肩につく長さになったら、必ず結ばなくてはならず、当時、雑誌『セブンティーン』で大人気だったえみちぃのようなサラつやロングヘアは許されませんでした。真っ黒な制服のスカート丈は、膝丈以下で、漫画も携帯の持ち込みも、通学中の寄り道も禁止でした。(携帯は先生に見つかって没収されると1か月間帰ってこないので、男の子とメールのやりとりをしていても、自然消滅してしまいます。戦時中に手紙のやりとりが途絶える感じです。)言葉遣いや態度に至るまで、とにかく品行方正を求められていた環境でした。

こんなに校則が厳しいと、「めちゃくちゃつまんなそう」と思われるかもしれませんが、実際はかなり学校生活をエンジョイしていました。女子校だと女子同士の陰湿ないじめがあると思われることも多いのですが、母校においては優しくて寛容な子が多く、学校が厳しい分、謎の団結感があったりして、友人関係には本当に恵まれていました。

スカート丈を短くしているのがバレて先生からダッシュで逃げたり、下校中に見回りに出くわさないよう、ひやひやしながらプリクラをとったり。文化祭では、美しさを競い合う「ミスコン」が禁止だったので、男装して特技を披露するミスターコンテストを企画したり(なぜかミスターコンは企画がとおりました)と、校内行事にも打ち込んでいました。

なかでも特に良かったところは、「好きなものを好きっていえる環境」でした。同級生は、ジャニーズや漫画、アニメ、V系、外国人俳優、宝塚、女性アイドル、サッカー、お笑いなど、メジャーマイナー問わず、趣味にハマりまくっていたり、女性の先輩や男性教師が好きだったりと、男性と付き合う機会が稀だからか、それぞれが何かに愛情を注いでは、「推し」を尊んでいました。多聞にもれず、私もお笑いとバンドとブログに青春を捧げていました。

二次元だろうと三次元であろうと、性別や年齢、国境を問わず、何かを好きでいることを、だれも否定したり陥れたりすることのないフラットな空気。少女漫画のようなトキメキのある文化祭や修学旅行は経験できず、自虐と面白さに走りがちでしたが、その後の大学生活と比較しても、同級生たちのピュアなマインドや他者を受け入れる寛容さが素晴らしかったな、と今になって思います。


やさしい無関心のまち、高円寺

高円寺

高円寺の商店街を歩いていると、私はよく当時の中高時代のことを思い出します。高円寺には若者の街というイメージがありますが、お年寄りや小さい子どもを連れたお母さんも多くいます。駅前で歌うミュージシャン、ロリータファッションの女の子、酔っぱらったおじいさん、職業が想像できないような髭を生やした人、若い夫婦、子供を連れたお母さん。
個性的な人も多いけれど、そうじゃない人も多くて、それぞれの生き方を、高円寺という街が許容している感じが、たまらなく「高円寺っぽい」のです。一見、かけ離れているようにみえるけれど、青春時代の、ささやかだけど確かにあった、あのフラットな空気を私は高円寺に重ねています。


私は今、広告会社で様々なクライアントのPRやプロモーションの仕事をしています。もともと、壮大な何かを一人で成し遂げたい、というよりも、人に喜んでもらったり、作戦をたてて驚かせたりすることが好きなので、クライアントに向き合いながら、世の中の反応が見られる仕事は、自分には天職だと思っています。
しかし、基本はクライアントワークなので、振り回されることがとにかく多く、業務の半分が調整ごとで、自分がおすすめしたいと思った提案も、クライアントの社内事情や予算で畳まれることなどはしょっちゅうです。人の要望や期待に常に応え続けようとすると、何のための頑張りなのかを見失い、自分が少しずつ、すり減っていくような感覚になっていきます。年次が若い時はとくに、そんなモヤモヤに襲われても、成長実感が麻薬のような効果を生んで、自分の生活や健康を顧みない生活をして働いていました。ストレス発散といえば、深夜でも飲みに行ったり休日も予定を詰め込んで遊び倒すような不規則な生活。

「早く一人前になりたい」「できる人と思われたい」という気持ちや完璧主義が裏目にでて、自分で自分の首を絞めることや、人と比べてずーんとなることも多く、自分がなくなりそうになったとき、私にとっては銭湯の時間こそが救いでした。

銭湯

「高円寺の小杉湯の水風呂がやばいらしい」
友達に勧められて、当時付き合っていた夫とデートで訪れたのが、高円寺の銭湯・小杉湯でした。純情商店街の途中を折れた住宅街にある小杉湯は、掃除が行き届いた清潔感とあつ湯と水風呂で楽しむ交互浴が人気です。


携帯やPCから離れて、大きなお風呂につかり、ぼーっと温まる。常連のおばあさんの何気ないおしゃべりに耳をすましたり、楽しそうに動き回る子どもの姿に思わず微笑んでしまったり、ひとりだけど、ひとりじゃない心地よさに、自分を取り戻すような感覚を覚えました。
「こうしなきゃ」という思い込みやプレッシャーから解放され、「私はどうしたいんだっけ」に立ち返ること。日々、To doに追われているなかで、この"無”の時間こそ、私にとっては必要な時間だと気が付きました。なぜか銭湯からあがると、めちゃくちゃポジティブになっているんですよね。体から湯気がでそうな、ほかほかした体と心で「まいっか」と思える、銭湯からの帰り道が好きです。
日常の中で、たった470円で手に入る、この「ゆるみ」に感動して以来、今では夫婦で毎週末の銭湯通いが習慣になっています。


何かを目指さなくたっていい場所

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銭湯のよさにドハマりしているときに、会社の先輩を通じて出会ったのが「銭湯ぐらし」でした。
「銭湯ぐらし」の人たちは、みんな仕事が忙しく、銭湯の時間がもつ豊かさを、身をもって感じている人ばかりで、すぐに打ち解けることができました。そして同時に、私が感じたこの銭湯の価値は、いまの世の中にとって必ず価値があると確信し、今までこれといったやりたいことも見当たらなかった私にとって、人生をかけてPRしたいと思ったことでした。

今年春にオープンする「小杉湯となり」は、家と職場のあいだで、お風呂上がりの着の身着のままで、ありのままの自分でいられる場所にしたいと思っています。日頃のモヤモヤや緊張を、一旦肩から降ろして、「ゆるむ」場所です。お客さん同士で話してもいいし、全く話さなくてもいいです。それぞれのかかわり方で過ごしてほしいです。
いま、メディアやSNSには、何かを目指さすためのノウハウが溢れ、スキルアップや成長をすること、効率的に仕組化して生きることの正しさが謳われています。たしかにそれは、大事なことかもしれません。ただ、私自身が特にそうですが、こうありたいと望む気持ちから、人と比べて今の自分を否定したり、「こうあるべき」に縛られ、息苦しくなることを、意識的やめていくことが大切だと思っています。
「小杉湯となり」は、自分以外の何かを目指すことをストップして、今の自分に対しても人に対しても、「ありのままでも十分素敵だよ」とやさしく認めてあげられるような空間でありたいです。湯上がりの一杯を味わうとか、畳に寝転がってぎゅっと全身を伸ばすとか、普段は話さない人と他愛もないことを話すとか、そういうささやかな時を過ごしましょう。

だれかの「頭の中」がのぞける。高円寺の人でつくる本棚

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「小杉湯となり」の2階は、小上がりの畳が広がっていて、窓からは気持ちの良い陽光が入ります。銭湯あがりに集中して作業をすることもできますし、飲み屋が多く、夜のイメージが強い高円寺のなかで、親子が畳の上でのんびりとくつろげるような空間もあります。
2階の本棚は、約30センチごとに仕切りがあり、仕切りごとに、高円寺のお店さんや子どもや学生が、それぞれ自分の本を持ち寄ってつくることを考えています。本棚に並ぶ本を見ているだけで、その人の頭の中がのぞけるような、高円寺のまちのぬくもりを感じるような、そんな本棚にしたいと思っています。

「小杉湯となり」ではサービスを一方的に提供するのではなく、お客さんが運営に参加したり、自分の好きなもの、得意なことを持ち寄ることで、より楽しむことができる場所です。面白そう!と思った人は、ぜひ一緒に「小杉湯となり」をつくっていきましょう。
2020年春、「小杉湯となり」でお待ちしています。


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プロフィール

かとゆり(加藤 友理)
「小杉湯となり」2階3階の企画を担当。神奈川県横浜市出身。広告会社で企業のPR戦略立案やプロデュース業務を担当。情報収集好きで、週末は夫婦で街ブラ散歩。好きなものは、銭湯・温泉、クラフトビール、餃子づくり。昨年からアウトドアサウナにハマり中。



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