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元銀行員は見た クリスマスの日に命を絶った経営者

みなさま、夏らしい熱い日々が続きますがいかがお過ごしでしょうか

 今回は、前回の豪快な経営者の話とは逆で、日本の大多数の中小企業の経営者の気持ちに近い社長のおはなしです。
 暑い真夏にクリスマスのお話ですが、この件は僕の心にずっと残っているお話なのでよろしくお願いいたします。

〇クリスマスイブに命を絶った経営者の話

 今から20年位前だったか、2005年くらいのことです。僕は財務のコンサルを始めたばかりでまだ若かった。

 そのころは資金調達をメインにコンサルティングをしていたのですが、インターネットも出始めたころでして、そこからの問い合わせの案件でした。栃木県の田舎の方の経営者から12月中に資金調達をしたいとの話でした。

 建築業の会社の社長年齢は60歳くらいだったかなあ、奥様が経理をされている家族経営の小さな会社さんで年商は3000万円ぐらい、借り入れが2000蔓延くらい残っていたと思います。
 年末の資金で500万円が必要とのこと、僕に相談に来られたのです。金融機関に打診をして12月20日過ぎには満額の500万円が実行できるだろうという話になりました。
 
 よかったよかったと僕もうれしかったし、社長や奥様も喜んでくれていました。

 しかしなのです、何が理由かよくわかりませんが12月20日位に金融機関の担当者からこの融資は実行できない。撤回してほしいとの連絡が入ったのです。

 もちろんどうにかならないかと食い下がったのですが、結果は変わらず、残念な結果をその社長にお伝えしました。
 社長もなんで! という感じだったのですが結果はどうしようもありません。

 僕の中では残念な案件だったなあと心の中で埋もれてゆこうとしていた、そのクリスマスイブの夜にその奥様から電話がかかってきたのです。

 僕はクリスマスイブということもありその頃の彼女とほろ酔いで食事をしていました。

 その携帯電話にかかってきた電話の内容とは

 「主人が見当たらない、もしかしたら生命保険を当てにして変なことを考えているのではないか・・・・なにかあったら連絡します」

 という内容でした。さすがにそんなことはないだろうと、電話を切った後もクリスマスの夜を彼女と楽しんだのです。

彼女にその電話のことを話すと、「そんなことをする経営者なんて、経営者になるべきじゃない」ようなことを言っていたような気がしますが、、、

〇クリスマスの日社長は・・・

 クリスマスの日の朝、先日のお酒が頭に残った状態の僕に、先日の奥様から電話が入りました。

 内容は驚愕すべきもので

 社長は自宅の玄関で首を吊った状態で発見されたということだったのです

 まさかそんなことがあるなんてと思いつつ
後悔の念が頭の中に渦巻きます。
 なんであの時別の方策を考えなかったのか
 なんであの時お客様のところに駆けつけなかったのか
 
考え始めるときりがありません

 社長は奥様の危惧された通り、生命保険を目当てに自殺したのだろうということだったのです。


 

〇お通夜の夜

 僕は車を走らせてお通夜に伺いました。
 田舎の会社さんだったのでお通夜、葬儀はご自宅でされるとのことでした。田んぼの中にポツンとある住宅街の社長の自宅。
 
 社長の亡骸を目の前にして僕は体に力が入りませんでした。

そこに並ぶご家族の方、お子様を前にして言えたのは「僕の力が足りなくて申し訳ありませんでした」というありきたりな言葉だけです。
 
 奥様の目、お子様の目は
「おまえのせいででこうなったんだ」

 という怒りがありありと感じられました。

 冷静に考えると、僕がその気持ちをすべて受け入れるべきでもないし、どうしようもない話なのではありますが、

 あのクリスマスイブの夜、世の中が浮かれていた、自分も浮かれていたことを考えるとその落差に余計に情けない気持ちになってしまいます。もっと寄り添って頑張るべきだったのではないのかと

 僕は逃げるようにして社長の自宅を後にしました。

〇これが日本の中小零細企業の現実か

 このことがあってから、僕は社長の気持ちのもっともっと寄り添ってコンサルをするようになりました。
 あまり感情を入れすぎると良い結果にならない、効率が悪くなることも目に見えてはいるのですが、このような事実を経験するとそうならざるを得ません。

 で、すごく思うのは、このことがあってから20年近くたつのですが、依然として日本の中小零細企業の現実はこのケースと変わらないといいうことなのです。
 借り入れに付随する社長に対する連帯保証制度は依然としてあります。数千万円の借り入れと引き換えに命を落とす経営者が多数いることも否めません。
 年間の日本の自殺者は数万人とも言われますが、その中で経済的な困窮から精神的病気となりこのような形になるケースが非常に多いと思われます。

 しかも! 前回話したような数十億円の借金だと、もうどうにかしようという気持ちすら吹き飛んでしまうあきらめ→これを豪快というのか強さというのかわかりませんが、
 それに引き換え数千万円という確かに大金ではありますがそのために命を落とすケースというのはとても多いのではないかと推察されるわけです。

 実際ほかにもそのようなケースがありました。

つまり借り入れの額と命を落とすかどうするかということは比例はしないということです。
 数百万円でも数十万円でも、その人が置かれた状態でこのようなことは十分あり得ると思うのです。

 つまりはこれが中小零細企業の現実だということだと思うのです。

 

〇できるだけ社長に寄り添って共感していこう

 このようなことがあってから、僕はコンサルするときにできるだけ笑顔で、借り入れのことを聞いても「うんうんそうなんですね!」
 その借入額が数千万でも数億でも数十億でも驚き方は同じです。

 事業を失敗しようと思って会社を作る社長はいません。

 経営者の能力の欠如のため、資金繰りが厳しくなるのはどうしようもない部分ではありますが、運もあります。

 大口の取引先が支払い不能になったので資金繰りに窮するなんてケースは多々ありますが、中小零細企業で取引先の与信管理なんてできる会社なんてまずありません。

 何年たってもこのスタンスは変えないで行こうと思っています。

 落ち込んでいる社長の相談を受けて
あちゃー、それはまずいですね、、、と一緒に落ち込んでいては社長と一緒に二人で落ち込んでいくだけになっちゃいますからね

 ということで、今回は僕の心に残る、日本の中小企業の社長の現実のお話でした。ほかにもこのようなケースは何件かありましたが、そして銀行員時代にもありましたが、またそのようなお話を思い出したら書こうと思います。

 もうすぐ月末、返済や資金繰りで大変な社長さんは日本中にたくさんいらっしゃると思います!
 
 頑張って、でも肩の力を抜いていきましょう!


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