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視聴記録『麒麟がくる』第六回「三好長慶襲撃計画」2020.2.23放送

将軍・足利義輝(向井 理)も列席する連歌会で、時の権力者・細川晴元(国広富之)による松永久秀(吉田鋼太郎)と三好長慶(山路和弘)の暗殺計画があることを光秀(長谷川博己)は知る。京の町の安寧が崩れることを恐れ、光秀は館に潜入し三淵(谷原章介)と藤孝(眞島秀和)らと協力して、松永らを救うことに。そこで傷を負った光秀は、東庵(堺 正章)の診療所へ運び込まれ、駒(門脇 麦)とひさしぶりの再会を果たす。

<トリセツ>
細川晴元が抱える、内部抗争とは?
都で随一の権勢を誇っていた管領・細川晴元も、家臣たちとの内部抗争に手をやいていました。とくに強大な軍事力をもつ三好長慶とその家臣・松永久秀の勢力は、主君の晴元を脅かす存在になっていました。
三好長慶が愛した、連歌(れんが)とは?
晴元が恐れる家臣の三好長慶も、並みはずれた連歌好きであったことを伝えるエピソードが残されています。
連歌とは、複数人が集まり和歌を上句「五・七・五」と下句「七・七」で分け、厳密なルール(式目)のもとに交互に詠み連ねる形式のことで、室町文化を代表する詩歌の一つであり、武家にとっても必須の教養の一つでした。
多数の人たちが次々と詠み継いでいくため、前の句を詠み解く教養とセンスが求められ、貴族の邸宅や有力寺社などでも連歌会(れんがえ)が催されていました。
伊平次が組み分けした“鉄砲”
劇中で、光秀の依頼で伊平次が組み分けする“鉄砲”は、鉄砲指導・廣瀬一實さんが所有する《國友製火縄銃》という江戸時代中期(1700年代)に製造された本物の鉄砲でした。
木製ボディー、銃身、鋲(びょう)など本体を構成している部品はとても少なく全部で13個のパーツ。とてもシンプルな造りの鉄砲だからこそ、射撃技術だけでなく、玉の込め方や手入れひとつで命中率が変わるほど扱いが難しいのだそうです。
今回の撮影では、廣瀬さんから指導を受けた伊平次役の玉置玲央さんが、実際にこの鉄砲を組み分けしながら撮影しました。
https://www.nhk.or.jp/kirin/story/6.html


 ──室町時代は難しい。

室町時代」とは、「天下人(15人の足利将軍)が、京都の室町に幕府を置いていた約250年間」のことでしょうけど、最初の約50年は「南北朝時代」、最後の約100年は「戦国時代」とも呼ばれる不安定期でした。
 戦ばかりの時代の印象が強いのですが、「日本文化の原点は室町時代にある」と言われるほど、能や連歌、和風建築など、文化が興隆した時代でもありました。

室町時代 1338年~1573年(足利尊氏が征夷大将軍~足利義昭を追放)
南北朝期:1336年~1392年(足利尊氏が建武式目を制定~南北朝合一)
安定期:1392年~1467年
戦国期:1467年~1590年(応仁の乱~小田原征伐)

政権」という観点からは、

足利政権細川政権三好政権織田政権

となりますが、「細川政権」「三好政権」「織田政権」と言っても、完全な「政権交代」ではなく、足利将軍もいれば、室町幕府(→鞆幕府)も存在していたわけで、「細川政権」「三好政権」「織田政権」とは、「No.1(足利将軍)をNo.2(細川氏、三好氏、織田氏)が「操り人形」にしていた政権」と考えてもいいかもしれませんね。

※「細川政権」の定義:「軍事的には細川氏の畿内分国を主たる基盤に、支配組織は前代の幕府諸機関を縮小しながら継承し、官制上は将軍を最高位に擁立しながら実質的には細川氏家督(京兆家)が幕府諸機関を総覧・指揮して統括するという政権」(今谷明『室町幕府解体過程の研究』)

 室町時代の前の鎌倉時代では、北条氏が征夷大将軍を操って執権政治を行い、その前の平安時代では、天皇を藤原氏が操っての摂関政治、平氏政権があったわけで、つくづく日本人は、No.1に立つこと、出る杭になること、目立つことが嫌いな国民なんだと思います。(「華やかなNo.1に立つことが嫌い」なのか、それとも、「縁の下の力持ちのNo.2になることが好き」なのか? それとも、どんなに頑張っても天皇が「日本の王」であり、自分は「日本の副王」にしかなれないと諦めているのか?)

 足利氏は武家の棟梁である「征夷大将軍」でありながら、広大な領地を持っていたり、数万人の家臣がいるわけではなく、そういう守護大名(後の戦国大名)のトップに立っているというだけです。(国友村で鉄砲を作らせているのも、自分が使うためではなく「鉄砲外交」に使うためでしょう。)
 権威はあっても、権力はないので、権力者の「操り人形」になってしまったのです。(美濃国でも、守護・土岐頼芸は、権力者である守護代・斉藤利政の「操り人形」になってますね。)

 今回(第6回)は、天文16年(1547年)の話です。「細川政権」は2年後の天文18年(1549年)6月24日の「江口の戦い」で崩壊し、「三好政権」に移ります。足利幕府もあと3人(足利義輝、義栄、義昭)で終わります。(この『麒麟がくる』の1つのテーマは、「室町幕府の終焉を丁寧に描くこと」だそうです。)

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