
【サンリス裏話】#02 初めての海外映画買付
サンリスの初めての海外映画買付は、パキスタン映画『ソング・オブ・ラホール』(以下SOL)です。今回は映画の内容には触れません。その辺は公式サイトなどをご参照して頂くとして、作品の買付についてお話しします。
この作品以前には、gnomeさんが買付を行ったインド映画『チャルラータ』(1964)と『ビッグ・シティ』(1963)(※2015年9月12日にサタジット・レイ監督特集「シーズン・オブ・レイ」として公開)で共同配給という形で参画させて頂いたり、アルバトロスさんの『ストーン・カウンシル』(2005/ギヨーム・ニクルー監督)に協賛させて頂いたりしましたが、サンリス単独で買付を行ったのは SOL が最初です。
本格的に自社で買付を行っていこうと決心した2015年2月、ベルリン映画祭へ行きました。初めての海外映画祭です。のちに行くカンヌと違い、薄暗い曇り空、所々に残る黒く汚れた雪、大きな音を出すような華やかなイベントもなく、ただただ粛々と町中の映画館で試写が行われていました。ドイツらしく質実剛健ですね。
一日に5本、五日間で20〜30本ほど観たでしょうか。あるピアニストの映画を気に入って大変ヘヴィな交渉をしたのですが、最終的に他の老舗配給会社に買われてしまいました。結果、そこでは1本も買付は出来なかったわけです。お金があればなんでも買えるわけではない、という事を思い知らされました。
そして同年10月。山形国際ドキュメンタリー映画祭にて、それまで配給をやりたいサンリスの相談を何かと聞いて下さっていたユーロスペースの岡崎さんからお勧めして頂いたのが『ソング・オブ・ラホール』という作品でした。この作品には、音楽、政治、歴史、人種など、思い入れのあるテーマが沢山詰まっていました。もちろん即決です。公開劇場もユーロスペースさんに確定しているのですから、有り難い話です。その上、サンリスは配給業務も未経験で何もわかりませんから、ユーロスペースさんに共同配給もお願いしちゃいました。お陰で地方の劇場さんにも繋いで頂き、SOLに出演しているパキスタン音楽家達を日本に呼ぶためにクラウドファンディングをご提案頂いたりと、本当に大変お世話になりました。ユーロスペースの、映画関連業界若手を育てたいという理念が非常に伝わりました。
そんなわけで、2016年8月に、サンリスは配給作品第一号、映画『ソング・オブ・ラホール』をユーロスペースにて公開し、配給会社としての第一歩を踏み出しました。2020年現在もまだ、残念ながらギリギリリクープは出来ていないんですけれどもね。どこか、地上波さん放映しませんか?(笑)映画配給は一筋縄ではいきませんね。
宮脇愼治(サンリス代表)
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