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小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

15 行ったことがない台湾。

金城武の台湾だ。
昔、友だちから聞いたこと。台湾の若者の間では、日本語でナンパするのがイケてるとかいないとか。当時、それを聞いて、東京のクラブでカタカナ差し込んでナンパするのと同じ感覚なのかなと思った。その数年後、台湾出身でこちらと同年代の金城武が、映画『恋する惑星』の劇中、日本語で女の子に声をかけるシーンを見て、やっぱりそうなのかと思った。もしくは、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった金城武が、そういうセリフを言ったから、台湾の若者が日本語を使ってナンパしたのかもしれない。さらに後年、そうではなくて、かつて日本の統治下だった頃の酷い名残りなのかもしれないと知り、落ち込んだ。行く前に、台湾の歴史をもっと知っておく必要があるのは確かだった。ちなみにウォン・カーウァイ監督がメガホンをとった『恋する惑星』や『天使の涙』の舞台になった、ぬめった夜気とネオンに彩られた香港を駆ける俳優・金城武。彼が台湾の台北出身ということで、ある時期まで、自分の中では香港の九龍が、そのまま台北のイメージと重なっていた。

近い台湾、行ったことなし。
貯まったマイルを使って、どこへ行こうか。海外旅行のプランを練るとき、もしくは海外撮影の候補地を考えるとき、いつも台湾がリストの上位に来る。そして、それはパンダのサンクチュアリ、中国の四川省成都と同じくらいの上位ランクになる。しかし、まだ台湾には一度も行ったことがない。家族や友人、知人や仕事相手など、周囲の人には台湾に行ったことがある人がたくさんいるのに、そして東京からわずか3時間のフライトで行けるというのに、マイルもそんなに使わないのに、行ったことがない。それこそ、2020年1月、初めての台湾か再び成都か、マイルでチケットを取ろうとしていた。しかし、コロナ禍により断念した。常に行きたいリストの上位にある台湾。日本語がイケてるかもと、もちろんそれだけじゃなくて親日国とも言われる台湾。だけど、まだ見ぬ台湾。その思いはつきない。

台湾といったらまずは台北か。
行ったことがないだけに、台湾のことを実際何も知らない。現時点でのこちらの中の台湾。それは。なんといっても、パンダのあかちゃんが生まれた台北市立動物園。ここは必ず行きたい。その台北では、駅前や中山堂などの有名なスケートボードのスポットをチェックする。それから、大好きな映画、エドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』と『ヤンヤン 夏の想い出』や、これも大好きな小説、東山彰良さんの『流』の場面を思い浮かべて、その残像や痕跡を探して歩きたい。これらの作品で、台湾の人々には、外省人と本省人というのがあるのを知った。そして、それが表面化した事件が、二・二八事件。これについて語った映画『非情城市』や、一説には『千と千尋の神隠し』の油屋のモチーフになったと噂されている九分市にも行ってみたい。台中だったら、現代の台湾の青春偶像映画『あの頃、君を追いかけた』の舞台になった彰化市や十分市がある。十分市の有名行事の天燈(ランタン)飛ばしは、劇中のハイライトのひとつで、きっとロマンチックな絵が撮れるだろう。

台南まで行きたいな。
ここまでだったら、台北を中心に2泊3日とかの大人の休日的な旅支度で回れば済むかもしれない。しかし、とても面白かった吉田修一さんの小説『路』で重要な舞台の1つとなった高雄市や、実は、大好きな映画『クーリンチェ少年殺人事件』の舞台のほとんどが、監督が1960年代頃の台北の町並みを求めて屏東市などで撮影したというのを知って、台湾島の南端、台南まで行きたくなった。それこそ、『路』の中のストーリテラーである高速鉄道で台北から片道3時間で行けるけれども、日程的には5日間か1週間は欲しい。ついつい欲張ってしまう。だから、近くて遠いところになってしまう。こういうときは、シンプルに2020年6月28日に生まれたばかりのあかちゃんパンダとそのファミリーだけを見る!と決めて行くのが、本当は良いのかもしれない。どうしたって、そんな簡単にはその国のすべては見れない、知れない。そんなことを思った。そんなときに、東山彰良さんの傑作だと思う『僕が殺した人と僕を殺した人』を読んでしまった。夏の台湾に行ってみたい。そして、コロナ禍の今、それがいつくるのかを考えている。15
(写真は100km先の台湾島を望む与那国島のビーチ/2019年)

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