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レールの上を走る人生を辞めて海外へ。Gender Queer のクリエイティブディレクターRIKUがファッションブランド立ち上げに至るまで。

こんにちは、Life Plus*編集部です。つくるひとシリーズでは衣食住を彩るイイもの・ことを創り出す人々をご紹介。
今回はクリエイティブディレクターRIKU MUKAE(RIKU)さんを紹介します!

RIKU

自身をGender Queerであると公言。ボーダレスな世の中について考えるwebマガジンの編集長を務める傍ら、デザイナーやモデルとしても活躍し、2019年に自身がブランドディレクターを務めるファッションレーベルを立ち上げた。

1.5年間、自由を求めて海外でその日暮らしをして見えてきたこと。

RIKUさんがファッションの世界に踏み出すきっかけに何があったのでしょうか?

大学生のころ休学し、ワーキングホリデーで海外に渡航したことがきっかけでファッションに興味を持ちました。海外に単身で長期間行くことにした理由は自由になりたかったから。音楽が好きだったので、ニューヨークへのアクセスが良さそうなトロントを選びました。


僕は、大学に入るまでは大人が敷いてくれたレールの上を全力で駆け抜けていました。与えられている環境がすべてと思っていたので視野が狭かったし、自分で主体的に考えることもできていなかったと思います。なのでいざ大学に入学してみると、自分は何をしたいのか、何者なのかがわからなくなってしまいました。友人の誘いには片っ端から乗っていろいろ手をだしてみたけれど正直どれもしっくりこない。何に対しても広く浅く知ってるけれどのめりこみたいと思えるものが無くてすごくむなしかったです。だから環境を変えることで、そんな状況をリセットしたいと思うようになりました。

実際に海外に行ってみて、どうでしたか?

日本とのカルチャーショックを感じました。日本だと自分の考えは持っていても強くは主張しないし、所属している集団になるべく同調しようとすることが多いと思います。だけどカナダやアメリカではどんな些細なトピックであっても自分の意見をしっかり主張します。狭いコミュニティの中で用意されたレールの上を疑わずに全力で進んできた自分にとっては、自己主張する文化がすごく新鮮でした。

もともと現地の語学学校に3か月ほど通うことにしていたのですが、2週間でやめました。自由になろうと海外に来たのに、毎日同じ時間に同じコミュニティで、同じ場所で勉強することに対して疑問を覚えたんです。返金された学費で僕は飲み歩くようになり、お金が無くなってきたら路上ライブしたり、ナイアガラ(観光地)のツアーガイドをしたりしました。

言語面は飲み歩いたことで必要最低限のコミュニケーションは不自由なくできるようになり、コツコツ現地で貯めたお金でニューヨークに行ったりもしました。音楽を聴いて、お酒を飲んで、現地で知り合った人たちとたわいのないおしゃべりや議論をして。何かを生み出す時間ではなかったものの、ただひたすら楽しかったです。

海外にいた1.5年は自分とは何者かと自問自答したり見つめ直す時間になりました。その時に自分のセクシュアリティについても自覚することになりました。男として育て上げてもらってきて、男としてふるまってきたけれど、実際自分は社会や周囲が定義するような「男」像とは違うと思えてきたのです。では、そんな自己をどう表現していくのか。そこで出会ったのがファッションでした。ファッションは言語以外のコミュニケーションツールであり、自分のあり方を提示するのに最適な方法であるのではないかと思ったのです。視点を変えるとファッションはアート作品にもなり得るし、社会における様々な文脈を含めて表現できる、非常に自由なものだと思います。そんなファッションについてもっと知りたい、関わりたいと思うようになっていきました。

その時々の感覚に忠実になること。様々な困難を乗り越えたとき、やりたいことはやっぱりファッション。

海外に行ってファッションに対する意欲が芽生えた後、日本ではどのようなことをされていたのですか?

大学と並行して専門学校に通って服について学びました。広く浅くではありましたが得られた知識やスキルを元に起業してみたいと思うようになり、つてを使って起業のための資金集めをしていた時期もありました。動き続けながら考えた末、大学を中退して就職することにしました。大卒でなければ高卒にしては時間が過ぎすぎてしまっている。非常に中途半端な状況だったのですが、どうにか就職先を見つけることができました。

その職場は非常に面白かったし仲間にも恵まれていたのですが、自分の興味関心分野であるファッションから遠のいていくことに焦燥感を感じるようになっていきました。迷った末にファッションをもっと追求したい、と退職。2018年4月にTFL(Tokyo Fashion Technology Lab)のブランドディレクターコースに入学し、在学中にブランドを立ち上げました。

RIKUさんが立ち上げたブランドはどのようなものですか?また今後どのようなブランドに育てていきたいですか?


掲げているブランドのコンセプトは「Invisible to Visible」。コンセプト立案のためにまずはファッションを改めて再定義することから始めました。「ファッション=服」ではなくファッションは日々の社会生活の中でする小さな選択の積み重ねの結果であり、必ずしも可視化されていものるとは限らない。僕はそれを服を通して表現したいと思いました。

実際にブランドを立ち上げてから初めてのコレクションを発表したのですが、成功も失敗もありました。コレクションを0→1で作り上げて世に提示するという経験の後に感じたこと、それは、自分が立ち上げたのはファッションブランドだけれど服だけに固執していたらいけない、もっと幅を持たせて行くべきだということでした。

服のブランドは世の中に星の数ほどあります。しかもファストファッションが浸透しているのでほとんどの人の服に対す需要はすでに賄われている状態です。まじめに服作りに向きあうことも大切ですが、それだけだと埋もれてしまって突破口が見えてこない。服はもちろんブランドのベースにあるけれど、既成概念に囚われないもっと幅を広げた提案をしていきたいなと思うようになりました。

「今後、どうしていきたい?どうなりたい?」

自問自答したこともあるし、よく尋ねられる質問です。でも、10年後とか正直わからない。なんなら、今とは全く違うブランドになっているんじゃないかなって思っています。世の中はすごいスピードで常に変化しているし、そんな中で焦って目標を設定して達成に向けてただ走り続けるのもなんだかもったいない。僕は、自分のブランドの服が万人に愛されて、より多くの人に着られるようになってほしいとは思っていないんです。その分風当りが強いこともある。だけど、だからこそ、その時々の感覚に正直でありたいし、それをファッションを通して表現していきたいと思っています。

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【Instagram】
https://www.instagram.com/kaeri_gram/

【ファッションブランド inbi】
https://www.fashionsnap.com/collection/inbi/2019-20aw/?fbclid=IwAR0kf2ML6_nUY1CV7z1fIbbSRY5XvSxDGoKWT1pRyksKlkONHF9zw5QLCu4

【ボーダレスな世の中を考えるカルチャーマガジン TOW】
http://tow-magazine.com/

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