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毎日読書#239 『気象庁物語 - 天気予報から地震・津波・火山まで』(古川武彦)

我が家の朝は、まず Google Homeに天気を聞くところから始まる。娘が「おーけー もーもる 今日の天気!」とかやっている。もーもる、というのは、ぐーぐるの事なんだけど、グーグルをどこまで崩したら反応しなくなるかの実験をしているのだ。もーもるは五分五分で反応してくれる。アクセントをはっきりつけると勝率があがるようだ。

しかし、うまく聞き出せたとしても、もーもる先生の情報量が少なく、満足度は低い。最高気温、最低気温、ざっくりとした天気予報、現在の気温の4つしか教えてくれない。

私の場合、朝、一番知りたいのは「今日は傘を持ち歩くべきか」だ。そこで、スマホでヤフーの天気アプリを開き、1時間ごとの天気予報を確認するようにしている。今まさに雨が降っているときは、さらに雨雲レーダーを開き、将来の雨雲の予測を調べる事もする。

これらの天気予報の情報、最近は民間の気象情報サービスが提供したものが主になっている。ヤフーのアプリを確認すると、情報提供元として「ウェザーマップ」「フランクリン・ジャパン」「日本気象株式会社」「日本気象協会」などが出てくる。気象庁は出てこない。

一昔前だと、天気予報は全て気象庁から発表されるもので、とにかくよく外れる印象だった。「天気予報」といえば「当たらない」の代名詞のようになっていた。

しかし、最近の天気サービスは非常に細かいメッシュで現在の天気や、直近の予報を知らせてくれるようになった。最近はゲリラ豪雨の予測まで知らせてくれるので、東京で生活する人には手放せないアプリになっている。

天気予報が民間に移って、情報がきめ細やかになって便利になったし、心なしか的中率も上がっているような気がする。気象庁よりも民間の方が天気予報があたるってこと? なんて思ってしまう。思っていた。しかし、そういうわけではないようだ。というのも、これらの民間の予報サービスが利用している生のデータは、やはり気象庁の持つ情報なのだ。

これは、細川政権による規制緩和以来、気象庁は徐々に予報サービス等は民間におまかせし、自分達は、主に災害対策に重きを置くようになったからというのが正解のようだ。

確かに、大きな台風や、豪雨による災害などが予想されるときに、気象庁の方が出てきて注意喚起をしている、という光景をよく目にするようになった。

本書の著者は、気象庁に40年勤め、日本の気象学の発展を間近で見守ってきた一人だ。

日本の気象庁の歴史は、140年前にさかのぼる。1875年、気象庁の前身となる東京気象台が設立され、日本で気象観測が行われるようになった。場所は現在ホテルオークラがある港区の溜池あたりで、最初の観測項目は気圧や気温、雨量などだった。

それ以降、軍事に、農業に、台風を中心とする気象災害にと、大きな気象上の出来事があるたびに大きな発展をする、という歴史を綴ってきた。

本書は、そんな日本の気象の歴史を紹介しつつ、著者が気象庁でみてきた気象学の近代化の様子を、淡々と、しかし熱っぽく紹介したものになる。

日本の気象庁の歴史を通し、人々の生活がいかに気象災害に対して無力であったか、いかにしてそれを技術で克服してきたのか。そういったことが紹介されていてとても面白い。

特に、コンピューター導入の下りや富士山レーダーの設置の下りは、筆致こそ淡々としているものの、当時の関係者たちの熱い思いが伝わってきて、軽い興奮を覚えた。中島みゆきの歌声が頭の中で鳴り響いたよ。

地味だけど面白かった。おススメです。

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