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【読書ログ#176】FULL MOON(Michael Light)

火星の人』という超絶素晴らしいSF小説がある。火星でのミッションの途中、うっかり地球への帰還船に乗り遅れた不幸な男が主人公の話だ。

火星に置き去りにされた主人公が、迎えの宇宙船が到着するまでの間、火星に残されたわずかな物資を頼りに、ありとあらゆる工夫をしながら生き延びるという話なのだが、これが超面白い。

所謂サバイバル小説なのだけど、状況の極限さがとびぬけている。なにせ火星に独りぼっちだ。しかし、取り残されたワトニーは植物学者であり、メカニカルエンジニアだった。自らの知識と能力を最大限発揮し、食料を確保する為に基地内にジャガイモ畑を作ったり、地球との通信を回復させるためにあれこれと奔走する。昔、トム・ハンクスが主演した「アポロ13」という映画で、宇宙船にあるはずの道具や物資をあれこれと組み合わせ、月着陸船の船内で二酸化炭素の濾過装置を稼働させるというエピソードがったが、そのような話が全編にわたりダイナミックにユーモラスに科学的に正しそうな感じで行われる小説だ。面白そうでしょ?

この『火星の人』を書いたのがアンディー・ウィーアーというアメリカの作家なのだけど、彼の新作が『アルテミス』といって、月を舞台にしたもので、こちらもなかなか面白いと評判なのです。刊行されてから、ずっと読もう読もうと思っていたのだけど、読もうと思う瞬間に忘れるので、ずっと積読になっていた。

最近、本を整理していたらウッカリ出てきたので、今度こそ読もうと決め、カバンに放り込んだのだけど、ふと「そういえば月の写真集をもっていたな」と思い出し、本棚から取り出したのが本書だ。

本書は、アポロ計画に参加した宇宙飛行士たちが宇宙で撮影した写真を集めた写真集だ。

その昔、おっさんである私が生まれるよりも前、アポロ計画という夢いっぱいの計画があった。1967年から1972年の6年間、アメリカで行われていたアポロ計画は、人間を月に送り込むという壮大な計画で、世界中の人々を熱狂させた。

私たちとしては、本当にそんなことあったの? というレベル感で壮大な計画だ。もはや神話と言って差し支えないレベル。だって、50年前だよ。

そんなアポロ計画、人類なら誰でも知っているとおり大成功し、人類を月におくりこんだのだけど、そのミッションの間、宇宙飛行士達は、ハッセルブラッドというステキなカメラで数多くの写真を撮影していた。その数3万2千点。

しかし、膨大な写真のうち、世の中に公開されたのは報道用として公開された20点のみ。しかも、コピープリントをさらにコピーするなどしてあまりクオリティの高くない状態。もったいない。

動画についても画質が悪かったので、私たちの知る月の姿って、なんだかぼやけてざらざらしたものではないかしら? 動画にいたってはフェイクなのでは? なんてひどいいわれよう。でも、しょうがないよね。あんなにガビガビしていたらリアリティが伝わってこないものね。

この写真集では、そんな私たちの月の写真に対するイメージや想像をドッカンドッカン覆す美麗な写真がなんと129点も掲載されている。NASAはこんなにステキな写真をずっと隠し持っていたのだ。この写真集は、大事に保管されていたオリジナルのフィルムをプリントしたものなので、とにかく綺麗で。うつくしい。

ロケットの打ち上げ、上空からの月面、着陸後の月面活動、そして月面から地球を望み、離陸、地球への帰還、すべてのシーンが大迫力で展開される。もう、すべてのページで目を剥く事間違いなし。あれこれ説明がついているけど、まずは写真だけじっくり眺めてみてほしい。写真だけでアポロ計画という偉大なる神話のすべてが理解できる。

ひさしぶりーなんて気持ちで開いたのに、アンディウィアーの小説そっちのけで見入ってしまった。

上記リンクでは凄い金額がでているけど、中古とか、日本語版だとお手軽価格でマーケットプレイスに出ている。私がもっているのは英語版だったので、そちらをリンクしています。

どうやら日本語版だと小さいサイズの版もあるようだけど、是非、大型の方の版を手にいれてほしいな。

2019年の夏、NASAから凄い発表があった、なんと2024年までに人類を再び月に送るという計画だ。プロジェクト名は「アルテミス」。2028年には月や月上空に宇宙飛行士を常駐させ、そこから火星を目指す壮大な計画。楽しみでならない。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。