マネジメントを学ぶ理由 エピソード11
見慣れない街並み
ありがたい事に、電車は動いていた。安全確認をしながらのため、速度を落としての運行だった。車内は空いていたので、座ることができた。座って間もなく、強烈な眠気がやってきた。うとうとしながら、何回かくず折れそうになり、乗り換え駅よりだいぶ手前から乗り過ごさないようにと、僕は立つことにした。立って窓の外を見ていると、見慣れているはずの景色に違和感を覚えずにいられなかった――。倒れているもの、壊れたもの、落下したものが見え衝撃的だった。道路に亀裂が入ったところもある。見たことのない光景は、睡魔を一時的に封じるのに功を奏した。
危険個所のチェック
地元の駅につき、家路を急ぐつもりが――。まだ明るい時間の帰宅だったので、少しだけ遠回りにだが、気になる危険個所の偵察をしていくことにした。僕が気にしている危険個所の一つは、空き家である。かなり前から崩れそうになっているのだ。この地震でどうなっているか気になったのだ。近くには幼稚園もある――。
行ってみると崩れそうな空き家は、ブロック塀に亀裂が入りながらも、今にも崩れそうな空き家として存在していた。そこから少し行った山側の公園で、地盤の緩そうなところが、小さいながら土砂が崩れていた。この辺りの目に見える被害はそのくらいだった――。これ、幸いである。
無事に帰宅
時刻は17時を過ぎていた。帰宅すると、娘も元気そうにしていた。ちょうど下校するときに、校庭に出たところで地震があり、先生が飛び出してきて生徒たちをその場に据え置いたとのことだった。
あの時に電話が繋がったことで、娘を迎えに行けたという事や、夜は停電でランプにもなる非常用の懐中電灯の最初の電池を使い切った事など、妻の熱い語りに安堵した。忙しさにパニックを起こしていなかったからだ。
話を聞きながら早めの夕飯を済ませ、ニュースをチェックしたときに、これから起こりそうな混乱が頭を過った――。
2通の手紙
僕は、一度横になって体力を回復させてから、深夜に手紙を2通書いた。妻と娘のそれぞれに宛てて、これから起こりうる混乱についてメッセージを綴った。それは、物流の停滞と買い占めによるパニックである。たとえ分かっていても、不安と衝動に駆られる事が予測された。
大衆心理がそうさせるのも分かっていた。だとしたら、尚更の事である。必要不可欠なもの以外は買わないように禁じる手紙。
買い溜めを禁止とする手紙である。
妻への手紙の主軸は、本屋も入っている近所の大型スーパーや大手ドラッグストアでの買い占めの光景は子供に見せない様にする工夫をすることと、自分自身がその不安と衝動に乗ったら、心が貧しくなり、不安の度に買い溜めする様になる事を伝えた。
娘には、お母さんの言う事をよく聞いて、買い物を楽しくできるようにする事を伝えたのだ――。
後日談
後日談として妻から聞いたのだが、スーパーが営業再開してしばらくは入場規制がかかり、買い物時間には不自由していたが、人々が殺気立って入店する様を冷静に見守り、焦らずに居れば、必要なものは必要な時に買える奇跡的なことが続き不自由しなかったとのことだった――。
おまけとして、通電直後に妻は不安に駆られ、少々高めの値段だったが、ネットでペットボトルの水を10本ほど買ってしまっていた。物流が滞り、配達されたのはだいぶ後の事だった――。
次回はいよいよ新部署始動!
つづく
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