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「ダミアンが動かない理由」~2021.7.2 AFCチャンピオンズリーグ 第3節 川崎フロンターレ×ユナイテッド・シティFC レビュー

スタメンはこちら。

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レビュー

■マッチアップの優劣で整った形

 EUROもコパアメリカも大詰めなので、今回はさらっとレビューです。ご了承くださいませ。

 ユナイテッド・シティFCは前節は大邱FCに7-0で敗戦。しかしながら1失点目は26分という比較的遅い時間。ということで、ひとつ踏み外して大量失点につながってしまった様子がうかがえる。試合は1秒も見てないのでわからないけども。

 川崎相手にもユナイテッド・シティは立ち上がりから善戦する。要因としてはACLにおいて川崎が苦戦した大邱と同じく、ボール保持の部分で工夫がなされていたからである。ユナイテッド・シティが狙い目にしていたのは左サイド。家長の裏からボールをつなぐ形である。

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 ユナイテッド・シティのベースポジションは5-4-1だが、攻撃に転じた場合は左のシャドーのシュレックが低い位置まで降り、逆サイドのWGが高い位置を取る。したがってオットとマラニョンの2トップっぽい形で形成されることになった。

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 家長の裏を取られることの何がまずいかと言えば、誰がこのスペースをケアすればいいかがあいまいだから。家長が戻らないのならば、基本的にはIHかSBの2択である。おそらくこの日はSBの山根が出ていくのは基本線だったように思うが、そうなると後方のジェジエウは広大なスペースを1人でカバーしなくてはいけないということになる。

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 したがって迷いが出ていた時間帯においてはユナイテッド・シティの左サイド主体のつなぎは非常に機能していたように思う。だが、川崎が抱えていたこのユナイテッド・シティの大外で起点を作られてしまう問題は時間が解決してくれた。なぜなら、ジェジエウが対面するシュレック相手に完勝したから。空中戦はもちろん、地上戦でもシュレックにやりたいことをやらせない。

 これで川崎は完全に整理がついた。WBの嶺岸には山根が出ていく、そして後方のシュレックはジェジエウに任せる。したがって、ユナイテッド・シティがボールの落ち着かせどころとして活用していたWBの嶺岸の立ち位置は、川崎に寄って時間と共に封鎖された。

 前半の終盤に見られた降りるシュレックを利用して、入れ替わるように裏に抜ける嶺岸を狙うユナイテッド・シティの形は面白かったが、このトライは限定的。ユナイテッド・シティは手詰まりになる。これが時間と共に川崎が主導権を取り戻すことができた理由だと思う。

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■ダミアンは動かない

 攻撃においても時間をかけることで川崎は解決策を見出した印象。ユナイテッド・シティは5-4-1のブロックで川崎を迎え撃つ。両シャドーがハーフスペースを埋めるようにナローに絞るのが特徴でIHがハーフスペースに落ちた際や谷口やジェジエウからのハーフスペースへの楔を入れることを防ぐためだろう。

 したがって川崎はブロックを崩すのに一工夫を施す必要があった。ポイントとなったのは3つ。裏への意識を見せた家長、長いボールを操った谷口、そしてレアンドロ・ダミアンのポストである。

①裏への意識を見せた家長

 ユナイテッド・シティの2列目がハーフスペースを閉じることに専念しているということは、大外が手薄になっているということである。大外で起点を作り相手のWBを引き寄せ、その裏に抜ける動きというのが効果的だった。

 相手が空けたスペースに旋回しながら突撃する動きというのはACLを通じて右サイドの方が上手なように思う。この試合では特に顕著だったのは、家長の裏に抜ける意識である。献身的なオフザボールの意識は家長がどれだけこのコンペティションに丁寧に向き合っているかをあらわしているかのよう。外に穴をあけて、その穴を連鎖的につく動きでラインを下げることを重視していた。

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②長いボールを操る谷口

 原理としては①と同じ。そして、よりシンプルである。前線が裏に抜ける動きを見せることで最終ラインを押し下げる意識を持っている。狭いスペースを崩すだけでは難しいので、個人の判断でいつもより早い時間帯から裏に抜けるボールを出していたように思う。

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③レアンドロ・ダミアンのポスト

 ①と②の結果でこの③の選択肢が拓けるというイメージである。相手のラインを下げることで空くのが、ユナイテッド・シティのDF-MF間である。①や②の選択肢でこのスペースを空けると、ライン間で呼吸ができるスペースが空くようになる。

 ここからレアンドロ・ダミアンのポストを活用し、川崎は前進するようになる。いつもの川崎だったら、ダミアンは比較的サイドに流れる頻度も高い。しかし、この日のダミアンは中央に常駐する頻度が高かった。

 日頃、サイドに流れる理由としては三笘との距離感の意識だろう。彼を前に向かせることがこのプレーの目的なので、サイドに流れても良い。問題となるのは三笘との距離感である。

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 しかし、この日の狙いは三笘を前に向かせることではない。ユナイテッド・シティの守備の特徴としては、①や②の選択肢を取った時にライン間が空くこと。そして、後方からライン間に突撃する選手たちに対して動き出しがなく、ケアが非常に甘いことである。

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 したがって、ダミアンのポストの目的は三笘を前に向かせることではなく、中央のDF-MF間で前を向く選手を作ることである。これだけダイレクトにゴールを視野に入れることができる位置ならば、三笘に限らず川崎の選手ならば誰でもゴールに向かうことができるということだろう。

 それでも1点目を取るまでにはこのやり方に特化した選手を使いたかったはず。IHにスモールスペースでのボールの取り扱いが特に優れているであろう大島と橘田を起用したのはこういった判断基準かもしれない。特に橘田は入り込んでのフィニッシュを繰り返してチャンスを量産。ハットトリックを決めたのはご存じの通り。

 大島の得点シーンにおいては多くの選手が縦に動きながら受けることでギャップを作るのに対して、横に流れながらミドルシュートのコースを作る。裏に抜ける動きは川崎のIHはみんなうまいけど、この横に動きながらコースを作る動きは大島が一番うまいように思う。

 ①、②の動きでダミアンのポストを受けるスペースを空けることで攻撃のメカニズムを完成させる。それがこの試合のミッションであり、達成することで川崎は大量8得点を重ねることができた試合だった。余談だけど今回の遠征で三笘が内側に入ってくる頻度がやたら少ないのもACL仕様なのか、改善意識なのかどっちだろう。

あとがき

 守備ではユナイテッド・シティのやり方に対応したり、攻撃ではユナイテッド・シティの弱みに付け込んだり、相手チームを見ながらどう崩していくかという近年の川崎の強みはデータが少ないアジア勢を相手に回しても同じ。いい意味で自分たちのやり方にこだわらないスタンスはプラスに働くだろう。

 異国の地で中2日×6試合という日程的には非常にハードではある。だが、リーグ戦に比べて力の差がある相手に対して、ACLの方が色々試せている。そういった現状はいいのかよくわからないのだけど、そういう環境が目の前にあるのならば活用するほかないだろう。

 これまではACLのために戦ってきたが、今度はJでの戦い方を広げるために、ACLで多くの手法や選手を試すことで、今回の遠征の経験をさらなる勝ち星に還元したいところである。

今日のオススメ

 三笘のゴールをアシストした小塚。これから少しずつですね。

見返しメモ

試合結果
2021.7.2
AFC Champions League グループステージ
第3節
川崎フロンターレ 8-0 ユナイテッド・シティ
ロコモティフ・スタジアム
【得点者】
川崎:34' 82' 三笘薫, 42' 大島僚太, 50' レアンドロ・ダミアン, 56' 65' 70' 橘田健人, 90+2' 脇坂泰斗
主審:ハサン・アクラニ


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アーセナル、川崎フロンターレを中心にJリーグと欧州サッカーのマッチレビューを書く。乃木坂46の推しメンは西野七瀬。