令和の政治

いよいよ2019年も幕を閉じようとしている。今年は元号が変わったり、2度の大きな台風被害があったり、と様々な事があった。皆さん個人個人にも各々の想い出があったりするだろう。
 日本の政治は相変わらずの安倍内閣が牛耳っている状態だ。
 そんな中統合型リゾート、通称IR事業を巡り、中国企業500ドットコムから現金(賄賂)を受け取っていたとして、自民党の秋元司議員が逮捕された。私はこれをカジノ汚職事件、と呼ぶことにしている。この事件に関しては自公、そして日本維新の会がそれこそ国の成長戦略、と言わんばかりに力を入れていたのでこの容疑がどのレベルの議員の首まで辿り着くのか非常に注目している。と同時に私はこの流れは平成が始まった頃の政治の動きとよく似ているな、と思った。
 平成元年の1989年といえば日本に消費税が導入された年でもあり、そして翌1990年にかけてリクルートコスモス社の未公開株が大物与党議員らに賄賂として流されていた『リクルート事件』があった。そして今令和元年2019年、消費税が10%にあがり、今回のカジノ汚職事件が起きた。この流れは停滞していた政治を大きく動かすきっかけになるかもしれない。
 ただ当時と今とで決定的に違うのは睨みを利かせる野党の絶対数が少ない、という事だ。当時は参院で日本社会党が多数を占めていたが、今野党は衆参で少数政党が更に細切れで乱立している状態で、野党の声が与党の大きな声にかき消されている状態だ。加えて当時はそのリクルート事件を受けて自民党の若手議員を中心に政治腐敗を糾弾し政官財の癒着の打破を唱えた『ユートピア政治研究会』が立ち上がりこれが後の『新党さきがけ』に繋がり、非自民政権の誕生のきっかけになった。しかし今の所自民党内部からそのような自浄作用を起こす動きは見られていない。
 ここ何年かでやたら『決める政治』『決められる政治』という言葉が新聞メディアを踊り、首相の強いリーダーシップ的なものが持て囃されている。しかし野党のすごい小さな声を聞こえないフリをして話し合いをした、というアリバイだけ作り、多数決で決定するのは本当の『決める政治』ではない。
 そんな中与党は来年の通常国会から与野党の質問時間を5:5にしようと目論んでいるそうだ。これは国会を愚弄し、日本の政治を薄汚れた独裁に変えていくものだ、と断固反対をする。
 これを読まれている希少な読者の中には5:5なら平等でいいんじゃないの?と思っている人もいるかもしれない。しかしこれを額面通り捉えると跳んでもない事になる。
 普通法案というのはその時に政権を担当し、予算を握っている党内で例えばAという法案について様々な議論をし、出来上がったものを国の最高法規である国会にあげ、今度は野党を交えて不備があるかを見ていくのが常だ。つまり与党では国会にあげる前段階で「これについてはどうだ?」とかの議論がおこなわれている事になる。それに加えて国会での質問時間を5:5にする、という事は実質与党8:2野党という事になり、国民の知る権利から大きく逸脱し、あたかも与党の声(だけ)が真実とばかりに国民の目に映る危険性がある。
 安倍首相は以前野党議員に対して「私は立法府の長」というトンデモ発言をしたが、ひょっとしたら本気でそう思っているのかもしれない、とこの動きを見て思ったりもする。つまり今国会の中で最もスポットライトを浴びてるのは自分でその自分がいつまでも光輝くように国会の中を自分を賛美する声で埋めてしまおうと。
 安倍政権になってからの約7年、様々な事が閣議決定という名の元の密室で事後報告的に決められ、歩き慣れていた路は今や荒れ果てた状態になってしまった。一刻も早くこの内閣に退場をしていただき、その路を舗装する事をしてもらいたい。

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