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10 2項対立で考える

男と女、天と地、都会と地方、山と海、公立と私立、生物と無生物、喜劇と悲劇……。このように、世の中の存在や概念といったものは、その多くが対になっています。ここから、私たちが世界をとらえる場合、往々にして2つのものを対立させて理解していることが分かります。これは、物事を考える際にも有効な考え方だといえるでしょう。まず、与えられた状況や条件の中から、対立する2つの要素を抜き出します。そのうえで、それらを両端に置いて、軸を設定すれば、ひとつの視点が生まれるわけです。

例えば、コンビニの将来を考えるときに想定できる軸を挙げてみましょう。
 
 品揃えを専門特化する――品揃えの幅広さを維持する
 食品を強化する――サービスの予約・提供を強化する
 焼きたてパンなど店内キッチンを充実する――生鮮食品のコーナーを拡充する
 個々の店ごとに内装・戦略を変える――すべての店の統一感を強める
 店内に大型ディスプレイを備えるなど情報武装を強化する――総菜を手作りするなど人肌戦略を強める
 若いアルバイトに固執する――年配のアルバイトに切り替えていく

いかがですか、こうして2項対立のかたちで図式化すると、とっかかりが見えてきやすいのではないでしょうか。なかには双方を採用すればいいというものもあるでしょう。弁証法ではありませんが、対立する2項を止揚して、もっと高次の方策を思いつくこともあるかもしれません

しかし、手っ取り早く、日常的に使えるのは、2項の対立を組み合わせること。大切だと思われる軸を2つほど選んで、縦軸と横軸に置いてみる。すると、4つの象限に分かれます。それを図にしてみましょう。そうすると、どの象限をめざすのかが明確になり、それを検討してレポートにまとめれば、会議のたたき台として使えるはずです。経営学やマーケティングの教科書には、こうした2軸の組み合わせによる分析が多いですよね。といっても、注意が必要。誰かから提案を受けたときに、つい、4つの象限に分かれた図を見せられると、すべての状況が含まれているように思ってしまうのですが、そうではないことを覚えておきましょう。

どうして、その2つの軸を組み合わせたのかといえば、あまり深い理由はないのかも知れません。分析の目的に合うものを選んできた恣意的なもの。もちろん、だからといって、ダメということではありません。自分が考えたいことに適合する要素を抜き出してきて、思考プロセスを構成することは必要なことです。大切なのは、いくつもの対立軸の組み合わせを試してみること。最初に思いついたものよりも、もっと説明をしやすい図があるかも知れません。考える部品は、たくさんあったほうがいい。使える道具はみんな使って、いろいろな概念を目の前に並べてみることが良いのです。冷蔵庫から、食材を出してきて、何を作ろうかと考えるようなもの。食材は、色々とあった方がアイデアは広がります。

以上は、あくまでも考えるための方便について。毎日を生きること自体は、相矛盾するかも知れないものをそのままのみ込んで、曖昧さを受け入れながら、ゆったりと構えるのが賢くて、へこたれないコツかも知れません。


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