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コロナ後の人間関係は?

 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会に大きな影響を与えている。終息の見通しは不透明だが、世界的に「コロナ以後」の議論も盛んである。ここでは、求心力と遠心力という観点から、今後、人々の関係がどう変化していくかを考えてみよう。
 私たちの人間関係は、物理的距離と心理的距離によって分類できる(図参照)。物理的距離も心理的距離も近い関係(A)は、自分を含む同居家族。職場の同僚や友人 (B)は、物理的にはやや遠い存在だが、心理的には近い。近所の知人や通勤電車の乗客(C)は、物理的に近くても、心理的にはやや遠い存在だ。世の中や世界の人々(D)は、通常、物理的にも心理的にも遠く感じられる。
 まず、Aの関係だが、在宅時間が増え、結びつきを強めた家族が多い。他方では「コロナ離婚」という流行語のように心が離れる夫婦もいる。危機に立ち向かう求心力と、ストレスから来る遠心力の双方が働いている。今後は、経済的な厳しさを共に乗り切ろうという求心力と、困窮から来る家庭崩壊の遠心力がせめぎ合う。Bの関係である同僚や友人は、久しぶりに会うことで、親しさが増し求心力は強まる。逆に「オンラインで会えば足りる」という遠心力が勝つ可能性もある。Cの関係については、リスクに備えて、隣人と真剣に協力し合う求心力が強まる。公共交通の乗客とは、感染リスクが低減した後も、近寄りたくないという遠心力が働く。Dの世の中や世界の人々との関係では、皆で困難をくぐり抜けた高揚感から求心力が高まる。命の大切さを痛切に感じた人々の心理的距離は近くなり、感動を呼ぶ数多くの芸術作品が生まれるはずだ。他方では、反グローバル主義のブロック化という遠心力が強まる。ますます顕在化する格差は人々の心理的距離を広げる可能性が高い。加えて「コロナ以後」の到来が遅れて、「コロナと共に」の期間が長期化すれば、国際協調による復興への求心力よりも、自国ファーストの遠心力が強まるだろう。 (発想コンサルタント・関沢英彦) 

(日経産業新聞20.5.11に関沢が書いたコラムです) 

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