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女性をめぐる話題

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記事一覧

男女逆転大奥の設定について 「男子激減で逆ハーレム&女子相続が主流に」はあり得る?

男女逆転大奥の設定について 「男子激減で逆ハーレム&女子相続が主流に」はあり得る?

*写真は、徳川家の「御三家」の一つ、尾張徳川家にゆかりのある名古屋城

男女逆転大奥の漫画がドラマ化されました。
江戸時代に男子ばかりが感染する病気が流行り、日本社会では将軍家含め女子相続が当たり前になるという話です。私も漫画で途中まで読んでみたのですが、非常に面白いストーリーです。

しかし、実際には、男子が減ることで「逆ハーレム」「女子が家督を継ぐように」、という流れは考えにくいのではないでし

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【「選択肢を増やす」ことや「個人の自由な選択」について】

近年「選択肢を増や」すことは良いことであるという風潮が醸成されつつあり、「個人」が「自由に選択」できるようになるべきだと主張する人が増えてきた。特に選択的夫婦別姓や同性婚など、家族の在り方に関わる話題と関連付けられて語られることが多い。

しかし、「選択肢を増やすこと」や「自由な選択」については、色々と考えされられることが多い。

同じ人でも自分の選択について考えが変わらないとは限らない。自分が置

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ロシアの対独戦勝記念日を前に、日本でもよく考えられて欲しいこと

ロシアの対独戦勝記念日を前に、日本でもよく考えられて欲しいこと

 明日5月9日は、ロシアが対独戦勝記念日として祝う日で、ソ連が第二次世界大戦においてナチスドイツに勝利した記念日だ。ソ連の継承国を自称するロシアは、「ソ連はファシズムの解放者」だと認識してきたし、現在でもそう考えるロシア人も少なくない。しかし、ソ連はヨーロッパの一部を占領して圧政を敷いたりソ連兵による性暴力を許したりしてきた。こうした経緯から「ソ連が解放者」であるという歴史観を受け入れられない人や

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ゼレンスキー夫妻が「夫婦別姓」に見える理由

 ウクライナ侵攻から約1ヶ月が経ちました。皮肉なことに、私がnoteで取り上げてきたロシアやウクライナがこれ程世界中で注目されたことはありません。ゼレンスキー(ウクライナ語読み:ゼレンシキー)大統領を知らない人も、もはや存在しないでしょう。

 ゼレンスキー大統領のみならず、その夫人であるオレナ・ゼレンスカ氏もウクライナ国民を勇気づけようと奮闘しています。

 記事を見て気になった人もいるかもしれ

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ジェンダーとフランス革命とロシア革命

 内閣府の「共同参画」1月号が話題になっています。

 表紙には、19世紀のフランス革命前後の時代を描いた池田理代子氏による少女漫画「ベルサイユのばら」の主人公であるオスカルが登場し、「フランス革命の次は日本のジェンダー革命だ!」と叫んでいます。

 見ていて色々と気になったことがありました。

 フランス革命の結果、フランスでは「人権」や「平等」という概念が尊重されるようになりましたが、男女の平

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北条政子の名前について

北条政子の名前について

 大河ドラマの中で、北条政子が自身を「政子」と名乗るシーンがありました。しかし、彼女が「政子」と名乗るようになったのは、晩年です。それまでなんと呼ばれていたかは、実ははっきりしていないのです。↓下の記事参照

 なお、彼女が「北条」という苗字を名乗っていたかどうかも不明です。当時、姓と苗字は別の物でした。姓が父方の血統を表し一生変わらないのに対し、苗字は家を表す名前で、夫婦やその子と共有することも

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人は未来を予測できないし、同じ人でも考え方は変わり得るー夫婦別姓の文脈でー

選択的夫婦別姓の議論になると、選択的夫婦別姓に賛成する人から、離婚した時のことを考えて一生同じ名前でいたいからという主張を聞くことがあります。

 しかし、この考え方には落とし穴があります。

 結婚改姓した人の離婚後の氏については、既に選択の自由が存在します。婚氏続称とは、結婚改姓した人が離婚した際も改姓後の氏を名乗り続けることができる制度です。婚氏続称すれば、旧姓に改姓するための手間を省くこ

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海外では通称使用という考え方は通用しないのか?

 選択的夫婦別姓の話題になると、海外では通称使用は通用しないという意見が出てきます。

 しかし、本名以外に通称を公的な場で使える国は日本以外にも存在します。

 フランスは夫婦別姓ですが、配偶者の姓や複合姓、母の姓を通称として名乗れます。

*下の過去記事もご覧ください。

 ベルギーもフランスの影響を受けて夫婦別姓ですが、通称として夫の姓を名乗れるようです。↓下の記事参考
*ただし、現在では廃

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低体重児について日本に勧告していた国連

 国連から日本政府への勧告というと、女子差別撤廃委員会による夫婦同氏制度や「慰安婦」問題に対するものをイメージする人も少なくないでしょう。

 先日、児童の権利委員会による勧告を見ていたら、意外なことが分かりました。

2019年の、児童の権利委員会による「日本の第4回・第5回政府報告に関する総括所見」では、次のようなことが書かれていました。

33. 到達可能な最高水準の健康を享受する児童の権

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夫婦別姓と共産主義あるいは社会主義は関係あるのか?

*最初に:共産主義と社会主義の使い分けについてはこちらを。この記事では、参考文献がある場合はそちらの記述に沿った表現をしています。

 選択的夫婦別姓の議論になると、夫婦別姓を共産主義(社会主義のことも)と関連づける意見が出てきます。

 井田氏のように関係を否定する人は少なくありませんが、歴史的な経緯を見ると、主に夫婦同姓文化圏において、夫婦別姓を認めようという動きと共産主義や社会主義は関係があ

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地方で可決された選択的夫婦別姓の意見書について 賛成派が多数派って本当?

 選択的夫婦別姓を求めるために各自治体の議会に提出され、可決された意見書を見ていると、気になる点がありました。

 なんと、平成29年の内閣府の世論調査の結果のうち、選択的夫婦別姓に賛成している人と通称使用拡大に賛成している人を合計して、選択的夫婦別姓に賛成している人が多数派とした意見書を使っている地方議会が少なくないことが判明しました。

例えば…

江戸川区

平成30年2月に内閣府が公表した

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皇室典範についての女子差別撤廃委員会の反応

 2016年の国連女子差別撤廃委員会の最終報告の当初案では、皇室典範で男系男子にのみ皇位継承権が認められていることに対して皇室典範の改正を求めていたようですが、日本側が抗議して削除させました。

 しかし、今年令和3年9月の女子差別撤廃委員会に対する日本国政府による第9回目の報告では、次のようなやり取りが行われていました。

女性に対する差別の定義及び法的枠組み

委員会側の質問

問2 前回の最

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中国はずっと夫婦別姓だったのか?

中国はずっと夫婦別姓だったのか?

*写真は台湾です。 

 先日、中国の夫婦の姓について調べていたところ、衝撃の事実が分かりました。

 中国では伝統的に「宗族制度」と呼ばれる考え方に基づいて夫婦別姓であり、子は父の姓を引き継ぎます。同じ姓の人は結婚してはいけないという伝統もありました。

 しかし、現在の中華人民共和国が成立する前の中華民国時代には、そうでない時期もあったそうです。

 なんと、女性は結婚すると、男性の姓を自身の

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フランスの夫婦の姓の歴史

フランスの夫婦の姓の歴史

 先日、フランスでは一律夫婦別姓である一方、通称として夫や母、複合姓が使えるという話をしました。少なくともフランス革命後の18世紀末からフランスは夫婦別姓だったようです。↓参考

 しかし、これを聞いた当初、一瞬不思議に思ったことがありました。

 18世紀末以降、つまりフランス革命後のフランスを舞台にした作品には、夫婦同姓であるかのようなケースが登場するからです。

 例えば、19世紀のフランス

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