シンディローパー、デッドオアアライブ、ベイシティローラーズなど楽屋こぼれ話

シンディローパー
デッドオアアライブ
ベイシティローラーズ 
ドナサマー
シャディ
マンハッタントランスファー

番外編
フリオ・イグレシアス 
白井貴子

すべて80年代半ば、名古屋です。
私は学生アルバイトとして楽屋で、当時「外タレ」と呼ばれた方々の雑用係をしていました。
上記の方々は特に印象に残っているので、当時の雇い主は定年退職していると勝手に判断し、書くことにしました!
時給500円、交通費無し、連絡は前夜のこともありました。
雇い主はステージ設営に行くので楽屋では日本人、私一人でした。

シンディローパー

「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」等のヒット曲を独特の華やかなビジュアルで歌い、踊っていた彼女、心底、謙虚で、ファン思い、優しい方。

その日の名古屋公演が日本ツアー最後の日だったので、ステージ後、スタッフ全員、30人くらい?が楽屋に集まりました。
紙コップが配られ、全員に飲み物(アルコール無し)を注ぐ、というとき、末端の私の仕事だ、と思い私が動こうとしたら遠くにいたシンディローパーがジェスチャーで私を止めて、自分で、一人一人に「ありがとう」を言いながら注ぎました。
一番端にいた私にさえ来てくれたときの感動は忘れられません。
もちろん、どんちゃん騒ぎなどなく、市の施設なので元通りにする作業に、全員、すぐにかかりました。
そのとき私は思い出したのです。
感動で忘れていたこと!
ステージが始まる前、楽屋に近い女子トイレに、花束を持った高校生の女の子が二人、隠れていたのです。
私はもちろん、わざと見逃しました。
(雇い主さん、時効よね?)
私はそのことをシンディローパーに言いました、そしたら!
彼女が「どこ?連れて行って!」
で、そのトイレに『走って』行ったのです。
シンディローパーが、個室を一個一個、覗き込み(元々ドアは全部、開けっ放しでしたが)、女子高生達を探しました。
が、誰も・・
申し訳なさそうな、残念そうな、シンディローパーの表情、本当に、ファンを大切にしてるんだーーと、新たな感動でした。
あのときの女の子たちにこのブログが届くといいのですが・・

デッドオアアライブ

公演の最中は私一人で楽屋の整理整頓、のはず。
でも散らかしっぱなしのタレントもローディも、一人もいませんでした。(誰の公演でも)
だから毎回、ステージから聞こえる音に耳を澄ませていたのに今回は、雇い主が走って来ました。
「ピートバーンズがTバック履いてる!凄い!陰から見ていい、こっち!」

大音量の中、機材の向こうに見えた、美しい後ろ姿、美しいおけつ。
「ユー・スピン・ミー・アラウンド」のイントロと共にマイクを持っていない方の腕を高く挙げ、音楽に合わせ回転し始める。
国際展示場、満場の会場も興奮状態。
ウォーっていう、男性観客の低い絶叫コーラスがステージに大波で押し寄せました。
女性客じゃない、男性客がこんなに、しかも何千人?もの男性が、彼に喜んでいるっていうのも大発見な感覚でした。
観客席にも行ったのですが、見える範囲、男性ばかり。

「ビジュアルの音楽が好きなのは女で男は質」と『発信』する男性が70年代に多かったのですが、私がチケット購入して行ったキッスもクィーンも、半分は(もっと?)男性のお客さんでした。

ピートバーンズ、本当に、全身、お綺麗な方。
楽屋は彼専用の小部屋に籠もっていたので私がそれ以上、近くで鑑賞することは出来ませんせした。

ベイシティローラーズ

「サタデー・ナイト」等のヒットからだいぶ経っていましたが客席は埋まっていました。
雇い主が「レスリーマッコーエンの奥さん、日本人だから。楽屋入るけど気にしてないで。それから牛乳はパットマッグリン用ね。好きなんだって」と言い残し表に去りました。

そして日本人女性が威風堂々、入ってきました。BCRよりもロックンロールな衣装で。
私は圧倒され近寄れませんでした。

雇い主のお言葉を思い出し、クーラーボックスを確認。
他のタレントのときには見たことが無い飲み物、牛乳パックが1本。
アルファベットはどこにもない。
これじゃわからんな、と思ったのでパットマッグリンに「これ、ミルクです。あなたのためです。」って言いました。

牛乳パックの向こうに立つパットマッグリン、お化粧前なのに肌が白陶磁器のように、キメが見えないほど透明。
頬がうっすらピンク、まつ毛が長――くて上下にカール、身長165無いかも?
きゃしゃで、お人形のよう。
あの頃、彼は何歳だったんだろ?

来日中はプロだけに囲まれているからか、庶民の私に目を輝かせて喜んで、「OOホテルのOOO号室にいるんだ、来てよ、ね?」
(私は平顔、平胸、団子っ鼻)
こ、この人(元)スターじゃなかったっけ?と絶句してるうちも子供のように無邪気な笑顔でホテル名と部屋番号を繰り返す。
「ファンが怒るよ」って答えたら「わかんないよー」って言いながら少女のような愛くるしい仕草。
「私ボーイフレンドいるし」(片思いで相手にされて無かったけど)

クィーンの映画を見て思い出しました。
あのときのパットマッグリン、「おしゃべり相手」が欲しかったんだ。

ドナサマー

着替えの小部屋の床がコンクリートだったので、雇い主は50センチ四方くらいの畳を置き、いつものように去りました。
ドナサマーが楽屋入りし、小部屋に直行。
直ぐに飛び出して私に走って来ました。(女は私しかいなかった)
「床に邪魔なものがある!着替えできない!」
なんだか、意地悪されたかのような表情。
もちろん、直ぐにどかしました。
「着替えるときに裸足じゃ冷たいからマイボスが置いた」って言ったのですが「なんで?邪魔ー」

もしかしたら、白人社会でいつも嫌な目に合っていたんだろうか…

シャディ

公演の後、私に「この灰皿、欲しいんだけど」
どこにでもある安っぽい銀色のUFOみたいなアレ。

市の施設の備品だから雇い主に聞きに行きました。
撤収作業で大忙し、困った顔で「一個ね、内緒ね」
シャディにそのまま伝えると、嬉しそうに、大事そうに、一個、持って帰りました。

名古屋市に税金を納めていた方、ごめんなさい!

歌い方のとおり、おしゃれけだるいソフトな方。
顔 (頭)、ちっちゃかった。

マンハッタントランスファー

客席の両側、壁の向こう側に通路がある会場でした。
メンバー4人、2人、2人に別れくつろぎながら楽屋を出ていきました。
私がお使いで一方の通路に入ったら向こうから2人が喋りながら歩いて来る。
反対側の通路からもう2人のちょっとした発声練習が聞こえました。
(観客席を挟んで)
こっちにいる2人がおしゃべりの延長のように向こう側の2人とハーモニー。
歩く速度は変えず。
発声練習とリハーサル。
マイク無し、建物全体に4人の声がリズミカルに響き渡っていました。

番外編

フリオイグレシアス

「ビギン・ザ・ビギン」や「ナタリー」がヒットしたスペイン人。
私は担当しなかったのですが、このアルバイトを紹介してくれた友人が担当。
彼女はスペイン語得意。
フリオイグレシアス、「日本に来て初めてスペイン語で話せた!」と言いながらハグしてチュー。
彼女はとっても美人。

白井貴子

大学生になる前、高校を卒業した後、ライブハウスでアルバイトをしていました。
大学に行けると思っていなかったので。
大勢の日本人ミュージシャンの真摯な態度に打たれたのですが、白井貴子は断トツでかっこよかったです。

ステージに出る前、バンドのイントロが始まるとその場で駆け足。
表情には物凄い緊張のオーラ。
音の高まりと共に両腕も陸上選手のように振って、駆け足続けながら全身でリズムを合わせ、絶妙なタイミングで飛び出していきました。
出たら、一瞬前までの緊張の表情はカケラもなく、お客さんのためにひたすらパワフル。

お客さんはテーブル(5メートル?くらいの細長い木製がステージに対し直角に2列)で飲んで食べて。
そのテーブルに白井貴子が飛び乗り、走り始めた!
お客さん大喜び。
従業員総出でグラスや皿を必死で片付けました。
片付けがエキサイティングって、この後、ありません。

この時の白井貴子さん駆け足、私がブログで書いたショート・ストーリーのモデルです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?