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SmartHR Blueカラーチップv1.0を制作したので知ってほしい

こんにちは! ごぶさたしております。SmartHRでデザインをやっている関口(sekig)です。

SmartHRコミュニケーションデザイングループ、通称「コムデ」でデザイン周辺のディレクション全般をやっているのですが、今回いろんな方に知ってほしい取り組みがあり筆をとりました。


みてくれ。 https://smarthr.design/basics/colors/printguideline/


カラーチップをつくった

今回、当社のコーポレートカラー SmartHR Blue の色を一定に保つための施策として、独自の「カラーチップ」を制作しました。

冒頭URLのデザインシステムに掲載されている内容がすべてなので、ぜひアクセスしてみてほしいです!
※注意点として、v1.0とあるようにこれは初期版、プロトタイプという位置付けになっています。日々進化中!

SmartHR Blueカラーチップv1.0を真俯瞰から撮った写真


カラーチップとは

デザイン制作・印刷業界などで使われるモノで、カラーチップと呼ばれる道具があります。
一般的に、印刷物やそれを印刷する際のインクなどの、色味の基準となる紙片。または、インキ会社がその用途で販売している「色見本帳」から切り離した部分のことをいいます。

SmartHR Blue カラーチップとは

私たちSmartHRのPrimary Brand Color(≒ コーポレートカラー)である「SmartHR Blue」の色味を安定・一貫させるための基準となるモノとして、今回制作した媒体です。


なぜカラーチップつくったの

色の難しさ

そもそも! 私たちのパーソナリティを体現する重要な要素、“メインカラー” でもあるSmartHR Blueなんですが、これがまあ〜、

色転びしやすい

んです。ぶっちゃけ。専門の方はお察しかなと思うのですが…維持がたいへんなんです!!! ほんとに!!

色というのはとても曖昧なもので、商業印刷では、紙の種類はもちろん一緒に印刷する絵柄や気候といったあらゆる要素で微細なトーンは意外なほど変化しますし、そもそも映像ディスプレイは高度な色合わせを個体レベルで実施しないと同じものが表示されません。色を表現する媒体は、それ以外にも多岐にわたりますよね。
こういったものの調整を、キャリブレーション(校正・入出力調整)と言ったりしてあらゆる分野でおこなわれていたりします。つまり相応のコストがかかります。

しかし、私たちにとってこれはとても大事な色なんです。

SmartHRのアイデンティティを表すうえでも重要な役割を担ってくれていて、その効果は大きなものです。
さまざまな検証を行っていますが、2022年現在、我々コムデではSmartHR Blueは維持し、大事に育てていくという方針を持っています。

この推進によって、私たちの存在を認知してもらったり、多様な活動を同じものとして認識してもらう、よりよいイメージと結びつけて思い出してもらう…といったことが、地道ではありますがより一歩、円滑になると考えています。

SmartHR Blueカラーチップのイメージ写真。縦横パターン状に並んでいる様子


だったらつくればいいじゃない

色という曖昧で定性的なものの「結果」をできるだけ固定・安定させるには、相対的な値(ここでいう数値管理)ではなく、コレ!という絶対指標で管理するのが、最終的には最も効率がいいんです。

つまり、物理で独自の色見本をつくることにしました。

デジタルの世界のみで完結するのであれば別ですが、結局はなんらかの機器や製造過程を経て、人間が知覚できるアナログな出力物(印刷物や映像モニターなど)に変換されてタッチポイントとなり、お客様をはじめとするあらゆるステイクホルダー(の目)に触れるものになります。

であれば、その入出力結果を適切にはかるモノサシがはっきりしていないと、私たちの意図した結果が得られません。すべてでそれを行うのはやりすぎですが、定性的なブランドアセットの中でもおそらく最も投資すべき資産として、Primary Brand Colorの安定性に取り組もう! ということで色見本(カラーチップ)制作をすることになりました。

基本的な用途は印刷物を想定していますが、人間の目で見るものすべてに応用可能だと考えています。

デザイナーさんであればDICやPANTONE、TOYOといった色見本帳は見たことがあるかもしれませんが、要はそれをオリジナルで作ろう! という試みです。


どうやってカラーチップつくったの

経緯とか

主体となって制作をリードしてくれたのは sayuriko さんです。

昨2021年冬頃、別プロジェクトとして進めていただいていたSmartHRの全制作物の棚卸し・分析プロジェクト(!)の成果から、「Primary Brand Colorの重要性仮説」をあらためて指摘してもらう機会がありました。そこからこの企画の着想が立ち上がっています。

カラーチップ・プロジェクトの企画書を画面キャプチャした画像
カラーチップを作りたいお気持ちだけが書かれた怪文書

今年になってから新メンバーの chihari さんもジョイン。本格的に始動し、制作が始まってからは一ヶ月かからないくらいのスピード感で今回の初期バージョンを社内展開まで持っていってくださったのは :sugoi: のひとことです。すごい。

完成したカラーチップをSmartHR社内で周知した際のSlack投稿の画面キャプチャ
スムースかつカジュアル〜な社内展開のようす in Slack


印刷製造とか

まず、株式会社平和紙業 西谷さんにご相談(いつもありがとうございます!)。そこから制作パートナーとして、株式会社サンコーさんに全面的にバックアップいただきました!

サンコーさんは特色インキを練る過程を機械制御で行うことができる設備とノウハウをお持ちです(つまり、正確な再生産が可能ということ…!)。
プリンティングディレクターさんと一緒に、SmartHR Blueインキ調色の開発と色再現、印刷に粘り強くお付き合いいただきました!

当初は、あくまでもプロトタイプとして「正確な色が刷られただけの色紙」を想定していました。

ですが製造工程上いずれにせよ製版は発生するので、検証も兼ねてある程度の図柄(文字やロゴ、罫線など)もあわせて印刷してみることに。

SmartHR Blueカラーチップの絵柄を解説した図。要素から各部の名称が示されている。ロゴ、スペック表示、罫線、欧文、太さ違いの本文、濃淡、色ベタ面など

ベタ面の面積比や物理サイズ、切り離してチップとして使う用途、色校正紙などにあてて見比べる用途などにも配慮し、仮説ベースで図案を作成。サンコーさん印刷工場にて立ち会いのもと、複数の用紙に印刷・断裁することで「SmartHRカラーチップ」を完成させました。


できました

できたものがこれです。みてくれ。

カラーチップフルセットの様子を撮った写真。銀色の封筒の上に複数枚のカラーチップの紙が並んでいる
フルセット
銀色の袋にすべてを入れた様子の写真
退色防止の遮光袋 & 折れ防止のクリアファイルにいれて、トリセツ付きで配布
封筒からカラーチップを少し引き出した状態の写真
手で扱う物理アイテムとして、図柄やサイズにも工夫を
用紙バリエーションすべてを撮影した写真。全部で7種類ある
基準となる紙以外にも、あり得る複数種の用紙パターンも制作。意思相通をしやすく
カラーチップを手に持ち、比較対象となる別の印刷物の上に置いて色味を比較している様子の写真
校正紙など、色を検証したいものと見比べたり
カラーチップを手に持ち、はさみで細く短冊状にカットしようとしている写真
自由に切り離して色を伝えるコミュニケーションツールとして


カラーチップどう使うの

詳細な使い方は、デザインシステムのウェブサイトに掲載されているのでぜひご覧ください!

デザインシステム上にドキュメント化されています

印刷ガイドライン | 色 | SmartHR Design System

社内外に共有し、色の認識を揃える
・常に共通のカラーチップを参照することで、社内外を問わず、関係者間で色の認識を揃えることができます。
・印刷データを入稿する際に、カラーチップを色見本として添付することで目指す色を正確に印刷会社に伝えることができます。
・カラーチップの一部を切り取って共有できます。

https://smarthr.design/basics/colors/printguideline/#h3-4

色校正の確認をする際に使用する
・色校正を確認する際に、カラーチップと比較しながら色合いを検証できます。

https://smarthr.design/basics/colors/printguideline/#h3-5


確実性のあるものをみんな共通で使う

カラーチップは、色が保証されたモノそのものです。「これが基準の色です」というターゲットなんですね。

  • コート紙(表面加工なし)バージョンを基準に色をジャッジ
    校正確認も明確・精確な基準を使ってチェックバック

  • 印刷会社さん、パートナーさんとの連携も
    物理で添付して(相手に渡して)、色の基準を確実に揃える

  • 退色防止のため銀色の封筒に入れて保管
    個別の環境によって、案外あっさり色は変わってしまう。できるだけ差が出ないようなセットにして配布

ちょっと飛躍しますが、ある意味エンジニアリングにおけるSSoT(Single Source of Truth)のようなものともいえそうです。


費用対効果の考え方

デザインの分野は定性領域でしょうか? それともビジネス貢献だから定量的?

答えはさておき、なんらかの施策・アクションには相応の「最適品質」がだいじだな〜と思っています。より良いものを作りたいですし、結果だれかに喜んでもらえたならなお嬉しい。

同時に、天井のない “最大化” を無意識に目指してしまうと、それが善意であれその先には地獄(いわゆるデスマ)が待っているかもしれません…!

デザイナーもどんな職種も、人間ですし生活者・労働者です。無理をしすぎてしまったり、悪意や自覚がなくとも他者を使い倒してしまったりすると、それは持続的ではありません。つかれちゃう。

今回お知らせしたかったことは「やべ〜ことやってるので見てほしいぜ!」という一点のみなんですが、この記事を書いていて「手法や規範にこだわらずに物事をリフレーミングし、ベストプラクティスよりベタープラクティス(造語)を意識し続けること」=「むりしない」、がだいじだな〜そうありたいな〜〜〜と感じた次第です。

カラーチップを一枚、両手に持って眺めている様子の写真。手から先が写っている

コレ見とけば大丈夫、ってシンプルですよね。


今日はいい天気ですね。お昼寝したい。
それではまた!



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写真:山城功也


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