続・時代劇レヴュー⑦:新選組!(2004年)、新選組!! 土方歳三 最期の一日(2006年)他

タイトル:新選組!

放送時期:2004年1月~12月(全四十九回)

放送局など:NHK

主演(役名):香取慎吾(近藤勇)

脚本:三谷幸喜


NHKが放送する所謂「大河ドラマ」の第四十三作で、新選組が正面から大河ドラマの題材として扱われた初の作品である。

物語は近藤勇を中心に、新選組の隊士達の生き様を青春群像的なタッチで描いたもので、元来が舞台演劇をフィールドとする三谷幸喜が脚本を手掛けただけに、近藤勇の人生における四十九日を描くと言うコンセプトで作られ、各話は特定の一日を舞台とするなど、従来の大河ドラマとは異質な構成が取られており、またナレーターが存在しない作品は、大河ドラマでは極めて珍しい。

またその作風も、コメディの脚本を多く手がけた三谷幸喜の作品だけに、従来の大河ドラマとはかなり異なった良く言えば軽快、悪く言えば軽薄なコメディタッチとなっており、一部ではさながらコントのような場面も見られた。

近藤勇が坂本龍馬や桂小五郎など、後に倒幕勢力となる人物達と親交を結んでいる描写があることなどから、放送開始直後より物議を醸し、史実との相違などを酷評するような意見もあったが、私が見る所、この程度の創作は過去の大河ドラマでも多かれ少なかれ見られるものであり(これ以上にひどい創作や史実無視などはざらにある)、おそらくこうした意見は史実がどうこうよりも、オールドファンからすると「大河ドラマらしからぬ」作品の雰囲気が言わせたものであろう(個人的には、作品そのものはそれなりに面白かったと思うが)。

香取慎吾演じる近藤勇は、従来時代劇の大御所のような重厚なキャストが当てられていた役だけに、特に新選組のオールドファンからはかなり反発を受けていたが、近藤の描き方自体は極めて古典的なもので、その人物像はかなり美化されていたように思う(なお、香取の近藤はオールドファンからの反発を受けた反面、三谷の軽妙な脚本と合わせて、特にそれまで大河ドラマとは縁遠かった若年層のファンを取り込むことに成功している)。


さて、この「新選組!」は、大河ドラマとしては初の続編が作られた作品である。

2006年の元日に放送された正月時代劇「新選組!! 土方歳三 最期の一日」がそれで、箱館戦争の最終局面における土方歳三の動向に焦点を当てて描いた作品である。

これは、「新選組!」が近藤を主人公としていることから、近藤の刑死で物語が終わっているため、主要キャストの一人であった土方の戦死まで描いて欲しいと言うリクエストに応えたものである。

ここでも物語は、箱館戦争の序盤から描かれるわけではなく、土方が戦死する日にスポットを当て、必要に応じて回想の形で前後の話を描いている点は「新選組!」と共通している。

土方役の山本耕史を始め、キャストはほぼ全員が「新選組!」のそれを引き継いでいるが、準主人公的な榎本武揚のみ「新選組!」で演じた草彅剛から片岡愛之助に変わっている(もっとも、草彅は香取の友情出演と言う形でワンシーンのみの出演であったため、実質的には「交替」と言うほどのものではないが)。

価値観の違いから対立する土方と榎本武揚が、最終的には心を通い合わせるという筋立ては、どこか1988年の日本テレビの年末時代劇「五稜郭」の影響を受けているように思われるが(三谷自身が時代劇好き、大河ドラマ好きを公言しているゆえか、彼の手掛ける歴史作品は随所に先行する作品からインスパイアを受けたような設定や、オマージュとも取れる描写が登場する)、物語中盤の土方と榎本の激論は、三谷脚本の本領と言うべき舞台演劇風の展開で見応え充分であった。

所々で本編に登場した隊士達が登場するものの、「蝦夷共和国」閣僚で登場する人物は榎本と大鳥圭介のみで(「新選組!」に登場していた永井尚志は除く)、その点は少し物足りなかったが、一時間半という放送時間の制約を考えると、この三人の動きに絞って物語を進めたのは妥当な判断かも知れず、そう言う意味では時間を生かし切った良い作品であったと言えるだろう。


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