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センター試験「世界史B」のまとめ 第1回 700万年前〜

センターに出たとこだけで、世界史をまとめる。

センター試験が廃止される」というニュースが報道されています。
 これはどういうことでしょうか?

 たしかにセンター試験は2019年度(2020年1月)の実施を最後に廃止されます。
 しかし、「センター試験に代わる試験が2020年度から導入される」と言ったほうがわかりやすいかと思われます。

 この「黒船」ともいわれる「大学入学共通テスト」(いわゆる「共通テスト」)は、従来のセンター試験よりも「思考力・判断力・表現力」が問われる試験内容となる見込みですが、詳細についてはわからない点も多く、現在の高校1年生は不安を隠せない状況であると思います。

 すでに2017年度・2018年度に試行調査が実施されており、2019年度(今年度)には確認試行調査が実施される見込みですが、すでに実施された試行問題を見てみると、出題の分野や方向性について大きな変化はないというのが現時点での実感です。

 出題方式については2017年度の問題については、駿台の講師もいうように、「一問一答的」な知識を「回りくどく」問い、出題者の意図を忖度(そんたく)して正解に導くような問題が少なくありませんでした。しかし、2018年度の問題については「一定の着眼点」に基づき「資料をよみとく」タイプの良問も少なくありませんでした。

 「何が出題されるか」ということは、「何が重要な事項であるか」ということの裏返しです。
 「歴史的に重要」と判断される事項には、出題側にも一定のコンセンサスがあります。

 「丸暗記」ではなくどのように歴史的な事象をみるか、どのような立場から歴史的な事情をみるか―そのようなことが、共通テストにおける「世界史」でも、従来のセンター試験における着眼点を踏襲しつつ、いっそう重要視されていくでしょう。

 だからこそ、従来のセンター試験「世界史」でどのような事項が問われてきたかという、「センター試験「世界史」の歴史」を今こそ確認しておくことには、それなりの意味があろうかと思います。

 世界史という学びのパッケージは、少数の受験利用者のためにだけ用意されているわけではありません。
 もっともっと、開かれたものであるべきです。
 そのためにこそ、「重要だから重要なんだ」「試験に出るから重要なんだ」という同義反復を、超え出る「答え」を発する必要があると考えるのです。

―と言いつつも、この企画では、わりと真面目なトーンでまとめていきたいと思います。問題の収録については、以下のような方針をとっています。

【凡例】 以下の本文中の【セH31】は、平成31年度のセンター試験本試験で出題された問題を指す。センター試験試行試験から平成31年度までのすべての問題を対象にして収録しています。 直接問うている事項だけではなく、「ひっかけ」として使用されている事項についても、問題を解くために必要な事項としてカウントしています。 

目次

 1 約700万年前~  
 2 前12000年~ 
 3 前3500年~ 
 4 前2000年~ 
 5 前1200年~
 6 前800年~
 7 前600年~
 8 前400年~
 9 前200年~
 10 紀元前後~
 11 200年~
 12 400年~
 13 600年~
 14 800年~
 15 1200年~
 16 1500年~
 17 1650年~
 18 1760年~
 19 1815年~
 20 1848年~
 21 1870年~
 22 1920年~
 23 1929年~
 24 1945年~
 25 1953年~
 26 1979年~


第1部 約700万年前~約12000年の世界
人類の誕生

◆北京原人やジャワ原人は、すでに火を使用していたとみられる
 サルとは別の種に進化していった「人類」(ヒト)の中に、170万年~7万年前になると,北京原人【セH4狩猟・採集生活を送っていたか問う】ジャワ原人【セH11:土器を使用していたか問う】の名で有名なホモ=エレクトゥスという種が現れました。
 彼らは昔は「ピテカントロプス=エレクトス」として,ホモ属とは別種の「原人」【セH4時期(約50万年前)。アジア・アフリカ・ヨーロッパにわたる広い地域で生活していたか問う】と分類されてきましたが,現在ではホモ属の一種であるとされています。
 人類最初の“エネルギー革命”ともいえる,火の使用【セH4北京原人が知っていたか問う】が確認されているのは,彼らの段階からです。


なんでそんなこと聞くの?

サルは植物や動物をつかまえるけど、人類は計画的に植物の栽培や動物の飼育をおこなう。
 サルは火をつかえないけど、人類は火をつかえる。

 その「違い」が、サルと人類の群れの行くすえを分ける大きな違いとなった。
 植物の栽培(=農耕)と動物の飼育(=牧畜)がはじまるのは、次の時期のことになるが、火の使用とともに人類の食料確保の安定性がアップし、群れがより大きな社会に発展するきっかけを作った。

 そういうわけで、「狩猟・採集をしていた時期はいつまでか」「農耕・牧畜をはじめる時期はいつからか(その目安になるのは、水を貯めることのできる土器の登場)」ということはよく問われるわけだ。
 
 なお、「猿人」「原人」「旧人」の区分は、分類にさまざまな考え方があることから直接の出題は平成10年代以降はなくなっている。

***

◆ネアンデルタール人は、現在の人類とは別の種である
 20万年前に一旦温暖な気候に向かった地球は,一転して19万5000年前~12万3000年前頃まで氷期を迎えます。寒さのゆるむ間氷期(かんぴょうき)をはさんで,約7万年前に最期の氷期,すなわち最終氷期がホモ属を襲いました。
 そんな気候の大激変期をユーラシア大陸で生き抜いたが,ネアンデルタール人【セH17ラスコーとのひっかけ,セH19約9000年前ではない、セH4時期(旧石器時代後期)】です。
 彼らは伝統的に「旧人」【セH4磨製石器を使用して狩猟していない】と呼ばれるヒト属の一種で,約40万年前に出現しましたが,後からユーラシア大陸に進出したホモ=サピエンス(約20万年前に出現)に圧倒されて,約4万年前に絶滅しました。
 ネアンデルタール人は,DNA鑑定の結果,現在のわれわれ「ホモ=サピエンス(ヒト)」とは別の種(ホモ=ネアンデルターレンシス)なのですが,共通点もあります【セH4 現在の人類とほぼ同じ形質の新人であったか問う】

なんでそんなこと聞くの?

―ネアンデルタール人とホモ=サピエンスは、同じ時期の地球で共存していたといわれている。
 なぜ前者が滅び、後者のわれわれが生き残ったのかは謎も多いが、しだいにその謎も解き明かされつつある。


◆その後出現したホモ=サピエンスは「新人」に分類される
 その後、アフリカ大陸で新人のホモ=サピエンス【セH4「猿人」ではない】が進化しました。ホモ=サピエンスとは,つまり私たちの種に当たります。

  「ホモ=サピエンス」とは「知恵ある人」という意味で,18世紀に「学名」を提案したスウェーデン人の博物学者〈リンネ〉【セH16ジェンナーではない,セH29メンデルではない】が名付けました。

なんでそんなこと聞くの?

―われわれの種であるホモ=サピエンスは、それ以前に出現していた人類の種(北京原人、ジャワ原人、ネアンデルタール人など)とは違う種だ。
 それ以前の種はすべて絶滅しており、現生人類はわれわれだけだ。
 つまり、「世界の歴史」とは「ホモ=サピエンスの歴史」というわけだから、「それがわかっていますか?」という意味で出題されているわけだ。

◆ヨーロッパで発見されたホモ=サピエンスを、クロマニョン人という

 ホモ=サピエンスは約10万年前に初めてアフリカ大陸を出たと考えられています。
 約10万年~9万年前にアフリカを出た人類は,地中海や西アジアに広がりました。北ルートをとったホモ=サピエンスのうち,フランスで発見されたクロマニョン人【セH4旧人ではない】が知られています。


◆ホモ=サピエンスは、美術をうみだしていた

 狩猟採集を通して自然の恵みと猛威を直接うけていた人類が,自分自身や自然に対してどのような思いを抱いていたのかは定かではありませんが,4万年前頃からオーストラリアでみられるアボリジナル(アボリジニ)【セH27】の洞穴壁画に登場する神話のような絵,3万年以上前のフランスのショーヴェ洞穴壁画,2万年前頃から描かれたフランスのラスコー洞穴壁画【セH5図版「ウマの像」。「フランスで発見された」とある、セH17】や,1万8000年前頃から描かれたスペイン【セH31】アルタミラ(アルタミーラ) 【セH5ラスコーとのひっかけ、セH17ラスコーとのひっかけ、H31ラスコーではない】洞穴壁画では,人類と動物【追H20「動物の絵が見られる」か問う】との間の生き生きとした交流が描かれています。


なんでそんなこと聞くの?

ホモ=サピエンス以前の人類は、アタマの中に浮かんだ”イメージ”を絵を描けない(ただし、ネアンデルタール人が絵を描いていたという説もある)。


 一方、ホモ=サピエンスは、アタマの中に浮かんだ”イメージ”を絵に描くことができる。

 こうした美術を通してホモ=サピエンスは,目には見えない “不思議な力” やこの世界の成り立ちを仲間で共有することができるようになっていた。
 そして、シンボルを介して共通の活動や儀式をおこなうことことで,より多くのメンバーを抱える社会を成り立たせることを可能にしていったわけだ。
 また、そうすることで自分たちが生まれてきた意味や死んでいく意味など、抽象的なアイディアも共有することができるようになっていく。

 だからこそ、「洞窟に描かれた絵」は、ホモ=サピエンスの歴史にとって重要とされるのだ。

 なお、今年度のセンター試験では「アルタミラ洞窟」(ラスコー洞窟とのひっかけ)が出題されている。

第2回 前12000年~前3500年に続きます。


このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊