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【ライブラリ】notes

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2020年7月の記事一覧

マイノリティのフィードワーク

「しかも、〜はホモだからな」。イギリスの著名な研究者の悪口を言う中で、F先生がそう口にすると、狭い教室いっぱいの30名ほどの院生はどっと笑った。私の胸はギュッと締めつけられ、体が一瞬にして熱くなった。すぐに私は目を上げ先生を睨んだ。先生も口にするやいなや「あっ、しまった」という顔をして私の顔を見た。そして、渋い表情を見せ、雑談を止めて授業内容に戻った。隣に座っていた同期入学の友人T君は、少しも笑うことなく、むしろ少し硬直したように見えた。 ロの字形をした机の周囲を院生が二重

【Interview】林正樹 - コロナ禍の活動と、東京の「新しい室内楽」の中心で

・コロナ禍での活動を模索する、インディペンデントなミュージシャンへ。 ・アコースティック楽器の演奏と作曲による、新しいサウンドに興味のある方へ。 イントロダクションここ10年ほどだろうか。東京の「新しい室内楽」とでも呼べるような、器楽奏者たちによるシーンが静かに広がりつつある。 そう聞いてすぐにピンとくるリスナーが、果たしてどれぐらいの数で存在しているのかはわからない。 けれども東京のインディペンデントなライブシーンの中で、とりわけジャズやインスト系の音楽に日々触れている人

不思議さに驚嘆すること―文化人類学がおもしろい(3)

先日のnoteで人類学における「関係論的存在論」ということを書いた。 関係論的な存在論とはなにかというと、存在ということを「外部と無関係にそれ自体として予め決まった本質によって在るもの」とは考えないで、代わりに存在ということを、他との関係、外との関係を通じて現れるものと考える、そういう存在についての論である。 ここで他との関係、外との関係というのは、「外部と無関係にそれ自体として予め決まった本質によって在る」ような存在同士が、後から衝突したり結合したりするという「関係」で

うちの母のこと。

母は、思えば屈強なひとだった。   東京に育ち、丸の内に勤め、それなのに何故か北陸の寒村に嫁ぎ、さしてとりえのない3人の子を産み育て、実の母を手元に呼び寄せ看取り、近所に住む姑と小姑と良い関係を紡ぎ、フルタイム勤務の会社員として定年を4年延長して64歳でリタイア。 退職の時『お母さん長い間お疲れ様』とメールをしたら 「退職したら、長く悩まされていた肩こりも頑固な便秘もすっかり治った。やはり働くのは身体に悪い」 という機知に富んでいるのか、正直なのかよくわからない、そうい

再生

薬草ミード(蜂蜜酒)の作り方 DIY how to make herbal mead

キハダの実と和のハーブ、スパイスでミード(蜂蜜酒)を作りました。 ミードは、農耕が始まる前から飲まれてきた人類最古の酔う飲み物として知られています。フルーツの酸味と植物のタンニンの渋み、はちみつの甘みが加わった夏にオススメのドリンクです。中世ヨーロッパではハネムーンに新婦が精力をつけるために作って飲んだそうです。

UBIの転換点:パンデミックは誰から仕事を奪うのか?【NGG Research #8】

COVID-19のパンデミックにより、未曾有の危機を迎えた世界経済。伝統的な景気刺激策や福祉政策では、今回の危機から立ち直るためには不十分であるという見方が強く、世界各国でユニバーサルベーシックインカム(UBI)の導入について注目が集まっている。第8回目の「blkswn NGG Research」では、いま脚光を浴びるUBIをご紹介。その全貌を紐解く。 Photo by Dimitri Houtteman on Unsplash Text by blkswn NGG res

気候変動リスクと現代の「帝国」 “今”と“過去”をつなぐ世界史のまとめ④ 前2000年〜前1200年

僕らは今、なぜこのような世界を生きているのだろう。 ばらばらになったり、まとまったりしながらも、とりあえず仕方がない、というように動き続けているわれわれの社会は、どのようにして今ある形になったのだろう。 ひとつの確固たる世界があるようでいて、そういうわけでもなく、区切られているようでいて、そういうわけでもない、あいまいなまま、はっきりとしないまま漂うこの世界は、一体どこに向かっているのだろうか。 "今"と"過去"をつなぎながら、世界史を、ゆるく、なんとなく、まとめていく

上野千鶴子氏座談会のセックスワーカー差別炎上とかがみよかがみコミュニティの雰囲気について(上)

朝日新聞社運営のWebメディア『かがみよかがみ』での2019年11月20日に発表された上野千鶴子氏との座談会企画記事が、セックスワーカーへの侮蔑と取れる表現で問題になりました。 本来は『かがみよかがみ』の中で完結させて書くのが筋だと思いますが、やむを得ずnoteに投稿させていただきます。上野千鶴子氏のセックスワーカーに関する発言での炎上を踏まえて考えたことを書きたいと編集部に申し出たのですが、その提案は断られたからです。 この文章はあくまで個人的見解であり、座談会参加者・

『文学こそ最高の教養である』まえがき&目次を全文公開

光文社新書編集部から刊行された『文学こそ最高の教養である』。おかげさまで、売れ行き好調です。 この本は、光文社古典新訳文庫の創刊編集長である駒井稔が、14人の翻訳者の方々と語り合ったイベントをもとにした本です。 紀伊國屋書店新宿本店で60回を重ねる、大人気の対談イベント。そのもっとも刺激的で濃厚な部分を、600ページの新書に収めました。 入り口は、文学に詳しくない人でも肩の力を抜いて気楽に入っていける雰囲気ですが、読んでいくうちに、古典の魅力にとりつかれ、きっと紹介され

オラファー・エリアソン展

東京都現代美術館で開催中のオラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」展へ行きました。撮影可能で、来館者がアートの一部となるインスタレーションが多く、色んな人が楽しめる展示となっていました。 (注:以下ネタバレしかありません) 太陽の中心への探査 太陽光のエネルギーを利用した多面体のガラス作品だそうです。プリズム(?)となっていて、とてもきれいでした。 あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること 室内の隅に照明が設置されています。その前を人が通ると・・

「人は記事をちゃんと読まない」からはじまる意識改革

仕事柄、日々投稿されるたくさんの記事を読みます。あたらしい視点をもらえる記事に出合えるとうれしくなる一方、もっとこうしたらいいのにな…と思ってしまうものもあります。 後者で感じるのは、書き手と読み手の「読む」に対する温度差を意識できていないことです。 基本的に、書き手は「記事を全部読んでもらえる」と思っているのに対して、読み手は「興味をひくものがあれば読む」というスタンス。興味をひかれなければ読まないと判断します。そこで大事なのが、読んでもらうための努力。それをしていない

サプリ選びの感覚で、人生も作っていけるらしい

坂口恭平さんの新刊を読んだ。『自分の薬をつくる』 駆け込み寺を見つけた気分だ。 しかし、この方ほど、扱うテーマが変わる人もいない気がする。 坂口恭平さん、すごく好きなんだけれど、なんて言えばいいのかしら。モバイルハウスの人? 自称総理大臣? 躁鬱の人? いのちの電話のフリー相談員? 私が最初に読んだのは、『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書、2012年)。ロックだった。決まった家に住んでそこだけが自分の有する空間であるというあたりまえを揺さぶる。そして気づいたら、家に

#まえゆかラジオ 4回目のゲストはパラパワーリフティング!

こんばんは。 パラスポーツエバンジェリストのまえゆかです。 エバンジェリストを名乗っておきながら、全然noteを更新していませんが…。笑 最近、自分のライティング能力には限界があると感じつつあり、無理するよりも好きな時に好きな形で発信するほうがいいなと思っているので、気ままなマガジン更新にお付き合いいただければ幸いです。 さて、久しぶりのまえゆかラジオを配信しました! 今回のゲストは、パラパワーリフティングの中嶋明子選手と連盟事務局の吉田彫子さん。 コロナの影響で大

『世界史の針が巻き戻るとき』でABD①

『世界史の針が巻き戻るとき』(マルクス・ガブリエル著)で、オンラインのABDを行いました。はじめての哲学書のABDでしたが、本書は古典に比べて読みやすく、また社会学的な要素も強いように感じました。  本書でまず特徴的に思えたのは、トランプと習近平を例に挙げてポストモダンの問題点を論じているところでした。  このことを発端にして、ニーチェの想定した「超人」と「トランプ」「習近平」が深くかかわっていること、そしてこのような事態から脱却したい筆者の思想が見えてきました。考えてみ