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"歴史" 系 note まとめ

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2020年5月の記事一覧

私たちは誰が書いた著作を読んでいるのか?

本稿は,斎藤憲「数学文献とアリストテレス」『アリストテレス全集12』所収の月報,Reviel Netz,The Shaping Deduction in Greek Mathematics, をもとに書いたものです. 0. 私たちはそもそも「オリジナル」を読んでいるのか? (西洋)古典に対して,「原典など読まなくても,翻訳を読めば良い」             「原典を読まなければ,読んだとは言えない」という意見が鋭く対立する場合があるようです.ここでは西洋古典の中でも

イギリスに留学した徳川家達の話①

だいぶご無沙汰してました。 何か研究成果が出たらnoteを投稿する、というのが基本で、それ以外は気ままに、という感じでやっていますが、たまには何か書こうと。 で、今回はこんな時だからこそ、「国境」を越えた話で、徳川家達が明治10年よりイギリスに留学した時のことでも。昨年度の講義で、もう少し掘り下げてやってほしかったとコメントをもらったところでもあります。コメント、ありがとう! 数え年15歳の家達は、明治10年6月、まだ西南戦争の決着もつかない中、横浜から出帆。5年後に帰国

オーストリア最大の巡礼地、宝石のような町マリアツェル

ウィーンから南に2時間ほどの距離に、マリアツェル(Mariazell)と言う小さな町があります。山間の静かな町なのですが、教会は町の規模に似合わないくらい大きく荘厳です。 それもそのはず、マリアツェルは、オーストリアだけでなく周辺国からも多くの人が訪れる、歴史ある巡礼の町なんです。街の中心で存在感を放つ教会はバジリカと呼ばれ、多くの巡礼者の目的地になっています。 マリアツェルの巡礼教会 中央の塔はゴシック様式の14世紀のもので、両側の塔は17世紀のバロック様式。荘厳さと

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 陸地

これから定期的に本の「自分なり」の趣旨を章ごとに1000字で書いていきます。主に欧州の文化に関する本です。 先日、近畿大学で経営学を教える山懸正幸さんと話している時、会話が「あらためて、文芸史や美術史などを勉強したくなってきましたね」との流れになりました。というのも社会科学系の人たちの書くものばかり読んでいると、世界はとてつもなく大きな姿をした存在であることを忘れてしまうのですね。そこをやはり意識しておきたい、というのを同時に2人で思ったのです。で、読書会をやろうと。 か

「迷信」が紡ぐ台湾の歴史と信仰──新世代のサスペンス・ホラー(倉本知明)

「倉本知明の台湾通信」第7回 『荒聞』著:張渝歌 2018年2月出版  台湾で暮らしていると、日本では聞いたことのないような様々な「迷信」に出くわすことがある。例えば、夜空に浮かぶ月を指さすと耳を切られる、洗濯物を夜干すと霊が憑りつく、道端に落ちている赤い封筒を拾えば「冥婚」が執り行われてしまう、等々。「冥婚」とは台湾に残る民間風習の一種で、封筒をうっかり拾ってしまったが最後、若くして亡くなった女性と結婚させられてしまうのだ。拾った途端に物陰に隠れていた遺族がバッと現れ、故

再生

高校世界史教室4 ボッティチェリ2

高校2年生の世界史でおこなった「ルネサンスの例、ボッティチェリ」の授業です。今回紹介する1と2は2019年2月に、次回紹介する3と4は2020年の2月に行いました。毎回授業を撮って、同じ範囲の「1年前の授業」と「今年の授業」を見比べたりすると、「ここはどっちもいいよね~」とか「こういうところ、どっちももったいないな~」みたいに自分の授業の長所や短所が鮮明に浮かび上がってきます☆

食べることは、生きること

緊急事態宣言が解除となりました。第二波、そしてクラスターの発生が起こらないことを祈るばかりです。 さて本日は、食べることについて!まるでただの食レポか!と思われそうですが、そうではありません笑 私たちが生きる上で、また身体をつくるためには食は非常に大切です。と頭でわかっていながらも、筆者はファーストフード店で済ませてしまったり、飲酒や美味しい(明らかにカロリー高め)お料理は大好きです。 ただ、子どもに好き放題に好きなものばかり食べさせていいのか?といったら、それはまた違

イギリスのカツカレーブームにモノ申す

日本人である私はもちろん、英人の夫も、子供たちも大好きなカツカレー。家族全員皆大好きなのだが、自宅では、カレーを作り、カツを揚げないといけないので、手間がかかる。だが、出来上がっていただく時の、あのカツのサクサクとカレーのこってりが絶妙に口の中で交わる感覚は極上だ。 今や、そのカツカレーがイギリスでは空前の大ブームなのだ。 カツカレーブームの火付け役となったのは、1992年創業の日本食レストラン「Wagamama」だと言われる。香港系イギリス人のアラン・ヤウ氏(有名高級中

東大生ラッパーと大雑把につかむ世界史【中央ユーラシア世界史】

 こんにちは、東大生ラッパーの法念です! 今回は、中央ユーラシア世界史を大雑把につかんでいきましょう。  中央ユーラシア世界は、まさにユーラシア大陸の中央部に位置する世界です。人によって、どの範囲を中央ユーラシア世界とするかはかなり変わってくるのですが、ここでは、およそ大陸中央部の「乾燥している地域」としておきます。  大きくわけて北部の草原地帯と南部の砂漠地帯とがあり、遊牧民は草原地帯で家畜を連れて移動生活を営んでいます。砂漠地帯にはオアシス(農業のできる地域)が点在し

2020.5.24 中国の疫病が変えた世界史⑥

近代化とは? シンガポールは中国系の住民が大半ですが、清潔で美しい街です。それもそのはず。 たとえばタバコの吸い殻を路上に捨てると150シンガポールドル(約1万2千円)、バスからゴミを捨てたら1,000ドル(約8万円)、その他、痰を吐いても、公衆トイレを流し忘れても罰金が科されます。 中国人には清浄の観念が欠如しているので、衛生向上のためには法によって厳しく罰する以外手がありません。 シンガポールは蒋介石が志した新生活運動を厳罰によって成功させた事例と言えますが、もう

■古文単語で感染症■『枕草子』『栄花物語』に見る“世の中騒がし”とは。【現役ライターの古典授業06】

これを書いている今現在(2020年5月)、世界中で新型コロナウイルスで休校が続いています。 私の職場(高校)も例に漏れず、三月から断続的に休校が繰り返されている状態です。 息子(小学生)に至っては、登校日が何度か設けられてはいるものの、ほぼ2ヶ月以上の休校になっています。 この休校期間にあった、ほんのちょっとの授業期間の間に、私が教えている生徒たちに話した話題を残しておきたいと思います。 題して「感染症は古典に学べ!~コロナウイルス感染症対策Ver.~」。 ※いつもの

AIと一緒にグローバル気候マーチを歩けるか?『ノヴァセン』ジェームズ・ラヴロック(NHK出版)(エシカル100考、97/100)

AIと一緒にグローバル気候マーチを歩けるか? 「ガイア理論」提唱者である科学者のジェームズ・ラブロック(御歳100歳!)の『ノヴァセン』を読んで、上記の問いが浮かんできた。 「ガイア理論」とは、地球全体(無機物も、あらゆる有機生命体も含む、コロナウィスルだって)を「自己調整システム」「ひとつの生きた生命体」ととらえる考え。 人間と自然というように分離対立してとらえるのではなく、それぞれが相互作用しながら生命体が生きられる惑星=ガイアを維持してきているとする。気候危機につ

資本主義の成立条件とイギリスの役割

高校時代、翌年に世界史を取ることになり、その前に予習しようと思って買ったのが以下の本。 『物語世界史への旅』大江 一道 (著), 山崎 利男 (著) http://www.amazon.co.jp/%E7%89%A9%E8%AA%9E%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%8F%B2%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%97%85-%E5%A4%A7%E6%B1%9F-%E4%B8%80%E9%81%93/dp/4634640503 山川出版社だったし、と思っ

東大生と整理する「ルイジアナ史」【解説動画あり】

 こんにちは、東大生ラッパーの法念です。今回は、ちょっとややこしい「ルイジアナ」の歴史です。では早速いきましょう! ぜひ解説動画もご覧ください↓ https://youtu.be/safe4CU6BCQ フランス領ルイジアナ ルイジアナは17世紀にフランスの探検家が探検して、当時のフランス王のルイ14世に献上した土地です。北アメリカの植民地で、中央にはミシシッピ川という川が南北に流れています。ルイジアナという名前は、「ルイ」にちなんでつけられたものです! 最初はフランス領だ