見出し画像

MSI 2021 グループステージを振り返る

5月6日に開幕した「MSI 2021」、皆さん楽しんでいますか?

6日間にわたって激しい戦いが繰り広げられたグループステージが幕を閉じ、いよいよ5月14日日本時間22時からはランブルステージが始まります。激戦の末に残ったチームが6、舞台を去ったチームが6。まずはこのグループステージを振り返っていきましょう! ユラガワ氏(@yuragawa_lol)との共同執筆でお送りします。

グループA

画像1

VCS代表が出場しなくなったことにより、ダブルラウンドロビンの他グループと違ってクアドラプルラウンドロビンになったグループA。各チームの試合数は合計8と、過酷な試合日程となった。

LPL代表のRNGが最終的に全勝し、今大会の最有力優勝候補としての圧倒的な実力差を見せつけた。時に無理にも見える動きを見せつつも、リードを手放すことは無く常にハイペースなゲームで、一つ抜けた強さを感じられる内容だった。攻撃的なプレイが信条のVCS代表が出られていれば、他チームとの釣り合いも含めて、もう少し伯仲する試合が見られたのかもしれない。

画像2ステージで勝利後の挨拶をするPentanet.GGメンバー

下馬評では未知のチームであり、Pool 4地域からの初参加でもあるPGGが、Pool 3チームのUOLをタイブレークで下してランブルステージ進出を決めたのは、多くの国際プロシーンファンを驚かせた。LCLのチームはいわゆるダークホースと見なされてきたが、近年はリーグ規模が小さく留まっており、地域を代表する名門チームの解散など、競技環境が苦しくなっているようでもある。一方のLCOは、OPLという枠こそ失われたものの、シーン自体は継続されていたこと、今大会も完全なチャレンジャーとして挑んでいった事が最後に明暗を分けたのかもしれない。

注目ツイート
LPL・LECなどの元キャスターで知られるFroskurinn氏

みんなUziがRNGの心にして魂だったと信じているけれど―彼がRNGの一員だった時、チームはXiaohuを中心に2回リビルドした。Uziがいた頃、国際大会でのXiaohuは彼ほどの活躍はしなかったし、紡がれる物語は全てUziについてのものだった―Uziの偉大さゆえに。
でもXiaohuはUziよりも長くRNGの中心にいた。彼が報われるストーリーこそが、今語られる物語のはず。

グループB

画像3

前半戦を全勝で終えたMADは、後半戦では1試合目のIW戦で思わぬ敗北を喫したものの、Pool 1地域の優勝チームとしての強さを見せて5勝1敗での1位勝ち抜きとなった。

PSGはMAD以外のマイナーリージョンチームには全勝し、元強豪地域チームとしての強さを見せたものの、MADに対して勝利を挙げることはできず、明暗のはっきり分かれる結果で2位を確保した。

画像4楽屋からステージへ向かうPSG。River選手は一昨年のLJLでV3 Esportsに所属していた

久々にブラジルから国際大会への出場を果たしたPNGだったが、攻撃的なスタイルを上位リーグのチームからは的確に咎められ、結果はあまり振るわず3位。IWに至ってはMADに土をつけた1勝以外は全敗となってしまった。従来のマイナーリージョン評価で見るならば、TCLの方が格上の地域ではあるものの、IWは中盤以降にリードを失う展開が目立ってしまった。ここ数年リーグで発生した問題に附随して、人材が流出してしまっている結果の一端と見ることもできる。TCLチームはしばらく苦しい戦いが続くかもしれない。

注目ツイート
Evil GeniusのPeter Dunヘッドコーチ

Kaiserのような選手が今回のMSIのフォーマットを好んでくれているのは、とても良いことだ。
マイナーリージョンの選手にとってのMSIとは、ShowmakerやXiaohu、Kaiser自身のように、世界的なスター選手に対して挑んだという経験をキャリアに刻むことのできる、数少ない機会なのだから。
今回のMSIのフォーマットが求める「対価」は、メジャーリージョンのチームが1週間早く参加しなければならないこと、そしてワンサイドゲームがいくつか生じるという、ある程度の(ただ大きくはない)リスクだ。だが、LoLの全世界規模のエコシステムにとっての長期的な利益を、安売りすべきではない。

グループC

画像5

前半戦はDKが世界王者の期待に違わず全勝する一方、DFMの奮闘によりその他3チームが1勝2敗で並ぶ波乱の折り返しとなったグループC。結果次第ではPool 4のDFMがPool 2(4大強豪地域)のC9をグループ敗退に追い込む可能性すら浮上し、後半戦は国内外多くのファンが注目することとなった。

結果的には、C9が中2日で見事な修正を見せて復調、DKを含めた全チームを破って後半戦全勝を挙げて2位を確保し、国際大会の経験豊富なスタッフ擁する強豪チームの強さを見せつけた。DFMは敗退こそしたものの、近年の国際大会でも最も白熱した試合を見せ、かつて手の届かなかった強豪リーグとも戦える姿を見せることができた。

画像6ShowMaker選手やPerkz選手と互角に渡り合い、国際大会の新星として注目されたDFMのAria選手

DKは1位通過でランブルステージへと進出したが、後半戦ではC9に対して敗北を喫しており、これが大会全体を通しての先を見据えた調整の一部なのか、あるいはチームの弱点となりえるのか、他のPool1チームと争うこの先のステージでは注目することになるだろう。

注目ツイート
LCSキャスターKobe氏

DFMとLJLに大きなリスペクトを。MSI 2021で見せた勢いを、彼らはすごく誇っていいと思う。
このグループステージに来ていたマイナーリージョンのチームたちは大きな脅威だった。今年のWorlds Play-in Stageにマイナーリージョンから来るチームたちがとても楽しみだし、ベトナムチームも来られたら、素晴らしい試合が見られるだろうね!

Pool間の差、地域間の実力差

画像7出典:Leaguepedia

今大会では、参加する地域を過去の実績から4段階に区分し、それぞれの地域を組み合わせてグループが構成された。Pool 1の強豪地域から、国際大会ではまだあまり結果の出ていないPool 4まで、ある程度序列が定まった形でグループステージが始まったと言える。そして、結果を踏まえると二つのことが見えてくる。

一つ目は、少なくとも今回の大会では、Pool 3とPool 4の間に大きな差は無かったという事だ。偶然ではあるが、すべてのグループでPool 3地域よりもPool 4地域の方が良い順位でステージを終えている。

二つ目は、それでもやはり強豪地域からやってくるチームとの間には大きなギャップがある、ということだ。グループCの後半戦などでは特に目立つことだが、強いチームはチームの問題を短期間で修正し、また対戦相手の研究・対策を準備した上でそれを実践できる多くの手札を持っている。これは、通常のリーグと比べて短期間の間に、同じチームと複数回戦う可能性の高い国際大会において、勝ちきるためには非常に重要な要素だ。Bo1であれば、得意な形をぶつけて互角に戦えるところまで来ても、さらに結果を勝ち取るためにはその次の段階が待っている、そういった「次の強さ」が見えたグループステージだったともいえる。

ランブルステージ展望

ここからは、グループステージを勝ち抜いた6チームによるランブルステージが始まる。

やはり注目されるのは各グループのPool 1チームだろう。グループステージの戦いぶりから言うなら、RNGが安定して強いチームとして真っ先に挙げられる。DK、MADはグループステージでそれぞれ1敗しているし、主導権を失うシーンも見られた。ただ、両チームともそんな状況でも後半戦の1日中に調子を戻して1位を維持している点は評価すべきだ。RNGとの主導権争いで戦うのか、あるいは隙をついて反撃できるのか、首位チーム同士の戦いは実際に戦ってみないことには分からない。

一方で2位のチームでは、C9がダークホースとなるように思われる。毎年国際大会では苦い思いをしているNAファンが多いのも事実だが、一方でMSI 2016やMSI 2019においてNAチームは決勝進出を果たしている。Perkz選手を始めとするメンバーは国際大会を勝ち抜いた経験もあり、後半戦の強さであれば4大強豪地域の一角として結果を出す可能性は十分にある。経験豊富なメンバーという点ではPSGも同様だ。こちらはかつてLCKキラーとして知られていたMaple選手がようやくLCKチームと対戦するチャンスがやってくる。旧LMS地域の魅力の一つでもあったこの特徴が本大会でも見られるならば、ランブルステージも番狂わせとなる結果が出てもおかしくはない。

※ ※ ※ ※ ※

直前の記事アップになってしまいましたが、グループステージの展開振り返りがランブルステージを楽しむ一助になれば幸いです。さあ、飲み物とお菓子は用意しましたか?明日が早いなら、お風呂は済ませて布団にスマホを持ち込んでいますか? まだまだ続くMSI 2021、無理のない範囲で観戦しましょう!

写真出典:League of Legends Esports

いただいたサポートは、主に取材費に充てさせていただきます。取材先でのおやつ代にもなります!