【第四十九話】セネクトメア 第三章「夢現のタイムリープ」

【前回までのあらすじ】

ぷくとらを召喚し、スピードアップした俊輔は、ガラの砲弾を軽々かわせるようになった。しかしガラは全身金属で、俊輔の黒刀による攻撃が効かない。如月により、金属は温度変化や物理的な変化に弱いことを知った俊輔は、ガラに背を向け今いる廃ビルから外に駆け出した。果たして俊輔は、どんな作戦を思いついたのか?

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ガラ「待てー!逃げるなー!」

ガラの声が後方から聞こえてくるが、俺はお構いなしにぐんぐん距離を広げていく。ぷくとらのおかげでスピードアップしたから、まるでバイクに乗ってるかのように移動が速くて気持ちいい。

俺は走りながら、ギブソンがいる場所に向かった。ぐいぐい加速して近づいていく。ギブソンと戦っているカツが俺の姿に気づく。しかしもう遅い!

ザンッ!!

俺はカツが持っていたギブソンの人形もろとも、カツに攻撃を食らわせた。ギブソンの攻撃を受けた時と同じように、カツは人形に変化したけど、ギブソンの人形を真っ二つにできた。

ギブソン「俊輔?お!身体が自由になった!おらー!!」

ギブソンが渾身の一撃をハチに食らわせる。するとハチの胴体に大きな風穴が開いた。そのまま目にもとまらぬ連撃を浴びせ続け、ハチは金属の破片になった。

俊輔「カツは?!」

ギブソン「あそこだ!」

ギブソンが指さした方向にカツがいた。カツは身代わり人形を出現させることで攻撃をかわしている。カツも俺と同じクリエイターだから、もしかしたら直撃に弱いのかもしれない。俺は一気にカツとの間合いを詰める。

するとカツはすかさず俺の人形を出現させた。その瞬間、俺は身体の自由を奪われる。でもこれも予想通り。

俊輔「ギブソン!カツを!」

ギブソン「任せろ!」

ギブソンはスナイパーライフルを具現化し、カツに向けた。

カツ「ヤバ!」

バンッ!!


ギブソンの放った銃弾は、カツの額を打ち抜いた。しかし倒れ込む時にはまたしても身代わり人形に変化した。こいつ、攻撃が当たった後も入れ替われるのか!

しかし本物のカツが現れると、ギブソンがすかさずスナイパーライフルの照準をカツに向ける。すると俺の身体が自由になった。

ギブソン「くそっ!身体が動かん!」

やっぱり!カツの人の動きを操るスキルは、一人に対してしか使えない!だからこんな風に複数の敵を相手にする時は不利になるんだ。俺を拘束すればギブソンが自由になり、ギブソンが拘束されれば俺が自由になる。そして俺はカツに突進した。

カツ「これじゃあラチがあかないわね。」

カツはそう言うと、その場から姿を消した。ギブソンの身体も自由になったようだ。


ガラ「待ちやがれー!」

ガラがようやく追いついてきた。ナイスタイミングだ。

俊輔「ギブソン!あいつの攻撃は顔面の大砲による砲撃だけ!全身金属だから斬撃が効きにくい。相手頼んでいい?」

ギブソン「オーケー。任せときな。」

ギブソンが北斗の拳のケンシロウのように拳をボキボキ鳴らして笑っている。俺はギブソンの後方にポジションを取った。

ガラ「食らえ!」

ガラの砲弾が、ギブソンめがけて放たれる。ギブソンはそれに対して、右手を前に出し、砲弾を直接受け止めた。

ドガーンッ!!


ギブソンの手のひらで砲弾は爆発したが、ギブソンは直立不動のままだった。まさか直接受け止めてノーダメージ?何て防御力だ。これがソルジャーの力...。ホープライツのリーダーの肩書はダテじゃない。

ガラ「なっ!嘘だろ?!直撃して無傷?!」

ギブソン「いくぞ!!」

ギブソンはガラとの間合いを一気に詰める。ガラは次の砲弾を放つが、ギブソンは走りながら砲弾を手ではじき返した。まるでターミネーターだ。

ガーンッ!!

鈍い音と共に、ギブソンのボディーブローがガラの腹にクリーンヒットする。ガラは吹き飛ばされ、なかなか起き上がれない。今がチャンスだ!

俊輔「ヤス!聞こえる?!ギブソンのところに応援に来てほしい!」

ARを通じてヤスに通信を試みる。如月に届いたんだから、多分ヤスにも届くはず。

ヤス「え?こっちも大変でちょっと手が離せないんだけど。」

俊輔「俺が今からそっちに行く!だから入れ替わりで!」

そう言いながら俺は、ホープライツのほぼ全メンバーが戦っている前線に移動した。スピードが速いっていい!あっという間に到着できた。


ヤスの姿を見つけると、すぐそばまで近づいた。

ヤス「わぁ!いつの間に!」

俊輔「今ギブソンと戦ってるガラって奴、全身金属でできてるみたいなんだ。物理的な物なら、ヤスのスキルで変化できるよね?」

ヤス「うん多分。でもリンカーなら、物理的な物か生き物かの判断が難しいところだけど。」

俊輔「とりあえずやってみてくれる?ここは俺が加わるからさ!ポジションチェンジしよう!」

ヤス「分かった。やってみるよ。」

ヤスは微笑みながら戦線を離脱し、ギブソンのいる場所に向かった。


~ギブソン vs ガラの戦場~

僕はギブソンのいる場所に走って向かった。全身金属の敵なんて見たことないけど、一体どんな相手なんだろう。果たして、僕の「触れた物の時間を戻したり進めたりするスキル」が通用するだろうか。

すると目の前に誰かが吹き飛ばされてきた。倒れ込んだそいつは、首から下は普通のカジュアルな服装だけど、顔面は大砲という何とも不思議な姿だった。これは敵...だよね?

ギブソン「ヤス!そいつを倒せ!」

やっぱり敵だ。俊輔が全身金属って言ってたから、試してみよう。僕はその敵の大砲部分に触れた。

ヤス「マテリアルリバース。」

ガラ「ぐぁぁぁぁあああー!!」

パァーンッ!!


大砲君は、叫び声を上げながら消えた。物質の時間を戻す「マテリアルリバース」で、金属を原子の状態まで戻して分解できたみたい。全身金属って凄く丈夫そうだけど、弱点もあるんだね。

ギブソン「やったなヤス!敵の主戦力一人撃破だ!このまま押し切るぞ!」

ヤス「うん。」

ギブソンはそう言うと、みんながいる前線に向かって走り出した。僕も後を追う。敵の主戦力はもう一人、カツという奴がいたはずだけど、あいつはどこにいるんだろう?でも今はとりあえず、みんなと合流しておこう。

マイオールの主戦力「ガラマン大砲」撃破!!


~前線~

俊輔「次!」

ザシュンッ!!

俺は次々と敵を斬り裂いていった。敵は大勢いるけど、ギミックだから戦闘力が低い。スタミナ勝負だけど、少しずつ敵の数が減ってる気がする。このまま押し切れば、敵のリーダーであるキヨに手が届く。

ヤス「俊輔、ただいま。」

急にひょっこりヤスが現れた。

俊輔「あ、おかえり!どうだった?」

ヤス「うん、分解してきたよ。」

俊輔「あ、あぁ、ありがとう。倒したってことだよね?」

ヤス「うん。リンカーでも、金属は金属みたいだね。」

俊輔「良かった。読み通りだ!」

ヤス「ギブソンもこっちに合流したから、一気にこっち優勢になりそうだね。」

俊輔「そうだね。今まで均衡状態だったけど、俺とギブソンが加わればこっちの方が優勢になるはず!頑張ろ!」

俺は防御がメインのヤスから離れ、更に前線に突っ込んだ。ギブソンもこっちに合流してくれれば、俺たちの勝利は決まったも同然だ!


如月「敵の主戦力撃破により、完全にこちらが優勢。そのままたたみかけて。」

如月からの通信が、更に士気を高める。周りを見渡すと敵の数が激減しているので、キヨのギミック量産ペースよりも、こちらの撃破ペースの方が高まってる証拠だ。ガラを倒してカツを撤退させたことで形勢逆転!俺のナイスアイディアが功を奏した。天才で良かった。

その時、急に背中に柔らかい感触を感じた。それと同時に、お腹の辺りがギュッと引っ張られる感触も。視線をお腹に移すと、誰かの腕が後ろから俺を捕まえている。誰?

キヨ「セレクト」



キヨの声が聞こえた次の瞬間、目の前の世界が急に変わった。漆黒の空と廃ビル群の景色が、夕焼け空と自然豊かな景色に様変わりした。一体何が起きた?辺りを見渡すと、涼しい風と共に波の音まで聞こえてくる。俺を捕まえていた腕が離されたので、恐る恐る後ろを振り返る。

キヨ「やっと会えたね。」

そこには、笑顔のキヨがいた。俺を捕まえていた腕の正体はキヨだったらしい。

俊輔「え?何したの?」

キヨ「この世界にあなたを連れだしたのよ。ここなら私たち以外誰も来れない。ゆっくりお喋りするには最適でしょ?」

キヨはゆっくり歩きだし、俺の横をすり抜けた。その先には、とがった崖があり、夕日と水平線が織り成す美しい景色が広がっていた。俺はキヨの後ろをついていく。

崖の直前でキヨはこちらを振り返った。背後にある夕日が逆光になり、キヨが神々しく、美しく見えた。ずっと微笑んでいる表情からは、敵意を感じない。むしろ友好的な感覚さえある。


キヨ「あのまま押し切れば楽だと思ったけど、あなたたちも意外とやるのね。でも戦いは私たちの勝ち。こうしてあなたを誘拐できたからね。」

戦いは俺たちの負け。神姫が忠告してた通り、俺が敵の手中に落ちた時点でホープライツの敗北。味方が優勢だからこそ、一歩引いて自分を守るべきだったかも。自分のアイディアが功を奏したこともあり、完全に調子に乗っていた。油断が招いた敗北だ。みんなに悪いことした。

キヨ「でも気にすることないわ。こんな戦い、勝っても負けても何も得られないし、何も失わないから。」

俊輔「そうかもね。で、何を話したいの?ここはどこ?」

キヨ「そうだな...。何から話そうかな。」


続く。

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