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スペイン巡礼2018回想記(17)ベロラド〜ビジャフランカ

 2018年5月22日。
 この日は、わずか12km先の街が目的地だった。20km歩行に慣れてきた身としては、ずいぶんと楽ちんな行程だ。
 というのは、目的地ビジャフランカ・モンテス・デ・オカ(以下ビジャフランカ)は、名前のとおり「オカの山越え」といわれる難所手前の街。例によってあまり体力に自信のない私は、ギリギリの体力で山越えなどしたくないので、そこでいったん泊まる計画を立てたのである。

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(朝、ベロラドのアルベルゲからの眺め)

 ビジャフランカは、我が伝家の宝刀Booking.comでは宿がみつけられなかった。Expediaにアプリを変え、ようやく予約可能な宿を1軒発見。巡礼の旅全50日間で、Booking.comでまかないきれなかったのはこの日だけである(大変お世話になりました)。
 Expediaで予約したのは、少し贅沢めのホテルだ。私の場合、パラドールや修道院リノベーションのホテルにも泊まる巡礼旅であり、時には贅沢も辞さない方針ではあるが、一昨日パラドールに泊まったばかりで若干罪悪感がないでもない。

 が、そこしかなかったのだから致し方ない。ということで、ベロラドのアルベルゲを出て、12km先のビジャフランカめざして出発した。

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(ベロラドのアルベルゲ。ゆっくり出発したので、私は部屋で最後のひとりだった)

 時間が有り余るのはわかっていたので、昨日ベロラドに入る直前にみかけた庵を間近で見るべく、道を少し戻る。

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 そしてまたビジャフランカをめざしたが、予想どおりさらっと到着してしまった。
 早起きして出発する巡礼者すらまだ到着していない時刻で、私はホテルのチェックイン時間を公園で待っていたような記憶がある。

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 オテル・サン・アントン・アバドは、アルベルゲ併設のホテルだが、アルベルゲの宿泊予約はBooking.comにもExpediaにもなかったので仕方ない。私は少し高級路線のホテルのほうへ。

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 正直、少し高いだけのことはあって、部屋はかなりよかった。設備もよいが、部屋からの眺めがプライスレス。いやプライスはあるんだけども。おとぎ話のような角部屋教会ビューだ。

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 部屋のWi-Fiが脆弱なのが玉に瑕で、時間も体力もこの日山ほど余っていた私は、Wi-Fiが元気なロビーまで下りて、Kindle漫画を何冊かダウンロードして部屋に戻った。

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 ちょうど発売したばかりの好きな漫画数冊と、たまたま目に入った漫画数冊だったと思うが、はっきり覚えているのが、たまたま目に入った1冊が小池田マヤ先生『釣りとごはんと、恋は凪(1)』だったこと。

 小池田マヤ先生といえば、料理漫画だ(個人的には)。女と猫シリーズと家政婦さんシリーズが好きなのだが、『釣りとごはん〜』は初読。ちなみにこのとき、同時に女と猫シリーズの完結上下巻と、家政婦さんシリーズの最新巻も買った。

 その3冊もおもしろかったが、問題は『釣りとごはん〜』。
 この漫画が、予想外に私にボディブローを与えることになる。

『釣りとごはん〜』はタイトルのとおり、かわいい女子が釣りをして、釣った魚(本人は釣れなくて人にもらったりするが)を毎回美味しくいただく話だ。

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(ホテルのダイニングにて)

 当然、出てくる魚料理がおいしそう。
 しかも、日本の釣りの話である以上、スペイン巡礼中の私には今すぐには絶対食べられない料理なのである。
 特にグラグラきたのが、ワカサギだ。スペインでもイワシのフリットなどはあるが、たぶんワカサギはそうそうないと思う。

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(ホテルで食べた巡礼者メニュー)

 この少し前から、リゾットを食べて日本の米を懐かしんでいた私だが、『釣りとごはん〜』を読んだせいで決定的に日本食が恋しくなってしまった。

 こんなにも狂おしく日本食を恋しがったのは、生まれて初めてのことである。
 考えてみれば、2週間以上海外に滞在するのは、8歳のときに父の留学でアメリカに1年滞在していたとき以来なのだ。

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 ヨーロッパないし東南アジア・中国方面であれば料理がそれなりに口に合うので、日本食を恋しく思う前にだいたい帰国日がやってくる。
 中東・インド方面はあまり口に合わないことが多いが、たいていの場合ツアーの最終日付近に和食か中華の日がもうけられていて、できの悪い和食ないし中華に文句をいっているうちに帰国日がやってくる。こちらの方面は、ツアー終盤になると腹を下していることが多く(私は胃腸が弱い)、恋しがっている余裕もあまりない。

 しかし、今回は帰国日は当分先だ。
 そして、歩いているあいだ頭が暇なので、恋しがる時間は山ほどある。

 よって、それ以後は歩行中、日本に帰ったら食べたいあれこれを妄想するのが常になってしまった。
 当然、大きな街に行けば、真っ先に日本食レストランがないか検索し、いい店があれば2日連続で食べにいったりもした。

 ちなみに、ワカサギについては、帰国後わりとすぐ、箱根の「網元おおば」さんにワカサギ定食を食べに行ってしまった。控えめに言って最高だった……。

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(スペイン巡礼2018回想記(18)に続きます)

(リアルタイムで更新していたインスタ)


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